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第118話 生徒会役員室 Ⅰ

 柊先輩が2年の先輩に呼ばれてから、小1時間は過ぎていた。


 私は呼びに来た男子に何かされているのではないか?と変な心配が顔をもたげてきていた。

 そう思って他の生徒会役員、特に先輩たちの様子を見たが、普段とそれ程の差があるわけではなかった。


 なんとなく告白なんだろうなとは思ってはいた。

 ただ、すんなり柊先輩が首を縦に振る想像もしづらい。

 そこで何らかのトラブルがある可能性を考えてしまう。


 そんな私の心が揺れていることが態度に出てしまったらしい。


「柊先輩のこと、気になる?宍倉さん。」


 辺見先輩の優しそうな表情が私を見ている。


 その横で、外山凛梨子先輩がニコニコしていた。

 この二人の雰囲気はピリピリしそうな空気でもそれを柔らかく包み込むものがあった。


「ああ、はい、気になります。」


「勇気あるよな、湊も。この雰囲気の中、柊先輩を連れて行くんだから。普通は終わるまで外で待ってるよ。」


「う~ん、勇気というか…。湊君って、まあ、真面目なんだけど、集中すると周りが見えなくなるからね。なかなかモテるのに、この一年浮いた話が出ないんだよね。それだけ夏帆さんに惚れこんでるんだけど…。呼ばれたときの夏帆さんの顔思い出すと、ほぼ知らないよね、彼のこと。」


 外山先輩が辺見先輩に続いてそう言った。

 さっき、岡林先輩の話で男子バスケ部の時期エースとまで言われてる人みたい。

 それだけの有名人なら、無茶なことはしないとは思うけど…。

 その瞬間、中学の卒業式での悪夢が思い出されて、少し気持ち悪くなった。


「港はいい奴なんだが、いい意味では集中力だけど、悪く言えば周りが見えてないとこがあるんだよな。この部屋は言って来て会長に睨まれてもひるまずに柊先輩に声掛けてたから。」


「少し噂が流れたからだと思いますと、会長。」


 岡林先輩の言葉に、何故か大月先輩の身体がビクッとなるのがわかった。


「岡林先輩、噂って何ですか?」


 私と一緒にこの生徒会に所属した1年男子、あれ、名前忘れちゃった。


「ああ、そうだね。1年生は知らないよね。この3月でしたっけ?」


 そう言って辺見先輩が斎藤会長に話を振った。


「3月で間違いない。春休みの時だ。」


 そこで会話を切った。

 それ以上話すつもりはないらしい。


「その時に会長が柊先輩にコクったんだよ。」


「「ええ」」


 私と名の分からない男子が同じタイミングで声を上げた。

 でも相変わらずクールな同じ1年生、笹木莉奈さんは全く動じてない。

 知っていたのか、関心がないのか?

 静かに自分の前のコップに注がれた麦茶を飲む。

 と思ったらむせていた。


 これはあれだ、自分をクールに演出しようとして、失敗した奴だ。


「付き合ってるんですよね、この高校のマドンナと。」


 辺見先輩が揶揄うように確認をする。


「うん、まあ、そうだ。」


「という事だよ。」


「「「ほお~」」」


 これは3人の1年生が揃って声を上げた。


「そうだよね~、斎藤会長と柊先輩ってカップル、似あってそうで似あってないよね~。」


 ほわほわした感じで、凄い皮肉を言ってきたのは外山先輩だった。

 言っている内容と、声が本当にあってない。


「俺のことはどうでもいいだろう。柊を好きになるのはしょうがないと思わないか?」


 そう、いい訳ではないんだけど、なんか男らしくない言い方に、会長さし差が消えている。


 この会長の言葉に、1年の男子君が頷いてるけど、辺見先輩は苦笑、大月先輩は難しい顔をしている。

 辺見先輩は外山先輩と付き合っているから、会長の言葉に賛同は示しづらい。

 ただ、大月先輩と会長、柊先輩の関係はよくわからない。

 もともと生徒会では大月先輩が会長になる予定だった。

 だが、この高校が系列である日照大の不祥事を前面に出して立候補した斎藤会長が当選した。

 しかしながら、生徒会運営のノウハウはまったく持っていない斎藤会長が、大月先輩を引き込んで、事務的なことを担当させているようだ。


 その辺の確執なのか、それともまた違う理由があるのか。

 私にはわからなかった。


 でも、斎藤会長と大月副会長の間には何らかの因縁めいたものがあるのかもしれない。


「まあ、そろそろ帰ってくると思うよ。港が酷いことをするような男じゃないし、仮に何かあれば、連絡、来ると思うんだ。一応、スマホで会長をすぐ呼び出せるようにしてたはずだ。」


 私が変な事を考えていると、辺見先輩がその話を打ち切るように、口を開いた。


「さっきも確認したけど、1年生の親睦旅行終了したのちの金曜日の放課後に、評議会を開きます。柊先輩はいないけど御園さんがいるから宍倉さんは書記について二人で話してください。柊さんが帰ってきて。」


 扉が開いた。


 今まさに話題の中心の柊先輩が戻ってきた。


「ごめんなさい。ちょっとトラブルがありまして、思ったより遅くなっちゃった。」


 少し焦ったように頭を下げて、そのまま自分の席に着いた。


「大丈夫なのか、そのトラブルって。」


 会長が心配そうだ。

 さっきの話を聞いていないときでも、この二人に何かあるかと思えるような優しい声だった。

 もっとも、さっき二人の関係をばらされた会長が、隠す必要がなくなったという感じかな。


 でも、いいなあ、恋人同士って。

 私も、そういう関係になれるのかな。


 トラブルの具体的な内容には触れずに、残った議案について確認がとられていった。


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