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第150話 ヲタの木津さん

 えっ、結構見られて他の俺たち?

 景樹たちにも見つかったしな…。

 ああ、でも、そうか。

 あの時の伊乃莉の出で立ちを思い出した。

 普通に歩いていても、思わず二度見三度見は避けられないよな。

 現役モデルのJULIさんがスカウトしてくるほどだ。


 伊乃莉は普段の格好に戻せば、早々バレることは無いかもしれないが、その横の俺はいつも通りだった。

 強烈な美人の横を一緒に歩く一般人。

 覚えられる可能性、確かにあったわ、こりゃあ。


「この前の日曜に同じクラスの子と西舟野の駅前をブラブラしてたんです。そしたら長身のラフなスタイルの女性が歩いていたんですけど、その顔というか雰囲気というか、ああ、もう自分の語彙力の無さに腹が立つな!とにかくとんでもない美貌の女性が歩いてきたんで、友達と二人、見惚れちゃったんですよね。で、その女性を見てたら、やっぱりというか、男性と一緒だったんです。ただ、その男の人、決して不細工ってわけじゃないし、普通に歩いてたら、まあ、問題ないと思うんですよ、小綺麗にしてたし…。ただ、一緒にいた人がその女性でなければなんですが。あまりにも完璧すぎる女性だったんで、一緒の男性がやけに貧相に見えちゃって、思わず二人から視線を外せませんでした。」


 うわあ、この子ヲタの人だ。

 自分の興味のある話になると、早口で長話になってる。


「その女性は私たちの視線に気づいたみたいですけど、一緒の男性はなぜかそっぽを向いたような感じで、変だとは思ってましたが、そうか、そういうことか。」


 一人で何かを納得していた。

 いや、何に納得してたかは、当事者の俺がすでに気付いていた。


「あっれは、あまりの綺麗さに直視できない童貞ヲタ行動だったんだね、白石君。」


 そう言って、俺に視線を向けた。


 すでに須藤が隠れて笑いをこらえていた。

 大塚部長も俺から顔を逸らしている。

 だが、ギャル先輩だけが睨むように俺を見てきていた。


「白石君だったんでしょう、あの美人と歩いてたの。えっ、でもそうすると、やっぱり噂は本当…。」


「わかった、、わかったからもう何も言わないで木津さん!ただ、噂の話は単なるデマ、デマだから!」


 もうすでに手遅れなのは解っていたが、とりあえず、木津さんの口を止めさせたかった。


「その美人って誰なの、光人。」


 怖いんですよ、ギャル先輩!

 その目と声、何とかしてください!


「確かに、確かに俺はその日、西舟野にいた。それは間違いない!でもその美人となんかあるわけじゃないんだよ。変に勘繰らないでくれ。」


「その一緒にいた美人って誰?」


 ギャル先輩がしつこく聞いてきた。


 まあ、この人の気持ちは薄々わかっているとはいえ、何故こんな浮気を問い詰められるような態度をされねばならないのだろうか。


 見ると横に座ってる木津さんも完全にドン引きだ。


「まだお前には女がいるん、グフッ。」


 大塚部長がギャル先輩の頭をはたいていた。


「裕美、本当にいい加減に死なさい!あんた、白石君のなんなの?彼女、先輩?今現在、何の関係もないよね?」


 部長の声と頭をはたかれた事で、ギャル先輩がハッとした表情になった。

 そして顔を真っ赤にして伏せてしまった。


「えっと、これは…。」


「つまり、そういうこと。」


 木津さんの問いかけに、須藤が淡々と答えた。

 その答えに、木津さんはコクリと頷いた。


「なんか、副部長さんが食い気味に聞いてきたけど、白石君の彼女なの、あの綺麗な人。」


 ああ、それでも終わらないのね、この質問。


「いや、ただの友達だよ。そういう関係の人じゃない。」


「もしかして、モデルとか、芸能人とか?」


 木津さん、かなりのミーハーだね。

 というか、凄く気になるわけか、伊乃莉が。


 変にはぐらかせて、一番悪いタイミングで何か言ってきそうな気はする。

 フラグはへし折っといた方がいいか。


(というフラグが立つ場合があるな、光人よ)


(聞こえない、聞こえない)


「その綺麗な女性は、俺と同じクラスの宍倉さんの友達だよ。」


「え、じゃあ、さっきまで木津さんが言ってたのって、鈴木伊乃莉さんのことなの?」


 須藤がすかさず反応してきた。

 確かに、あやねるの友人筆頭は伊乃莉だ。


「あっと、確かに鈴木さんは綺麗だとは思うけど、……。木津さんが言うほどの超絶な美人って程じゃないよ?」


「えっ、この高校の人?しかも同い年?」


 食い気味で須藤に迫る木津さん。

 木津さんは銀のフレームの眼鏡をした地味目ではあるが、別に不細工なわけではない。

 どちらかと言えば整った顔立ちだと思う。

 そんな女子に超接近されて、須藤の目の動きがおかしい。

 あれは泳いでるというものじゃない。

 何とか木津さんの顔を視界から外そうとして、目が様々な方向を模索してるんだな、きっと。


「木津さん、近すぎるって!」


 やっとのことで言葉を吐き出し、多分一番問題がないと思われる木津さんの両肩を手で押しのける。


 須藤の言葉と行動に、正気になった木津さんが椅子に座りなおして、そのままテーブルに突っ伏した。


「う~~~~、恥ずかしい~~~、自分から、男の子に~~~~~~~…」


 木津さんが一人悶えていた。

 興味のあまり突っ走り、現実に戻ってみ悶える。

 正しくヲタの人だった。


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