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第134話 トラブルシューティング

 あやねるがアイスティーを飲んでいた。

 俺はオレンジジュースを飲んだ。


 伊乃莉は先に飲んでいたドリンクを飲み終え、今はコーラを飲んでいる。


「さて、ここに広げられた資料は何?あやねる。」


 伊乃莉が聞いてきた。

 俺がドリンクバーから戻ってきてから今まで、膠着状態が続いていたんだが、すでにあれから5分以上は経っている。

 このことを言うべき立場のあやねるが何も言おうとしていないのが原因だ。


「う~ん。さっきの祈りの悩みを聞いてから、この話をしたらいいのかどうか、ちょっと迷っちゃって……。」


 つまり、このケーススタディには当てはまらない、ということらしい。


「で、この「トラブルのケーススタディ」って、なに?」


「親睦旅行でありがちな問題点についての生徒会資料。と言っても、基本は引率教師が対応することなんだけど、生徒会役員として初期の生徒自身で解決できることがあれば、あまり大きな騒動にしなくて済むかもしれないってことで、編纂されたもの。家で一応目を通しておけって言われた。」


 俺はその資料を手に取り、中身に目を通していく。


 あらかたは恋愛トラブルらしい。

 入学して半月もたっていないのに恋愛トラブルというのもなんだかと思ったが、大抵は内部進学者が絡んでいた。


 この高校の男女比は2:1。そのため、内部進学性の中には、この機に乗じて、まだこの高校をよくわからない外部受験組に対してのちょっかいが後を絶たないらしい。


 この親睦旅行は日照大施設の研修所を使用したもので、修学旅行と違って、他校との諍いがないだけまだしもらしいのだが、特進、内部進学、外部受験での暴言からの喧嘩ということもあるようだ。

 もっとも、特進クラスはそんなことで減点を食らえば、2年時に進学コースに落とされることは知っている。

 他のクラスだって日照大への推薦というアドバンテージを失いかねないため、できれば生徒間の争いだけで仲介に入り、教師の介入を防ぐことがみんなのため、ということらしい。


 ではあるが、先の大江戸の件となると、生徒会としても介入し辛いということだろう。


「大江戸って光人のいじめの加害者の一人なんでしょう。」


 伊乃莉が急にそんなことを言い出した。


 事実だからどうしようもないが。


「ああ、そうだ。」


 俺の言葉にあやねるの身体がビクッていう感じで固まった。


「まあ、いやな奴だとは思っていたけどさ。変に悪ぶろうとしてるけど、ここじゃ、浮いちゃうよね。」


「そうだろうね。校舎案内のときに見かけたけど、まるっきり成長してないよ、あいつ。」


 何か問題は起こしそうだが、俺や俺の周りに危害を加えようとするなら、今度こそ戦う。

 そう決心した。


「光人君、顔怖いよ。」


 あやねるが不安そうに俺に言ってきた。

 俺はこわばってる鵜顔の気づき、息を吐いてその緊張を緩める。


「ごめん、あやねる。ちょっと嫌なことを思い出しちゃってね。」


「ううん、こっちこそ。いじめのときの人がいたとなれば、それは緊張するよね。」


 俺を気遣ってくれた。


「話を戻そう。大江戸が何かしらの問題を起こせば、すぐに先生に報告しよう。それが一番だ。」


「まあ、確かにね。注意してみておくよ。」


 伊乃莉が頷いたのを見て、もう一度資料を見る。


「しかし、大変だな。2日目の夜が告白のピークねえ。で、振られて変な行動をとるやつや、うまくいって次の日からイチャイチャして、周りに迷惑をかける、か。それをさりげなく注意すると。大変だね、あやねる。」


「うん。その資料読んでちょっとブルーになっちゃったよ。二人にもこの情報を共有してもらって、手伝ってもらいたい。」


「大したことできないぞ。」


「うん、でも、暴力沙汰はそんなにないから、大丈夫だとは思うんだ。だからお願い!」


「まあ、しゃあねえよな、あやねるの頼みじゃな。」


 俺はそんな風に肯定した。


「わかったよ、あやねる。ただ、こっちでも何かしらあったら協力をお願いね。」


「うんわかった。」


 俺が黙っていると、伊乃莉が俺の目を突き刺さんばかりの視線で射抜いてきた。


「ああ、ああ、もう、わかったよ。大江戸は何とかしなきゃとは思ってたからさ。何かあったらちゃんと動くって!」


 俺の言葉に伊乃莉が花を咲かせるような笑みを向けてきた。


「ありがとう、光人、あやねる。」


 俺は大きなため息を漏らした。


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