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第119話 生徒会役員室 Ⅱ

 今年度の役員会の活動指針などの話が終わると、斎藤会長は逃げるように部屋を出て行った。

 逃げる様になんて表現しちゃったけど、何でも家での用事があるらしい、とは辺見先輩が教えてくれた。

 その辺見先輩も外山先輩とさっさと帰ってしまった。


 一人この会を欠席していた会計責任者の3年生、八神先輩が戻ってきたのはそんな時だった。


「間に合わなかったか!」


「しょうがないよ、八神君。男女バスケの予算の件で顧問の先生に呼ばれてたんでしょう?」


 岡林先輩が八神先輩に声を掛けた。


「宮原先生と松下先生か。とすると強く言ってるのは宮原先生?今回の男バスの予算が低いことに関する文句かしら。」


「まあ、そんなとこ。というか、同じバスケだから予算を男女で融通させろ、みたいな。」


「だって女バスは狩野さんの活躍で全国一歩手前まで行ってるんでしょう?それを見越しての予算で、各部長は、一応納得させたじゃない。」


 岡林先輩の口調がきつい。かなり苛立ってるよう。


「そうなんだよ。生徒たちは全く問題にしてないのに、だよ。顧問の宮原先生がいきり立っちまってさ。松下先生も一応は宮原先生の後輩だから強く言えなくてね。」


 大きなため息をつく八神先輩。

 この人も体格は凄い。

 元ラグビー部らしい。

 斎藤会長に誘われて会計に立候補したって聞いている。

 実際の会計業務は外山先輩がやっている。

 というより、外山先輩の構築した表計算ソフトがかなり優秀で、各部に無料で配布され、さらに校内の学生が携わってるPCに接続、一括管理できるようにしてしまった。


 通常、上部組織のこういった情報管理は反発を招くのだが、年度予算時に、諸経費という枠組みを作り、そこに予算をある程度組み込むことを認めたのだ。

 つまり、上限はあるものの、その部活で経費報告をしなくていい予算を組み込んだというわけだ。

 これは部内での打ち上げや、旅費の一部だったり、ボランティアで手伝ってくれた部外の人へのお礼も含まれている。


 毎年、部内の打ち上げパティ―、突発的な遠方への練習試合の旅費、さらに有志による応援へのささやかなお礼は、領収書付きでの明細を求めていた。

 本来、その対応は正しい。

 だが、実際にその部の運営を行っているものにとっては頭が痛い問題だった。


 先の金銭の流れ上、認められないものがあったり、低い金額が上限として設定されていたりするのだ。


 このシステムの提案が外山先輩であり、その結果校内の部活動や委員会などの金銭の動きをある程度監視できるネットワークが作られたのだ。


 このように、非常に有用な後輩が会計にいるため、八神先輩は予算絡みは当然として、部活間の諍いや、顧問の暴走に嬉々として介入している。


 予算の全校的な管理がある程度の形になっているが故、生徒会は堂々とそういった行き過ぎる行為に対処できるという事らしい。


 私自身は、この予算ネットワークというもには、まだ説明される段階しかないので、男女バスケ部の予算のやり取りには、先輩たちの話していることを自分なりに解釈していくしかない。


「で、八神君はどう言って宮原先生を納得させたの?」


「まあ、簡単ではあったよ。部員全員がすでに決まったことに逆らう気がなかったからね。宮原先生が、勝てるチームにするために、時期エースとして期待している湊たちを強化する気だそうでね。」


 ここで男バスの湊さんという名前が出てきて、ちょっとびっくりした。


「でだ、男女のバスケから一定以上の予算を出し合い、プールしようとか言い出したんだよ。」


「ああ、諸経費枠の金額をそこに充てる気か。」


「まあ、そういうこと。で、今回の予算の目玉は狩野が率いる女バスの全国進出だ。本当に行けるかどうかは別にして、その補助費を予算に計上して、通ってる。本当に単于出場とあれば、寄付金を募るけど、初動でまとまった金額があれば宿泊地、練習場所の選定に有利だそうだ。で、宮原先生はその予算と、男バスのを合わせて流動的に使えるようにしたい。特に全校出場が出来なければ余るその予算を男バスで使いたいってわけだ。」


「うわあ、汚いこと考えるなあ、宮原っち。でも、その浮いた予算をどうしたいんだ?」


 純粋に辺見先輩が聞いてきた。


「強化合宿をしたいらしい。港のバスケの勘は悪くないんだが、線が細い。もう少しスタミナをつけて、筋肉を使えるようにしたいんだってさ。」


「よくそんなことまで宮原先生は喋ってくれたね。もう本音じゃん。」


 大月先輩が今までの話にそう感想を入れた。


「ああ、俺、喋らせましたから。こっちには外山の作ったネットワークがあるんでね。シミュレーションは完璧です。まず本音を喋ってもらわないと、いい考えも浮かびませんから。」


「それで?八神君が本音聞くだけの訳がないよね。」


「もしプールして、女バスが全国制覇、なんてことになったら、プールされた資金は根こそぎ持って行かれますよ、囁いただけ。」


 ニヤって感じの笑いを浮かべた。

 その可能性って、そんなに高いの?この高校の女子バスケット部はそんなにレベル高いの?


「まあ、流石に全国制覇は無理だろうけど…。全国出場ってだけで、その資金はなくなるよね。」


「その結論に至ったみたいでね、宮原先生も。引っ込めてくれたよ。」


 そう言って爽やかそうに笑っているが、その眼には何とも言えない陰りみたいなものが見えた気がした。


「まあ、俺の方はそんな感じ。議案は終わったんだろう?みんな帰らないのか?」


 その声にみんなが柊先輩を見ていた。


「ちょっと、何があったか聞きたいなって思ってんだ、カホ。」


 岡林先輩が残ってる皆を代表して、柊先輩に声を掛けた。

 柊先輩は岡林先輩の言葉に苦笑いしたが、他の人の興味津々な目に耐えられなかったようで、口を開いた。


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