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第145話 文芸部の妄想

「まさか、こんな形でうわさとして広がるとは思わなかった。」


 須藤はそう言って話し始めた。


「僕と白石、あと日向さんで一緒に帰った日があっただろう?」


 俺に向かって須藤がそう言ってきた。

 俺が頷くと、またあやねるが少し不機嫌になった。

 が、今は須藤の話の腰を折りたくない。


「あの日は、有坂さんがある理由でものすごくウザかったんで、部室に寄らずに帰ったわけだけど。その日にバスケ部の湊先輩が柊先輩に告白した日なんだ。」


 この言葉にはバスケ部の瀬良と宮越が頷いた。


「で、昨日、何言われるかわからなかったけど、部室に言ったんだよ。そしたらその有坂先輩が異常に機嫌がいいんだ。僕はてっきり、失恋でもして頭がおかしくなったのかと思った。」


 そうだろうな。

 ある理由がもし、俺にあるんならば…。


「それが、柊先輩の恋人の話だった。それで、競争率が下がったみたいに喜んでんだよ。機嫌がいいのはいいんだけどさ、その喜び方には狂気を感じた。」


 あの人は何考えてんだよ。


「なあ、なんで生徒会長と柊先輩が付き合ってると競争率が下がるって話になるんだ。確かにあの超絶美人に彼氏ができれば他の男も違う女性に目が行くのかもしれんが。」


 瀬良がまっとうな意見を口にする。

 本当にあのエロ瀬良は何処に行ってしまったんだ!


 その質問に須藤は俺のことをちらっと見た。

 その挙動で瀬良と宮越が変に納得してる。

 さらに冷たい視線が右川から突き刺さった。


「そんな有坂先輩を見て大塚部長が言ったんだよ。「ああ、裕美ってやっぱりい「白石ハーレム」の人なんだ、って。」


 須藤が言った瞬間、この教室の温度が確実に2度は下がったな、これ。


 俺はあまりの怖さに右側に目を向けることはできなかった。


「その単語ってどこから出てきたんだ?その言い方だとやっぱり文芸部が発信元か?」


 瀬良があやねるの発する冷気をものともせずに行った。

 須藤も、この話をする際に肝を決めたのだろう。

 動じる気配はなかった。


「うちの部の2年のつぐみ先輩っていう人の造語。まあ、もう白石の名を出しちゃってるから曖昧にしてもしょうがないんだけど。入学式に倒れて、すぐにこの高校一と言われる柊先輩と知り合いになり、さらに次の日には美少女を北習橋駅で泣かせてしまうという暴挙に出た男子生徒。「女泣かせのクズ野郎」の異名をその日のうちに巷から授かり、その時に他に二人の女子がいたという事実も発覚。さらに部活動紹介時、ギャルの先輩とイチャイチャしてるのを多数の生徒が目撃してる。ついこの間はバス停で絵にかいたような美少女の中学生から告白されたという。これがわずか1週間の間の出来事。そこから「これはライトノベルでよくあるハーレムだ」と喜んだ人がそのつぐみ先輩という訳なんだ。」


 須藤の語る「白石ハーレム」という単語の誕生秘話。

 困ったことに否定できる箇所が少ない。

 あやねるはあやねるで、自分が泣いたという事実を出されたものだから、顔を真っ赤にして俯いていた。


「いや、ハーレムじゃないし。」


 俺が言えたことはこの一言だけだった。


「ちなみに、今日登校するときも、女子中学生が白石の腕を抱いてきてるという目撃情報もある。」


 追加情報ありがとう、須藤君。


「確かに言われてみればハーレム状態と言われてもしょうがないな。俺が思っていた以上に白石ってモテるんだな。」


 瀬良がやけに感心した言葉を口にした。


 この時だけはあやねるが上目使いで俺を睨んできた。


「とりあえず訂正しておくと、今日腕に抱き着いていた中学生は俺の妹の静海だ。」


「それは義妹か?」


「おい、瀬良!てめえはエロ漫画の読み過ぎだ!」


「いや、実妹の方がヤベエだろう、その状況。」


 あ、いかん。

 返す言葉がない。


「いや、いや、ただ仲のいい兄妹ってやつだよ!」


 苦し紛れに言ってみた。

 他の4人の疑いの目は一向に良くならない。


「本当に仲良しだよね、静海ちゃんと光人君。一番最初に静海ちゃんに会ったとき、「非モテ陰キャ童貞野郎」となじっていたのが嘘のよう。」


 あ、あやねる、君はなんてことを言うんだ!


 あやねるのこの言葉に野郎3人が俺を冷たい眼差しで見てきた。


「今のきいたか、瀬良。宍倉さんと知り合って1週間でだ。最初に「非モテ陰キャ童貞野郎」と言ってた女子を、腕に抱き着くまでにした白石の技術。是非お伺いしたいとこだな。」


「ああ、同感だ、宮越。どう考えてもその女をどうにかしなきゃ、そんな態度になるわけがない。」


「これが「白石ハーレム」の力か。」


 おい、須藤!

 そのセリフ、非常のヲタクっぽいからやめろ!


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