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第153話 ダンス部の1年生

 朝の登校時も、昨日同様静海は俺にぴったりくっついていた。


 つい、昨日の俺の独り言に関して、聞きたくなる衝動を抑えて、いつも通りにふるまった。

 つまり、全く動じないふり。静海もわきまえてきたもので、北習橋駅では腕をほどき、適度な距離を持つようになった。


 いつもと変わらない。不自然さがないのが、逆に俺にとっては不気味だ。


 ふと以前にも独り言を呟いたことがあったことを思い出した。

 正確には親父との会話だが…。


 あの時は、誰かいるのかと言われた気がするんだが。


「あっ、そういえばお兄ちゃん。今日は何時に学校終わることになってる?」


 通学中のバスの中で一緒に立っていると、急にそんなことを聞いてきた。

 そういえば、昨日の晩にダンス部の公開練習に一緒に行こうとは言っていたが、具体的な待ち合わせはしていなかったな。


「今日は、確か英・国・数の3教科で終わるらしいから、11:30頃かな。」


「じゃあ、学食で待ってて。チケットはその時に渡すよ。」


「まあ、いいけど。今チケット貰っといてもいいんだぞ。」


「ダ~メ。勝手に行っちゃうでしょう、チケット渡したら。」


 そういうわけではないが、できればエロ瀬良とは会わせたくなかったんだよな。

 とはいっても、強引に寄越せというと変な方向で勘違いされそうだ。


「わかった。今回他の友人もつれてくけど、変な態度をとるなよ。」


「また女友達増えたの?本当に浮気者だよね、お兄ちゃん。」


「こんなとこでそんな発言すんじゃねえよ。それでなくても「クズ野郎」が定着しつつあって困ってんだから。」


「ふん!……じゃあ、お昼に学食で。」


 あまり納得はしていないようだが、そう言って校門で静海と別れた。


 昇降口で須藤に会った。


「おう、おはよう、須藤。」


「ああ、白石か、おはよう。」


 少しお疲れ気味か。あいさつに、いつも以上に覇気がない。


「今日も新聞配達で疲れてんのか?元気なさそうだけど。」


 二人して教室に向かうため、階段を上った。


「言ってるお前も、顔に疲れが出てるけどな。なんかあったのか。」


 わざとテンションを上げて、あいさつしてみたんだが、無駄だったようだ。


「ちょっと考え事をしていて、寝不足なだけさ。それより、そっちのほうが朝早いからしんどいんじゃないか?」


「そりゃあな、しんどいのはしんどいよ。少しは慣れたと思ってたんだけど、春休みと学校が始まってからでは、やっぱりつらさが違う。放課後の割のいいバイトを探すべきかとは思ってるけどね。」


 そういいながらため息をついた。


「結局、昨日の新入生が入部することになってね。」


「ああ、あの子か。」


 木津沙織。

 かなりヲタク気質の女子。


「白石は言うこと言って、さっさと帰っちまっただろう?」


「悪いな。さすがに、あの状況で居続ける気にはなれなかった。」


 木津さんの圧も凄いけど、ギャル先輩がね。

 「白石ハーレム」なんて言われないためにも、文芸部には近づかないでおこう。

 須藤には悪いとは思うけど。


「あの後さ、有坂副部長がまた鬱モードの入っちゃってさあ。白石がいなくなったからなのは、木津さん以外解ってんだけど…。その木津さんが入部するってことになったから、ちょっとした歓迎会やろうってなってね。」


「どこで?」


「ああ、部室でだよ。他の場所に移動するんなら、金ないし帰れると思ったんだけど。」


 またため息をつく。


 教室まで来ると、俺たちを見つけた景樹が声をかけてきた。


「おう、おはよう、お二人さん。」


「景樹、おはよう。」


「おはよう。」


 俺たちが自分の席に着くと、景樹が俺たちのところに来た。

 あやねるはもう学校には来てるようだが、教室にはいなかった。


「悪いな、光人。ダンス部のこと。せっかく誘ってくれたのに。」


「ああ、部活じゃ、しゃあないだろう。なんか妹の静海の友達もサッカー部でダメって話だし。その代わり瀬良がどうしても行きたいって絡んできてさ。」


「あれ、あいつバスケ部だろう?バスケはないのか?」


「それは知らんが、鬱陶しかったからOKしちゃったよ。」


「あいつらしいけどな。そういえば、ダンス部の部活動紹介では高1は出てなかったらしいんよ。」


 景樹がとっておきみたいに話してきた。

 部活で行けないけど興味はかなりあるっぽい。

 そういやあ、実家が芸能事務所やってんなら当然か。


 エロ瀬良とは見る目線が違うってことか。


「へえ~、そうなんだ。と言っても、1年生じゃ、あんまり踊れないだろう?入ったばかりだし。」


 須藤が常識的なことを言ってきた。


「普通の高校ならそうなんだけどさ。ここって中等部あるだろう。今回の練習は中学から高校まで、全部員が練習予定だそうでな。」


「景樹、異常に詳しいな。」


「そう嫌味を言うなよ。俺がこの高校に入学したもんだからさ、お袋が保護者特権使って、学校側にいろいろ聞きまわってるんだよ。この学校のダンス部って、強豪ってほどではないにしても、そこそこ名が知れてるみたいでね。ある意味、青田買い、考えてる感じがあるんだよ。」


「「ああ、納得。」」


 変なとこで須藤とハモってしまった。


「でさ、なんか結構かわいくて、ダンスもうまい子が内部進学者にいるって、お袋が聞きつけちゃったんだよな。でさ、二人には悪いんだけど、そんな感じで練習見て来てくんないかな?」


 ありゃ、変なこと依頼されちゃったよ。


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