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第141話 親睦旅行に向けて

 今日も俺は弁当で、須藤と食べようとしていた。


「一緒していいかな。」


 須藤がギクッと体を硬直させた。

 振り向くと、やはりというか、あやねると伊乃莉がいた。


 今日は佐藤が学食に行っていていない。


 ふと横を見ると智ちゃんが俺を見ていた。

 弓削さんも少し興味深そうだ。


 ああ、そういえば昨日の放課後、あそこの班が何か相談するって言ってたな。

 そこに塩入か…。


 俺はちょっと周りを見回した。


 塩入も山村さんもいないな。


「西村さんと弓削さんも一緒でいい?」


 俺が他の3人に言った。

 その言葉に、一瞬あやねるの顔が強張る。

 が、俺の顔が真剣なのに気づいたのだろう。

 あやねるも伊乃莉もコクンという感じに首を縦に振る。


 須藤が意外だというように、目を見開いていた。

 それはそうだろう。

 智ちゃんとあやねるは微妙に距離があったからな。


「例の件、だよね。」


 あやねるがそう言った。

 やっぱり須藤はキョトンとしている。


 伊乃莉はどうやらあやねるから聞いているようだ。


「智ちゃん、弓削さん。一緒に食べない?」


 俺がそう二人に声を掛けた。

 二人は目配せをしたのち、こっちに来た。


 机を適当に動かし、6人で食べれるようにした。


「智ちゃんはもう顔見知りだろうけど、弓削さん。この人は隣のクラスの鈴木伊乃莉さん。宍倉さんの友人。」


 弓削さんがぺこりとお辞儀をする。


「ああ、よろしく。貴重な助言ありがとうね。」


 伊乃莉が言った。

 やっぱり既に情報は共有されていた。


「え~と、話が全く見えないのですが…?」

 須藤がちょっとキョドッてそんなことを言ってきた。

 当然何も知らなければ、そうなると思う。

 俺は昨日の昼休みのことを簡単に説明した。


「山村さん主導の嫌がらせってことでいいのかな。」


「う~ん、そうだね。そんな感じなんだけど…。昨日の放課後に何を話したのかはよくわからなかった。本橋さんにそれとなく聞いてみたんだけど、話を濁された感じ。」


 弓削さんが可愛らしいお弁当箱を開けながら、口を開いた。


 各々自分の弁当を食べながら、今の状況を雑談めいた感じで話していく。


「多少気に入らない人がいるのは当然だとは思うんだけど、そこまであからさまだとな。」


 伊乃莉が最後のご飯を口に放り込むと、そう言ってきた。


 すでに俺と須藤は食べ終わってる。

 弓削さんも智ちゃんも運動部だけあってあやねるや伊乃莉よりも量が多いようだが、折れや須藤に比べれば、そんなので体動かして大丈夫って感じ。


「その班の人たちだけなら、そんなに問題はないんだけど、うちの班の塩入が合流してるとすると、なんかやな予感するよね。」


 須藤が弁当箱を鞄にしまいながら、塩入に関しての話を出した。


「誰、それ?」


「伊乃莉は知らなくてもおかしくはないんだけど。あやねるに何かしら話しかけてきてる男子がいるんだ。そいつが同じ班でね。見る限りあやねるに好意を持っている。」


 俺の言葉にあやねるが顔をしかめた。


「昨日の班の話し合いにそう言った男子がいたという事は聞いてないんだけどな。」


「明らかに、弓削ちゃん、山村さんによく思われてないよね。」


「それはお互い様ってとこだけど。」


 智ちゃんの言葉に弓削さんがそう返した。

 という事は室伏君も知らないと思っていいだろう。


「変な事考えてないといいけど。」


「そっちはそっちで問題抱えてるんだね。」


 伊乃莉が俺を見ながら言ってきた。


「えっ、F組でもなんか問題あんの?」


 弓削さんが驚いたように言った。

 伊乃莉の話は俺をいじめてた大江戸の話だろう。


「入学10日程度でこうもいろいろ出てくるんだね。やんなるなあ。」


「智ちゃんは比較的、みんなと仲いいもんね。」


「そういえば弓削ちゃんって、演劇部入ったんだよね。」


「そうなんだけどさ。演劇部でね、本人には部活では会ってないんだけど、山村さんが仮入部したって聞いて、今ちょっとブルー。」


「ああ、なんとなく納得。なんか「私を見て!」って感じだよね。」


 弓削さんの不安げな言葉に智ちゃんが答えた。


 確かに言われてみれば。


「ああ、でも、大江戸君と同じクラスは、不運だったね。」


 続けて伊乃莉に向かって智ちゃんがそう言った。

 日曜にああいうことがあって、なんか伊乃莉に詰め寄ってたけど、全くおくびにも出さないのは流石、強コミュ者の実力って奴か。


「本当にそれ。あいつを何とかしてほしい。」


 伊織は本当に疲れたような顔をして言った。


「やっぱりなんかあるんだ、あいつ。校舎案内の時すれ違ったけど、コウくんに思いっきり睨んでたよね。」


「また知らない奴が出てきたよ。誰のこと言ってんだ、なあ、白石。」


 須藤が俺に聞いてくる。

 結構女子に免疫が出来てきたと思ってたけど、まだ駄目か。

 智ちゃん相手なら問題ないだろうに。


「その大江戸って奴な。俺が中学の時に俺をいじめてきた奴。他に二人いたけど、他の学校に転校して大江戸一人になった。で、何故か俺を逆恨みしてる。」


「F組でも変に突っ張って、浮いてるんだけど、私の友達が親睦旅行で同じ班なんだよ。で、全く協力しないんだよね。」


 そう言うと伊乃莉は大きくため息をついた。


「それがF組の問題か。」


 弓削さんがやれやれという感じで言った。


「とりあえずこちらの問題は解り次第連絡する。何か打てる手があれば、やっとくってことで。よろしく。」


 そう言うと弓削さんと智ちゃんが席を立って、食卓として利用していた机を元に戻す。


 それに呼応するかのようにあやねると伊乃莉も席を立った。


「じゃ、また。北習の駅前のファミレスで待ってる。」


「うん、よろしく、いのすけ。」


 机を片して教室を出ていく伊乃莉にあやねるがそう言って、軽く手を振った。


 俺もつられて手を振る。


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