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第129話 班会議 Ⅱ

 須藤は自分が調べたというペットボトルロケットの簡単な概要と制作方法の書かれた紙を、全員に配った。


 既に旅行のしおりは配られているが、そこに簡単に触れられているものよりも情報量は多いが、わかりやすく作られていた。


「これ、須藤君が作ったの?」


 あやねるがそのプリントを簡単に目を通したのちに、須藤に顔を向けて言った。


「わかりやすいよ、これ。」


「確かに。一応理屈は知ってるつもりだったが、わかりやすくまとめてまとめてあるな。」


 景樹もあやねるの言葉に賛同する。

 塩入と須藤以外の班の人が頷いた。


「大したことはやってないよ。ネットから拾った文書をつぎはぎしただけ。」


「それでも凄いよ。他の人はこんなもん用意してないんだからさ。」


 元々、塩入の「経験者」発言が虚偽の可能性に言及していたのは景樹だ。

 だからこそ、その意をくんだ須藤がこの資料を用意した。

 この前、そんな話をしたわけだが…。

 逆に言えば、塩入だって、ここまでとは言わなくても自分の発言に責任を持っていれば、資料を作るぐらいの時間はあったはずなのだ。


「凄いな、須藤って。ちょっと地味目な奴だと思ってたんだけど、見る目変わったわ。」


 瀬良が単純に須藤を褒めた。

 陰キャっぽく見えたが、出来る奴、って感じに瀬良の中で須藤の人物像が更新されたっぽい。


「こんなの、誰だって作れるだろう!」


 塩入が急に逆ギレした。

 その声に他の人の視線が冷たく刺さる。


「誰でも作れるかもしれないけど、作ってこなかった人が言っていいセリフじゃないよ、塩入君!」


 あやねるが塩入の発言に反論した。


「私も宍倉さんの意見に賛成。」


 今まで一言も発言せず、景樹を見つめていた今野さんも珍しくそう言ってきた。


 これが男子の発言であれば一波乱ありそうなところだが、さすがに女子二人、特にあやねるの言葉に対しては何も言えずに、黙ってしまった。


「じゃあ、当日は須藤が指導して、ペットボトルロケットを作るとしよう。いいよな?」


「いや、ちょっと待った!俺にそんな指導なんてできないよ。」


 須藤が当然と言えば当然、そういう立場になんて慣れてないんだから拒否をしようとしている。


「大丈夫だよ、須藤。俺たちがサポートしてやるって。」


 そう言いながら俺の方に視線を送る景樹。

 つまり俺達って班員ってことではなく俺と景樹ってことか?


「じゃあ、方向性はこんなとこかな。塩入もさっきはあんなこと言ってたけど、これでいいだろう?」


「……、ああ、いいよ。」


 ふてくされた態度でそう言った。


 時間的にはちょうどいい時間になった。


 先生の一声で全員机を片付ける。


「一応、明日と土曜は普通授業になっている。時間割通りだからな。教科書なんかの忘れ物はしないように。」


 明日は6時間授業で、土曜は4時間。

 週明けに親睦旅行か。


 今日はそのまま終了した。

 と思ったら瀬良が須藤に話しかけている。


 結構須藤のことを気に入ったようだ。


「光人君、今日も生徒会の仕事があるんだけど、出来れば一緒に帰りたいな。」


 あやねるが帰りしなにそんなことを言ってきた。


 いや、可愛いんですけど。


「ああ、いいよ。どのくらいかかりそう?」


「今日は親睦旅行についての生徒会としての立場と、トラブル発生時の対処法みたいな感じの講義だって。」


「え、そんなにトラブルってあるもんなの?」


「私もよくわかんないんだけど、昨日言われたんだよね。親睦をメインにしてるってこともあるけど、男女間のトラブルが多いって話。」


「そんなことに巻き込まれたくはないね。じゃあ、終わったらLIGNEちょうだい。どっかで暇潰してるよ。」


「うん、お願い。」


 そこで、昨夜、静海から言われてたことを思い出した。


「あやねるは明日の午後って時間ある?」


「それって、ダンス部の公開練習?」


「あれ、よくわかったね。静海から誘われたんだよね。神代さんだったかな、静海の友達。彼女が静海と俺を誘ってきたらしいんだ。で、よかったらあやねるもって思ってさ。」


 神代さんの名前に、微かに表情が曇った気がしたんだが…。

 すぐに笑顔になった。


「それなら、私も柊先輩に誘われて、伊乃莉と行くことのなってるんだけど、光人君も誘おうと思ってた。ただ、昼の件もあってどうしようかな、とは思ってたんだけど。」


「柊先輩ってダンス部なの?」


「詳しくは知らないけど、1年の時はそうだったみたい。今はやめてるけど。でも妹の秋葉さんがダンス部で招待状を貰ったからって言ってたよ光人君も来るんならよかった。」


「まあ、そんならいいか。須藤と景樹でも誘ってみるよ。じゃあ後で連絡してくれ。」


「了解。」


 あやねるはそう言うと、元気よく教室を出て行った。


 その際、こちらに視線を向けていた塩入と目があう。

 あちらは慌ててその視線を逸らして、何人かと教室を出ていくのが見えた。

 その中には昼、弓削さんが言っていた山村咲良の姿もあった。

 ちょっと嫌な感じがした。


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