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第144話 「白石ハーレム」の考察

「その話は知らんかったな。」


 瀬良がぼそりと言った。


「ああ、不明瞭だったから皆には湊先輩は言わなかったよ。ただ春日部は湊先輩の勅の後輩ってこともあって、そういうことも聞いたらしい。」


「まあ、出どこは解ったけど…。「白石ハーレム」って意味は不明のまんまだぞ。」


 俺が不快感を前面に出して問い詰める。

 これは隣にいるあやねるに対するポーズだ。

 そんな怪しげな団体、俺は組織したことが無い、というポーズ。


 あやねるも今の話で明らかに不可解な顔になっている。


 何度も言うが、あやねるが生徒会役員会議で本人から聞いた話として、「柊夏帆先輩が斎藤会長と付き合っている」と俺にわざわざ告げてきたのだ。


「俺達だって正確な意味は知らないけどさ。一応考察したわけよ。柊先輩と言えばさ、自己紹介の時に白石に謝っていたじゃん。でさ、あんな美人に言い寄られて心を動かさない奴はいないって話になってさ。」


 ある意味俺も心は動かされた。

 負の方向に。


「ということは、柊先輩は白石と付き合っている、そう考えたんだよ、俺たち。」


「俺を仲間に入れるな!」


 きっと、今のあやねるの顔が怖かったのだろう。

 速攻で瀬良が宮越との関係を切りに来た。


 あやねると俺は、そして須藤も柊先輩の恋人が生徒会長であることを知っているが、その情報が抜け落ちると、こういう噂に発展するのか。

 少しあきれてしまう。


「ただ、白石には宍倉さんがいるし、西村さんとも仲がいい。」


 ああ、なんとなく話の道が見えてきたな。


「さらにその文芸部のギャルの人も、良く白石にちょっかいをかけてくる。だからこそ、湊先輩から柊先輩を助けたんじゃないかって話になってだな。」


 あれ、今俺が考えた話のルートから外れたぞ。


「ここで「白石ハーレム」という単語が大きな意味を持ってくるんだよ。」


 得意げに喋ってる宮越には悪いが、全く意味が解らん。


「なんだそれ。イミフなんですけど!」


 ついにキレ気味のあやねるが口を開いた。


「これからちゃんと説明するから、そんなに怒らないでくださいよ、宍倉さん。」


 少しビビりながら宮越が体を丸めて、あやねるから距離を取ろうとしていた。


「白石に対して好意を寄せてる数人の女子。抜け駆けはせずに、みんなで仲良く白石をシェアしよう。そう決めたのが「白石ハーレム」の結成じゃないかってね。で、みんなで仲良くして、誰かがピンチになったらお互い助け合おうって。」


 バン!


 かなり強く机が叩かれた。


「なにそれ!信じられない!」


 あやねるが吠えた。


 この勢いに、俺を含めて4人の男子がビビる。

 あやねるは本当に喜怒哀楽が激しいなあ。


「普通考えたらそんなことあるわけないでしょう!大体、カホ先輩は生徒会長の斎藤先輩と付き合ってるんだよ!光人君、関係ないじゃん!」


 あやねるの勢いに、完全に固まった宮越。

 俺の横で須藤も震えている。

 あやねるを恐れているから須藤が震えているのは充分理解できるのだが、何故かその震えに違和感がある。

 見ると顔から冷や汗のようなものが流れている。


 ん?

 今、怒鳴られているのは宮越のはず。

 須藤の震えが常軌を逸している気がするのだが…。


「やっぱり、柊さんって、会長と付き合ってたんだ、ふ~ん。」


 あやねるの怒りに対し、最初はひいていた瀬良だが、今のあやねるの言葉に、何か納得をしているようだ。


「やっぱりって、瀬良は知ってたのか?」


「噂でな。その噂に触発される形で湊先輩が告白しに行ったようなもんだから。」


「頬、そういう流れか。」


 単純に感心してたら、あやねるに睨まれた。


「光人君。じつはそんな「白石ハーレム」、本当に作ってんじゃないでしょうね?」


 あれ、怒りの矛先が俺に向けられてる?


「そ、そりゃあさ、光人君、優しいし、カッコいいからモテるのも、わからなくはないから…。でもでも、そういうの良くないよ!」


「いや、身に覚えのないことで怒られても…。」


 そう思って須藤に視線を向けたら、露骨にその視線から顔を背けた。


「あ、須藤。さっきから思ってたんだけどさ…。お前、このことについて、何か知ってるよな。」


 答えない。


「さっき、「白石ハーレム」って単語を言ったのって誰だって言ってた?」


 今度は宮越に顔を向けてそう聞いた。


 宮越は、すぐには反応しなかった。

 あやねるの怒りに魂が少しの間、体から抜けていたためかもしれない。


「ああ、ああ。誰が言ったかだったよな…。確かギャルっぽい先輩と、その中のいい先輩の女子二人って聞いてる。」


 その答えをじっくり聞いて、また須藤に顔を向けた。


「という事だそうだが。」


 今度は目は泳ぎまくってるものの、俺から顔は逸らさなかった。


「それって、有坂さんと、部長の大塚さん、だよな。」


 ほぼ断定する口調で須藤に聞く。

 その二人の会話で出てきたとなれば、同じ文芸部の須藤が知らないわけがない。


 目が泳いでいるが、もう観念したような雰囲気が漂ってきた。


「多分、そうだと思う。」


「どういうことか説明してくれるか?」


「ああ、わかったよ。」


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