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第114話 有坂裕美 Ⅶ

 結局柊先輩の答えは聞けなかった。


 あの時にタイミング悪く、詩織が私を探しに来たのだ。


 そこで私は、文芸部現部長の大塚詩織を紹介した。


 当然、部活動会議で見知ってはいたのだろうが、親しく話したことは無かったらしい。


 柊先輩もテスト開けでの生徒会活動中に親友の頼みを断りづらくて、この場所に来たとのことで、すぐに生徒会室に戻っていった。


 肝心のことは聞けずじまい。

 というか、何も思っていなければ、すぐに返事が来そうなものだとは思う。


 やっぱり、柊先輩の本心はわからなかった。


「で、いったい何をわが校が誇るマドンナ、女王とも言われる柊夏帆に対してけんかを吹っ掛けたのかしら?」


「詩織さん?ちょっと偏見が過ぎるんじゃないかしら。私は品行方正の鏡、文芸部副部長の有坂裕美ですよ。」


 私の変な返しに、笑いそうなのをこらえる詩織。

 いやそこまで面白いとは思えないんですが…。


「ブラウスの第2ボタンまで外して、思春期真っ盛りの男子の目を引き、高速ぎりぎりの髪のウェーブと色。さらに微妙に見えそうで見えないパンツを隠すスカート丈。肌の保湿剤というには少々色が付きすぎじゃないのかなあと思える、顔の色。リップクリームというには少し派手目の唇を見て、誰が品行方正って思うのかしら。テストの点数がよくなければ、毎日進路指導部行きよ!」


「はい、重々承知しておりますです、はい。変なことを言って申し訳ありません、詩織様。」


「その言い方、半分ふざけてることはわかって得るけど…、まあいいわ。で、あんな有名人に何を絡んでた?おそらく白石君関係でしょうけど!」


 私の座るベンチの前に両手を腰に置いて仁王立ちの詩織が決めつけて言ってきた。

 まあ、確かに、半分は、その、なんだ、その通り、なんだけど……。


「ここにいたのは落ち込んでるとき。で、マドンナがここにいる。裕美がここに来た理由は白石君。となれば、必然的にマドンナに絡んだのは白石君がらみ、って筋立てが出来たんだけど?」


 私が何も言わないから、そんな乱暴なストーリーを作らないでほしい。


「はあ~、詩織に嘘言ってもしょうがないしね。確かに光人と会えないんで、というか避けられてるっぽいから、落ち込んでここ、いつもの第二体育館裏までやってまいりまして、いつもの非常階段の影の縁石で落ち込んでおりました。」


「うん、素直でよろしい!で、どうやってマドンナ、柊先輩を呼び出したの?つながりないわよね?」


 まだ、光人の剣で柊先輩に絡んだと思われてる。

 あながち出鱈目ではないけどさ、最初にどうやったら呼び出せるのか、教えてほしいよ。


「裕美は辺見君と顔見知りだもんね。その伝手?」


「はあ。辺見の名前が何でここで出てくんだよ!」


「仲いいでしょう、裕美。辺見君、生徒会の広報担当だから呼べなくはないんじゃない?」


 見当違いも甚だしい。

 奴と仲良しって、どこからその想像が湧いてくんだよ!


「ちげえし!あいつとはただの腐れ縁だっつうの。何回も説明したよな詩織。」


「聞いたけどね。去年のクラス替えのときに辺見君に詰め寄ってかなり文句言ってたよね。あれ見て、ああついに裕美も恋をしたのかって思ったんだけど……、今回の件でそれが間違いなのは知ってる。でも、仲いいよね?」


「ああ、本当に詩織はうざいわあ。あれは、奴が凛梨子と同じ進学コースに行きたいがためにわざとテストや評価を落としててたからだよ。あいつの頭なら普通にやってりゃ特進キープできたんだから。」


「確かに、辺見君の外山さん大好きは公然の事実だからね。」


「特進と進学は根本的にカリキュラムが違うから生活時間が変わっちゃう。1年のときから辺見がそれで苦労していたのは知っていたからさ、わからなくもないんだけど…。本当に天才を好きになると、苦労するわね、辺見君。」


 ああ、思い出しただけでムカついてきた、辺見の奴!


「幼馴染なんだっけ、あの二人。」


「らしいな。でも凛梨子が中学受験に失敗して、3年間公立でかなり苦労したらしいよ。遅刻が多かったらしい。まあ、納得だけど。」


「辺見君がサポートしたいからってのはわかるけどね。で、辺見ルートがないとすると、どうやって?」

「だ・か・ら、私が呼び出したんじゃないっつうの。ここで偶然にあったんだよ。」


 私がここで起きたことを詩織に説明した。

 こういう時は変に茶々を入れないからな、詩織。


「湊君か~。焦った気持ちはわかるけど、さすがに斎藤会長相手じゃ分が悪いよね。彼も結構モテるから、自信はあったんだろうけど…。柊先輩じゃないけど、見た目だけの評価は悲しいもんね。」


 幼馴染がそのまま恋人になるってどのくらいの確率なのかな。

 幼馴染だからって、好き同士になるとは限らない。

 ラブコメ的には負けヒロインとか言われてるけど。私は絶対に正臣のお嫁さんになる!とか詩織は思ってそうだけど。


 自然と顔がニヤニヤしてしまう。


「変なこと考えてんでしょう、裕美!そんなことより、この話が同白石君にかかわってくるの?」


 ありゃ、どうしてもその話に戻すんだね、詩織。


「光人のお父さんの死亡事故に柊先輩の従弟が関係してるそうだよ。その縁らしいから。」


「それで白石ハーレムにマドンナの名前が絡んできてるのか、踏む、なるほど、なるほど。」


「おい!詩織。今、サラっと、とんでもない単語、ぶっこんできやがったな?なんだよ、その「白石ハーレム」って。」


「ああ、気にしないで、裕美。つぐみが作った造語だから。巷で出回ってるわけじゃないからさ。」


「気になるに決まってんだろう!巷で言われてなくても、つぐみが勝手にそんなことばらまいたら、すぐに広まる単語じゃねえか!」


「しょうがないんじゃない?あんなにかわいい子の囲まれてたら。あんたも入りたいんだろう、「白石ハーレム」。」


「せめて白石ファミリーとしてくれ……。」


 泣きたくなってきた。

 もう一度非常階段の影に行こうかな。


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