第140話 親父の受験
今回の話は、作者の実体験がかなり入っています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
案の定、4限は睡魔との闘いになった。
担当は担任でもある岡崎先生だ。
ここで眠ろうものならどんなにいじられるかわかったもんじゃない。
(親父、親父)
(ん、どうした、光人?)
(眠くてしょうがない。話し相手になってくれ。さすがに岡崎先生の授業で寝ると、何言われるかわからん)
(ああ、かもしれんが…。他にも、今から舟を漕ぎそうな人、結構いそうだぞ)
(舟を漕ぐ?)
(そうか、そういう表現、知らないか~。今から寝そうな人って、こっくり、こっくりしてるだろ
う?)
(ああ、まあ、そう言われれば)
(その動きが舟を漕いでる人に似てるってことでな。完全に机に突っ伏してるときには使わんが、眠らないようにしよう、と思いながら寝そうになってるような人な、そういう人に使う表現。スラングと言えばスラング)
(確かにそんな感じだな。英語だし、また岡崎先生の英語、綺麗だけど聞き取りづらいから余計だ)
(そうだな。かなりネイティブ寄りの発言だ。留学でもしてたか?)
(それはどうだろう。でも、親父のこと知ってるっぽかったよ)
(岡崎と言えば、私の大学院時代のお世話になった教授も岡崎だったけ…。岡崎先生って外語大出身か?)
(どうだろう?この日照大の出ではなくて、国立だって話は噂で聞いた気がする)
(もし、大学院の時の岡崎先生の子供だとすると、小さい時に2年くらいアメリカで暮らしてたはずだから…、流暢に喋れるよな)
(今日の講義もやけに分かりやすかったけど、これも親父の影響なのか)
(おそらくは。今のところ、私の知識が徐々に光人の知覚に影響を与え始めてるが、それに甘えるなよ)
(そのつもりではいるけど。ただ、中学でわからないときに苦労したことが、今は結構楽しく授業が効けるのはいい感じ。それをしっかり俺なりに定着させたいとは思ってるよ)
(いい心がけだな。ただ、学問は日進月歩の所があるからな。理科系はいいけど、文系科目は弱いから。後、特に英語は、リスニングはからっきしだし、大体、中高大と苦しめられた科目だ。そのことは覚えておけよ)
(そんなに悪かったの?英語)
(言っちゃなんだが英語のせいで、大学で留年してる)
(ほへ。なにそれ。俺そういう話聞いたことが無い)
(実際に他の大学を受験するとか、大学に入った頃には話をしようと思ってた)
(大学院の研究って、英語は必要なかったの?)
(馬鹿言え。論文は国内の一部を除いて、英語が基本だ。国際学会は当然英語でしゃべってる)
(どこかで英語をクリアしたってこと?)
(というか必要に迫られてだ。留年した後も、英語だけは単位が取れなくてな。最終手段に踏み切った)
(ま、まさか、カンニング!)
(違うわ、馬鹿たれ!その時の英語に問題は一冊の英語の物語だった。それの和訳なんだが…、私はそれをすべて暗記した)
(どんだけの量?)
(量にして文庫本1冊。英文、和文両方だから事実上2冊分)
(それが出来るんもんなのか?)
(出来る。というか出来たから進級できた)
(でもさっきの話だと論文って英語なんだろう?)
(化学英語だから、ある程度の単語を覚えれば訳せるんだよ。ただ最初は解らない点後にマーカー引いて、全部辞書引いた)
(努力が凄いな。つまり、俺にそれを求めてると)
(そういう訳ではないがな。大学受験の時、英語は伸びようがないとあきらめて英語以外に力を入れたんだが…)
(だが?)
(数学と化学はほぼ満点、英語がほぼ0点という結果になった)
(また極端な。それで大学に受かるもんなのか、親父さんよ)
(母校の方は受かったが、そこよりも偏差値が低い大学は落ちた)
(その違いって…、なに?)
(たぶんだが、英語に足切り点があったんだと思う)
(ああ、そういうことか)
あまりの眠さに、親父のバカげた歴史を聞いていて、俺が思っていたほど頭が良かったわけではないことを知った。
授業もそろそろ終わりに近いが、ここから見てるだけでも3人ほど寝ている。
岡崎先生は苦笑いだった。
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