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第14話 須藤文行Ⅸ

 日曜は別に何もなかった。


 朝から新聞配達のバイトをやり、今日は休みだが、すでに朝食も簡単に用意されていた。

 自分でパンを焼きにバターを塗って食べ、もう一度布団にもぐった。


 父は既に出勤している。

 家電量販店に努める父の文明は土日に休めることは滅多にない。


 母親の明代は父の弁当を作り、朝食を簡単に作った後、僕と同じように布団にもぐり、昼くらいからパートに出るはずだ。

 妹はまだ寝ているだろう。


 僕は昼に母の作っておいてあった昼食を食べた。

 その後、書き続けている小説を書き始めた。


 妹の玲央はいつの間にか昼食を食べて外に出て行ったようだ。


 自分が私立に進んでしまい、小遣いが減ったことにかなり不満を持っている。

 オタク趣味である自分を嫌っていることもうすうす感じ始めていた。


 あまり雰囲気がいいとは言えない家庭。

 でも、両親は懸命に働いて、俺たちを育ててくれている。

 不満はない。

 学校のほとんどの者が裕福な家の子たちであり、なかなか親しめないが、それでも白石のような奴もいてくれて、今のところは順調と言っていいだろう。

 宍倉さんは怖いけど…。


 本当に、怒りの美少女って、怖いんだいということを思い知った。

 あまり、邪険に嫌われているわけではないことは解ってる。

 ある条件下で、異常に恐怖の対象になる。

 主に白石がらみ。

 それには極力絡まないように気を付けよう。


 だけど、昨日の雰囲気はやっぱり怖いな。

 来栖さんにしても日向さんにしても、善意で手伝ってくれたのに、白石が絡んでると、宍倉さん、他の女子に牽制してるもんな。


 そういえば、日向さんが何か言おうとしてた気がするけど、何だったんだろう。

 覚えてたら、月曜に聞いてみよう。

 僕の小説の感想、聞かせてくれるって約束だしな、うん。


 僕はそんなことを思いながら、続けている小説を書き始めた。


 日向さんに渡した「魔地」という小説について思い出していた。

 古くからの伝承で祟り神を封じた土地が、住宅地の開発で封印していた神器が壊され、祟り神が復活。

 それを少年が祖父から託された神器の一つ、神剣で戦うという物語。

 でもラストには、少しひねりを加えて終わらせた。

 6回の連載だから短い部類だろう。

 大体2万字。

 よくまとまって、それなりにスピード感もあったと思ったけど、「作家になるべき」の評価はあまりいいというものではない。

 酷評されることはなかったけど、感想の一つもなかった。

 ちょっとがっかり。


 いまは、魔法が使える世界に、何故か最新鋭の機械が登場する物語を書いている。

 いわゆる剣と魔法の世界を描いたハイファンタジーといったジャンル。

 でも、売れている小説のような設定にはどうしても違和感があって、ゲームなどに出てくる定番のモンスターは出さないようにして、さらに獣人、エルフといった定番も極力除外して設定を考えた。

 しっかり描き切れば、かなりオリジナリティーが出せると思ってるんだけど…。


 現実の世界をベースにした物語は、ある意味かなりの規制と言うかルールがある。

 そうするとどうしても知識の少ない僕なんかが考えるストーリーは、すぐに破綻しちゃう。


 ということでファンタジーの世界を1から構築しようとしてるんだけど…。


 今までの定番のファンタジーのモンスターや、RPGゲームで出てくる魔法やモンスターを流用できるとそういうことは楽なんだよな。

 特にゲームで出てくるモンスター。

 殺して魔石をゲット、しばらくするとまた出てくるモンスターってゲームではいいけど、いくら何でもエネルギーは何処からきてるんだって思っちゃうんだよね。

 読み物としては充分面白いんだけど、さ。


 人が書いたものは楽しんで読める。

 だけど、いざ自分で書こうとすると、さすがに躊躇しちゃうんだよね。

 で、そのエネルギーは何処からきてるんだろうと思って書いているのが、今の小説を書くことにした一番の理由だったりする。

 本当にあれだけ強大なエネルギーってどこからきてんだろう。


 そんなことを考えているといつの間にか夕飯になっていた。


 父さんも帰ってきて、久しぶりに4人揃っての食事になった。


「文行は学校、楽しいか?」


 急に父さんがそう僕に聞いてきた。

 やっぱり、中学であまり楽しそうにしてなかったのが心配だったのだろう。

 でなければ、あまり話しかけてくるような人ではない。


 この答えに父さんだけでなく、母さんも疲れた感じはあるものの、僕の言葉の一字一句を聞き漏らさないような雰囲気があった。


「ああ、大丈夫だよ。友達もできて、僕の趣味に共感してくれる人もできたんだ。なんか心配させちゃってごめん…。」


「いや、お前が楽しいならそれで十分だ。高校はなんとか卒業させてやれるように頑張るからな。」


 母さんも父さんの話に同意を示したいのだろう。

 凄い勢いで首を上下に振っている。


 そんな両親と僕に対し、妹の玲央は冷ややかな視線を送ってきていた。


 父さんと母さんのその言葉には少し申し訳ない気持ちがあった。

 公立に受かっていたら、もう少し経済的に楽だっただろう。

 そして、今の父さんの言葉は、言外に大学は無理だと言っているのも理解できた。


 仕方がない。

 とにかくバイトを増やして、進学のための資金も考えないといけないな。


 僕はそんなことを考えていた。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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