表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/401

第151話 不安

 自分の部屋で制服を脱ぐ。部屋着のトレーナーに着替えて、そのままベッドに寝転んだ。


「須藤には悪いが、文芸部には近づかないほうがよさそうだな。あの木津さんって子も、なんか趣味に向かってすべてをぶつけてる気がするし。」


(それが賢明だろうな。あの副部長やってる有坂って子もそうだが、なかなか地雷が多い部だよ)


 親父の声が自分脳内で響き渡る。


「それにしても何なんだろう、「白石ハーレム」って。こちとら、中学はニートで通ってた普通の陰キャ学生だぜ。」


(かわいい女の子に囲まれてんだ。それぐらいは大目に見ろってもんだろう。もし、この状況が嫌だったら彩ちゃんに告白して、サッサとカップルになるのがいいんじゃないか。あの子もきっと喜ぶぞ)


「それは違うだろう、親父。明らかにあんたの影に引き摺られてるだけなんだからさ、あやねるは、さ。本当に俺個人を見てくれてるならいいけどね。」


(きっかけはそうかもしれないが、……)


「どっちにしたって、まだ入学して10日程度で言うことじゃないと思う。」


(その、たった10日で、これだけ有名になれるお前さんに敬意を表するよ)


「本当に、なんでだろうな。」


(女の子に関しては異常だけど、男の友達はいい感じに増えてきたんじゃないか?佐藤景樹君に須藤文行君。それとバスケ部の瀬良君と宮越君か。あと同じ中学だという…)


「新垣か。確かに知らない奴だったけど、いいやつそうではあったな。」


(今まさに悪の権化「女泣かせのクズ野郎」に対して好意的に接するからな。といっても中学時代のことをある程度理解してくれている人はそうだとは思うけどな。)


「でも、榎並虹心のような人間もいるからな。人が俺をどう思おうと、基本的にはどうでもいいんだが、実害、というか悪口陰口を言われるだけでも結構心に来るものはあるよ。」


(それは普通のことだね、光人)


「普通、だよな、本当に。悪口言われてへこむのは普通だと思うけど、好意を寄せられてもメンタルに来るとは考えてもいなかったな。」


(日曜日の伊乃莉ちゃんの行動から考えれば、今のところ落ち着いているようだし、智ちゃんもいつも通りにしてくれている。あのギャルとは極力接触しなければ、今のところは大丈夫だろう?)


「それは親父の言うとおりだけどな、今は。でもなあ、弓削さんの忠告。気になるんだよな。」


(山村さんとやらか?)


「その山村さんだけならそれほどではないんだけど、そこに塩入が絡んでそうだろう?それでなくても恋愛がらみのトラブルがあるって話を聞かされちゃ、心配すんなというほうが難しい。」


(普通に告白するされる、振る振られるみたいな問題なら「青春だねえ~」で済むところではあるんだけどな)


「柴波田先生がよくいってる言葉だな、それ。」


(青春時代ってやつは恋愛が興味の結構な部分を占めるからな。社会人になると、興味がないわけじゃないけど、その割合がかなり下がる。他にも問題が山積みだったりするから、そんなに大きく考えることは学生に比べれば減るんだが。もっとも深刻度は上がるけどな)


「今回はそこに変な悪感情が追加されてそうだからな。何とか、あやねるは守りたいと思ってはいるけど…。」


(きっと智ちゃんは協力してくれるよ。その友達の弓削さんもな。彼女は結構正義感強そうだし。ああ、あと室伏君だっけ、彼ともできれば友人関係を構築しておいたほうがよさそうだな。あの班にいるから、いい関係が作れればお前の味方になってくれるんじゃないか?)


「室伏君か、…確かにそうだな。明日、何とか声をかけてみるよ。味方は多いほうがいいし。」


(あやちゃんはほかに同じクラスで友人っているのか?私が見る限りは同じ班の今野さんぐらいしか話しているのを見たことがないが…)


「最初から俺と仲良くなっちゃったからな。俺も今野さんくらいとしか話しているのは見たことがないな。今日から体育で女子だけでの授業があったから、そこらへんで仲良くなった女子がいるといいんだけどな。」


(そうだな。光人のようにほかのクラスでも友人が出来ていると、何かあったときには頼りになるし)


「親父の言うとおりだと思うよ。」


 ガタン。


 廊下から何かがぶつかる音がした。

 一気に俺の身体に緊張が走った。


「誰かいる?」


 俺は今した音が、偶然であることを祈った。

 廊下を昇ってくる音を聞いていない。


「お兄ちゃん、ごめん。躓いちゃって。」


 やっぱり静海だ。


「もう、晩御飯の用意が出来たって、お母さんが呼んでるよ!」


「ああ、わかった。すぐ行くよ。」


 何とか平静になるようにして、声を返す。

 そのまま廊下を降りていく音が聞こえた。


 親父との会話に夢中になっていて、静海の存在に気づかなかったか?


 今の会話は間違いなく、俺だけの声が出ていた。

 廊下まで聞こえたかどうか?

 普通に考えたら、階下には聞こえないと思うが、廊下には漏れていたはず。


 静海にはどこまで聞こえていた?

 いや、それよりも…。


(今は考えないほうがいい。静海から聞かれたらとぼけろ。私との話かどうか聞かれるようなことがあれば、独り言で親父を相手にしていた風を装えばいい。まさか私が光人の脳にいる、などと想像する奴は、絶対にいないはずだ)


 本当にいないだろうか?

 そもそも足音を忍ばせて、ここまで来るか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ