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第138話 H組 新垣淳介

 今回男子60名近くは第一校庭に集合させられていた。

 自分のクラスの人でさえまだ覚えていないのに、他のクラスと合同となると、もう誰が誰だかわからない。


 とはいえ、すでに男女一人ずつ体育委員会が決まってるので、うちの体育委員である飯鉢浩君が1-Gの男子を集めていた。

 1-Hも同様に体育委員を中心に集まっている。


 男子の担当は大友裕太先生。

 1-Hの担任だ。

 確か生徒会の顧問でもあるという話だ。


 さすがに体格はがっしりしていて、体育教師とその姿が物語っている。


「オーし、集まってるな。1年間君達の体育を担当する大友裕太だ。1-Hの男子は見飽きたと思うが、1-Hの担任でもある。よろしく頼む。」


 そう言って礼をする。

 つられて俺たちも頭を下げた。


「今日は初めての授業で亜もある。今まで受験勉強で体もなまってるだろうから、体のストレッチの後、持久走をする。この持久走、3か月ごとに走ってもらってタイム取ってくからよろしくな。一応、私の研究の一環でもあるんでな。」


 内心、うんざりした。

 基本的には走ること自体は嫌いではないのだが、陸上部をやめてから、一時期は走っていなかった。

 半分引きこもっていたようなところがあったためだ。


 受験が終わり、親父が死んでから、気分転換でたまに家の周りは走っていた。

 ここ最近の2週間ぐらいはひどい疲れと、この高校に入ってからのごたごたで走れていない。


 まともに走れる気がしなかった。


(ああ、長距離は苦しいから、いやなんだよなあ)


 そういえば親父は喘息持ちだったっけ。


「運動自体になれていないものもいるだろうから、まず、無理はしないように。この季節は油断すると熱中症をおこすこともあるから、適宜水分補給はしてくれ。」


(昔は精神力を鍛えるとか言って、水分なんか取らせてくれなかったなあ)


 親父の心が暗く沈んでいってるようだ。

 確かにそういうことはよく耳にする。


「GとHで適当にペアを組んでくれ。どうせ今のところ知った奴も少ないだろうから、知り合いを増やせるチャンスだと思ってな。」


 そう言った大友先生に手を上げる奴がいた。

 塩入だ。

 今、女子いないんだから何格好をつける必要があるんだか。


「ペアを作る必要性がわかりません。全員で走った方が効率的ではありませんか?」


 言ってることはまともだった。

 だが、さっき先生が言ってたことだよな、たぶん。


「ん~と、G組の塩入か。効率を考えればそうなんだろうが、今は安全優先だ。走り慣れてない奴に何かあっても全員が走ってるとその発見が遅くなる。今回の持久走はこのグランドを走るだけだが、今後いろんな場所で体育の授業があるからな。ペアを組んで相手の健康状態をチェックするっていうのも、れっきとした教育だよ。わかったかね。」


「はい、ありがとうございました。」


 おっ、礼儀正しい挨拶。

 太田先生に印象はよくなったか。


「Hが一人多いから、そいつは俺が見るぞ。では、ペア決め始め!」


 Hの男子がすごいいきおいでGの男子に寄ってきた。

 これって、あれか。

 太田先生とはペアになりたくないってことがすんごくよくわかるんだが。


 そう思っていたら俺の方が叩かれた。

 振り向くと胸に1-H 27と書かれた俺より背の低い男子の姿があった。

 

この顔には見覚えがあった。


「白石、だよな。俺、同じ伊薙中の新垣淳介。知ってるかな?」


 同じクラスになったことはなかったが、顔は見たことがある。


「新垣君か。顔は見たことあったけど、たぶん、話すの初めてだよな?」


「そうだと思う。白石は中学でもここでも有名人だからな、さすがに俺は知ってるよ。出だ、ペア、組んでくれるか?」


「こっちからもお願いするよ。知ってる奴なんていないし。でもH組の奴って、なんか必死そうに見えるんだけど…、なんで?」


 俺が素朴に新垣に聞くと苦笑いと安堵の顔を見せて、いまだ決まらない男子に哀れなものを見るような視線を送った。


「うん、まあね。太田先生、うちのクラス担任じゃないか。」


「そう言ってたな。」


「別に悪い先生っていうわけではないんだけどな…。若いだろう、あの先生。」


「そうだね。うちの岡崎先生よりは若く見えるけど、それが?」


 本当に嫌そうな顔をした。


「新婚らしいんだ、あの先生。で、奥さんとの惚気話をしてくる。」


「う~ん、うちの担任も自分んの婚約者に関して、話してたけど、柊先輩にいろいろ突っ込まれて、完全ネタ扱いだったな。」


 俺の言葉に新垣の表情が変わった。

 少し怒ったような感じだが、何故?


「そうだった、お前らのクラスの案内、ニッチ高のグレイス・ケリーがやってたんだよな!どういうことだよ!」


 あっ、そういうことね、うん。

 他のクラスから見れば確かに羨ましいかもしれん。

 俺との関係は黙っておこう。


「どういうと言われてもな。こればっかりは俺らが決めたことじゃないんだからさあ。」


 新垣の態度に対して、なんか、自然に砕けた口調になっちまった。

 まあいいか、あいつも俺に敬称はつけてないし。


「いや、まあ、そうなんだろうけどさ。いいなあ、あんな美人と短時間でも一緒にいられたんだから。」


「それは今後もチャンスはあるとは思うけど?」


「馬鹿言え!あんな美人と会話ができる未来なんか想像できんわ!あちらは、ファッション誌の表紙を飾るモデル様だぞ!」


 そういえば、そんなことをしてる人だったな。

 この前、変な自分の暗黒面を見てしまってからは、極力思い出そうとしないようになっていたっけ。


「しらいし~、お前はなぜ柊夏帆先輩の話題でそんなに冷静でいられるんだよ!あんな人目の前にしたら、俺ら男子高校生は緊張しまっくちまうに決まってんじゃないか!」


「えっ、うちのクラスの人はそんなことなかったよ、確か。」


「お前らのクラスは化け物の集まりか?」


 そういって何故か肩を落とす新垣。

 面白い奴だ。


「まあ、その話はいいんだが…。ああ、決まったみたいだね。樋口が先生の相手か、ご愁傷さま。」


 新垣が気持ちを切り替えたらしく、先生が肩を抱いている男子生徒に視線を送っていた。


「散々聞かれてたのに、また好きな女子のタイプや、恋バナやらされるんだろうな、樋口の奴。」


「ああ、そういう先生か、太田先生って。」


「そう。自分が結婚して幸せだからって、変に生徒の恋愛に介入したがってるらしい。うざいんだ、本当に。」


 そりゃあ、逃げるな、みんな。


「よし、ペア組めたな。じゃあストレッチは、そのペアでやるぞ。」


 俺と新垣は適当に周りからスペースを開けて、先生の指導の下他の生徒と共にストレッチを開始した。


この物語を書いていると、次々と書きたいことが出てきて、登場人物も多くなりすぎて、混沌としてきています。

「親睦旅行編」などと銘打っておきながら、いまだ出発すらしていない有様。

親睦旅行内での構想は大まかには決まっておりますが、そこにたどり着くまでにどれほどかかるのか、作者自身が不安です。

よろしければ今度とも呼んでいただけると嬉しいです。

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