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第139話 持久走

 久しぶりの持久走、1500mは正直きつかった。

 いつも家の周りを走ってると言っても、普通にジョギングだもんな。

 運動部連中がマジで走ってるし、景樹も煽ってきやがったし。


「思ったより走れるじゃん、光人。」


 爽やかイケメンの悪魔のような言葉が俺に投げかけられた。


 最初なんか俺の後ろのにぴったりくっついて、「塩入が来るぞ」と小声でささやいてきていた男だ。

 悪意以外何も感じない。


 今回は何も賭けていないし、何で煽られなきゃいけないのかよくわからんが、景樹の口元にはニヤッとした笑みが張り付いていた。


 途中からはちゃんと走り出したから、あっさり置いて行かれたが、その後を俺を抜いていった塩入が変に優越感のあるような目で見ていったっけ。


 俺は現在は帰宅部だ。

 そんな俺を現役のサッカー部が抜いていくのは当たり前なのではないのだろうか?


 須藤は文芸部のくせに結構早かった。

 何とか須藤には勝てたが、前半に景樹に煽られていなかったら危ないとこだった。

 何気に須藤は早朝の新聞配達で自転車を結構な距離使ってるのを失念していた。


 トップ20は見事に運動部が占めていた。

 当たり前か。


 俺が32位、須藤が35位、太田は51位だった。


「結構早いな、白石。さすがは元陸上部というところか?」


 新垣にそう言われた。

 その新垣はまだ部には入っていないが26位のタイムだった。


「確か、中学じゃバスケやってなかったっけ。」


「ほお、よく知ってるな。背が高くなるかと思ってやってたんだけどね。親がそんなに大きくないから、やっぱ伸びなかったよ。」


 少し自虐気味にそんなことを言っていた。

 いうほど悩んでるようではないが、この背丈は結構男子にとってのプライドにかかわってくる。


(私も170を超えた時は少しほっとしたよ)


 親父がやけに感慨深く言ってきた。


「まあ、運動部には入るつもりだけど、白石はどうすんだ?まだ入ってないんだろう?」


「まあ、そうなんだけど…。親父がなくなってバイトとか考えるとなあ。あんまりガチなとこは入れないからな。」


 この話に、「ああ」と小さく新垣がつぶやいた。


「大変だったようだからな。俺は全くの部外者だから、卒業式も中学の先生がピリピリしてた。変にマスコミが突っ込んでくると2年のときのこと、絶対突き止められるからって。」


 卒業式か。

 特に亡くなったのが俺の親父だからな。

 中学校側はマスコミ対策をかなり真剣にしていたよな。

 ふたを開けたら何もなくて拍子抜けしてたっけ。


「うん。うちの担当の弁護士さんがかなり優秀みたいで、あの事故の運送会社の不正のほうへマスコミを誘導して、俺たち家族へのマスコミ取材は落ち着いてくれて助かった。」


「白石の親父さん、すごかったからな。中2の3学期でのクラス替えなんて前代未聞だろう。それをやらせちまうんだからな。」


「おかげで多方面から恨みを買ったよ。本来なら卒業までクラス替えなんかないはずだったからな。」


「そうそう、本当、それでかなりの悪口は俺も聞いたよ。俺はクラス代わってよかったと思ってるほうだから、お前さんや親父さんにはある意味感謝してんだけど。って、ごめん。白石はそんな状況じゃなかったな。」


 そうすまなそうに新垣が言った。


「あの後ちょっと登校拒否っていうか、学校にいけない時期は確かにあったけど、今はこうして元気も出てきてる。こんな会話もまったく気にしなくできるぐらいだから、クラス替えがよかったなんて言ってもらえると嬉しいよ。」


 俺の言葉に少し照れたように頭をかいている。

 と、急に顔が真顔になった。


「そういえば、白石にいじめ、いや暴力を振るった3人いたよな。」


「岩谷、平泉、大江戸の3人な。」


「二人はあの事件の後すぐに転校したけど、大江戸はずっといたじゃん。」


「ああ、視界にも入れたくなかったけどな。」


「この高校に入学したのは知ってるか?」


 心配そうに俺の目を真剣に見てくる。

 新垣はいい奴なんだな、と思った。


「知ってるも何も、隣のクラスだ。しかもこの前の校舎あんなにのときに、俺をにらんできたよ。メンチを切る、だっけ?」


「そうか、知ってるんなら言うこともなかったかもしれないけど。あいつ、完全にお前を逆恨みしてるから。あんな事件を起こしたやつなのに、この高校に入学できたってことも不思議なんだが、あの中学は白石の事件を完全に隠蔽してるからな。」


 少し悔しそうにしている新垣に、そう思ってくれてた奴が慎吾や知ちゃん以外にもあの中学にいたと思うと、俺の心は少し晴れやかになっていた。


 あの事件ののち、全2年生を巻き込んだクラス替えを行ったということと、詩瑠玖と三笠が俺の悪口をそこかしこで吹聴していたということから、全員から嫌われていると思っていた。

 3年の2学期から慎吾と知ちゃんの力と受験という逃げられないハードルがあったから学校に行けたようなものだ。

 一応出席日数は、学校側の不祥事ということもあり、さらに内申点も定期テストだけは受けたし、悪い点は取らなかったからこそ、この高校に受かった。

 そう考えれば、加害者である大江戸天が受かっていること自体不思議ではある。


 つまり、伊薙中学は対外的に俺のいじめ暴行監禁事件は、完全に隠蔽できたわけだ。

 そこにあの事故で学校は調べられると、この隠蔽自体が世に晒されることになる。

 学校側が恐れるわけだ。


「ありがとうな、新垣。心配してくれて。大江戸一人じゃ何もできないとは思うけど、警戒はしておくよ。」


「聞いた話じゃ、「女泣かせのクズ野郎」って言われてんだろう、白石は。最初にそれを聞いた時には、全くの別の「白石」ってやつがいるのかと思ったよ。」


 そういって俺の背中をバンバン叩いた。


 新垣君、それ、かなり痛いよ。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

感想もいただき非常にうれしかった出す。

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