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第135話 帰りの電車にて

(荒れそうだな、親睦旅行とやらは。なあ、光人)


(いやな予言するな、親父)


 二人と別れて今は帰りの電車の中、恒例となりつつある親父との反省会中。


(これ、反省会なのか?)


(だろう、主に俺の)


(ああ、そういえばそうだな)


 親父の突っ込みにも素直に答える。

 実際、学校での、特に女子とのことは、正解がわからないことが多い


(そう言われても、女性の考えてることは私にもわからないことが多い。特に好意に関しては、単なる好意か、恋愛感情か、いいように利用されているのかなんて私には不明なことが多いな)


(自分に向けられる感情はそうだろうけど、第三者としてみてるとわかることって多いんじゃないか)


 少し間があった。


(おお、確かにな。光人を見てるとその意見は非常に解りやすい。といっても、私は光人の視点で物事を見てるから、お前の視界の外で行われてる対象の行動が見えないとわからないこともあるんだよな。そう考えると、私の立場は第2.5者ってとこか)


(2.5次元みたいな言い方、やめてくれ)


 いい年して変に世間の事情を齧ってると、訳の分からん言葉が出てくんだな。


(そう言うなって。だからこそ光人にアドバイスもできるってもんだろ)


 反論できん。


(そういえば、朝のことはありがとうと言っておくよ。でないと変な風に自分の感情に振り回されるとこだった)


(まあ、そりゃあな。柊夏帆に恋人がいるっていう事実に光人の思考がおかしくなったのはすぐにわかった。お前の感情を間近に見ていた私には、何故その情報に揺さぶられてるのかはすぐにわかったが、でなければおかしな勘違いに発展するところだな。「吊り橋効果」と同じ理屈だろう)


(言われればいちいち納得なんだけどな。あんな負の感情、自分では認めたくないし。なら失恋してショックというほうが納得しやすい)


(そんなとこだ。彩ちゃんがそんなことで泣くというのも困ったことなんだが)


(あれはまいった。何で柊先輩に恋人がいる、って嬉しそうに伝えて着といて、急に泣き出すんだから)


(いや、まあ、光人のせいだから)


(半分はそうだろうなあ、とは思ってるけど…)


(光人が柊夏帆に惹かれてるんじゃないかと思い込んでいる彩ちゃんが、恋人がいるという事で諦めてくれると思った。ところが思っていた以上のリアクションを光人がした。それで自分のことはそんなに想われていないと思ってしまって、涙が零れた。そんなとこだろう)


 俺は大きくため息をついた。

 あやねるの想いは解っているが、いまだ自分に向けてそこまで入れ込めるのか?

 親父の件があるとしても。


(そこは何とも言えない。彼女の心のバランスだとは思うが)


(こればっかりは何ともわからないか。女性の心理は正直解らんことが多いもんな。まあ、それは置いといて)


(塩入君のことか?)


(それもあるけど、弓削さんの情報もな)


(朝方の塩入の態度もそうだけど、山村グループの動きはちょっとね)


 そう、朝方に殴りかかる勢いだった塩入が、なんで山村咲良と一緒にいたのか?


(弓削さんの話だと弓削さんと室伏以外の班員が放課後、なんか話をするらしいとは言ってただろう?そこに塩入が加わっていた。そういうことでいいかな、親父)


(そうなるな。光人のことは置いておいて、この場合、ターゲットとなりうるのは彩ちゃん、だろうから)


(本来はあやねるを貶めるようなことを目的としてたみたいな感じだったんだけど。そこにあやねるを好きな塩入が混じってる。意味が解らん)


(何がしたいのか。人の不幸は蜜の味とは言うけど…。実際には何か事を起こすつもりなんだろうがな。私には想像も出来ん。とりあえず彩ちゃんのことを守るってことが一番なんだろうな)


 親父の言うことはもっともだ。誰も未来を正確に予測することなんてできないんだから。


 ただ、女子同士だと男の俺が出来ることはどうしても限られちゃうんだよな。


 女子だけでしか入れない場所、トイレ、風呂、更衣室…。


 どうしても智ちゃんや弓削さんに手伝ってもらうしかないんだよな。


 う~ん、智ちゃんなあ。


(光人が頼みづらいのは理解できるけど、智ちゃんはいい子だぞ。お前がしっかり頼めば無碍にはしないよ)


(それは解ってるけどさ)


 頼みづらいよな。

 他のことならいざ知らず、あやねるのことだもんな。


(一生友達なんだろう、光人)


(確かにそうは言ったんだけどさ…)


(変なプライドや気遣いはこの際、考えるな。実害が及ばないようにするための手段、出来る限り用意しておけ)


(それは解ってる。ああ、わかってる)


 もうすぐ伊薙駅だ。


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