表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/401

第157話 瀬良君、須藤君に絡む

 思ったより時間がかかったが、須藤と瀬良は行儀よく教室で待っていた。


「悪い。結構時間取られた。」


 二人を見てすぐにそう声を掛ける。

 その声に、須藤の表情が明らかに「助かった」という表情に変わった。

 別に瀬良からいじめられてるようではなかったが。


「本当に遅いな。白石、お前何やらかしたんだよ。」


 前提がそれかよ。


「なんかさ、岡崎先生の親父さんが東京に仕事の関係出来てるらしいんだけど、その親父さんがうちの親父と知り合いらしいんだ。で、線香あげにうちに来たいって言われたよ。」


「あんまり先生に家、来られるのは嫌だな。」


 本当に瀬良は本音で生きてんだな。

 と言っても、普通は先生に家に来られて、親に何か言われたらと思うと、あんまり歓迎はできないか。


「うちの親父はある意味有名人になっちまったから、日本全国の知り合いが死因を知ってるって状況だからさ。線香あげたいって言われたら、よっぽどのことが無い限り、断りづらいよ。」


 俺の言葉に須藤は頷いている。


「そう言われりゃ、そうかもな。悪いな、、白石。親父さんなくなってるんだもんな。親父さんの知り合いを無碍にはできないか。」


「もっとも、俺はよく知らないから、正直対応には困るけどさ。」


「もし機会があれば、俺も線香あげに行くよ。」


「その気持ちだけで十分だ。それよりも、瀬良さ、須藤に何言ってたんだ?やけに困った顔してんぞ。」


 この教室に入ってきたときの須藤の顔を思い出して、瀬良に問いかけた。


 須藤が俺の瀬良への質問に、心底嫌そうな気持を顔に出している。


「別に、ただの雑談だよ。須藤はどんな子が好きかって。このクラスに気になる子がいるかってさ。」


 それは陰キャ気質の須藤には拷問だな。

 変な答えを言おうものなら、絶対いじられるからな。

 こういう時は、そのクラスで間違いなく1番人気の明るい女子を言うのが、定番みたいなもんなんだが…。

 さて、このクラスの女子、ある意味みんな可愛いと思えなくもない。

 顔の造形なら山村咲良になるとは思うが、明らかに嫌な雰囲気を持ってるんだよな。

 しかも、柊夏帆を全員が結構な時間見てしまっていたら、山村の粗が目立つ、気がする。

 

 だからと言って、須藤は絶対あやねるの名前は出さない。

 何といっても、彼にとっては恐怖の対象だ。

 他に須藤が分かるような女子となると、変に名前を上げれば、瀬良は絶対それをいじるに違いない。


「それを瀬良にいう訳はないと思うな。宮越のいじりを見てたら、絶対瀬良岳には言わないぜ。」


「そんなに俺って、信用ないのか?」


 俺と須藤はしっかりと首を縦に振り、肯定した。


「うわあ、ショック!友達に裏切られた!」


「いや、裏切ってなんかいない。正直な気持ちを伝えただけだ。」


 追い打ちをかけた。


「お、お前らなんか…。」


 その後を言う前に気付いたようだ。

 彼にとって夢のチケットを誰が持っているかという事を。


「そうだな、いい加減学食に移動しよう。そこでチケットを受け取らないとな。」


「お、おう。白石様、一生、ついて行きます。」


 正直な話、瀬良に一生付きまとわられたら、非常にうざいことは明白だ。


「調子いいな、瀬良は。」


 須藤が皮肉交じりに言った。

 が、瀬良に通じるはずもなく「それほどでも」と返してきて、須藤はため息をついていた。

 同じ班なんだが、大丈夫だろうか。

 伊乃莉のクラスの大江戸の心配どころではないな、これ。


 英語準備室を出る時に静海には連絡をしていたので、すでに学食の席を取っていてくれた。

 くれたんだが、そこに強烈な既視感(デジャヴュ)が俺を襲った。


 そこには静海一人だけではなかった。


 既視感(デジャヴュ)の原因は、あやねるの親友伊乃莉だった。


「光人、こっち、こっち。もう私たち、食べ始めちゃったよ!」


 その前の席で「アハハ」と力なく笑う静海がいた。


 伊乃莉は結構静海を気に入っている。

 で、伊乃莉の弟、悠馬君が静海を好きで、出来れば付き合ってほしいと願っているほどだ。

 だからと言ってごり押ししているわけではないんだが。


「伊乃莉はあやねる待ちか?」


「そんなとこ。あっちは生徒会の人と一緒に昼食食べてるらしいけど、ダンス部の練習には一緒に見に行く予定だからさ。学食で食べようと思ったら、静海ちゃんを見つけたってわけ。」


 あっけらかんという伊乃莉に、静海が苦笑いをしている。


 流れとしては、いつもの友人といく予定だったが、その友人がサッカー部の彼と一緒にサッカー部のマネージャーになって、今回来れない。

 そのサッカー部関連で鈴木悠馬君の話になった。

 そんなとこだろう。


 静海の横に荷物を置いて、食券を買いに行こうとしたら、誰かに脇をつつかれた。


 瀬良だ。


「お願いです、白石様。そこの二人の美少女、いや、女神さまにわたくしめを、紹介してください。」


 その言葉に、えも言えぬ脱力感に囚われ、つい大きなため息を出してしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ