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第106話 神代麗愛 Ⅰ

 前に静海を見つけた。

 どうやらよく言ってた兄らしき人と一緒らしい。

 

 静海はお父さんを亡くしてかなり落ち込んでいた。

 当たり前か。


 私もお父さんとそんなに仲がいいってわけじゃないけど、死んだらかなり悲しい。


 こんなことを言っちゃいけないんだろうけど、静海のお父さんが死んでから、私は家族が亡くなるという事を真剣に考え始めた。

 そう、みんな、いつかは死ぬんだ。

 そんな当たり前のことを思い知らされた。


 お父さん、お母さん、そして3つ上のお姉ちゃんと5つ下の妹。


 大事にしたいと思った。


 静海はお父さんが亡くなる前はお兄さんのことを、かなり悪く言っていた。

 特に同じ学校に通う可能性が出てきたときのあの嫌がりよう。


 それがどうだろう。

 前にいる兄妹の仲の良さは。

 まるで恋人のように手を握っていたりする。

 見ると兄が無理やり握ってる、というわけではない。

 どちらかというと静海の方が積極的に距離を詰めている感じだ。


 というか、おかしいよねその距離感。

 3か月前の静海に見せたいわ、その態度。

 どう罵れば自分に近づいてこないかって、私に聞いたよね。


 うわあ~、今すぐ静海の所に行って、文句言いたい。

 こっちは静海のためにネットで検索してまで「非モテ童貞陰キャ野郎」なんて言葉を見つけてきたのよ。

 その時まで処女という言葉は知ってても、「童貞」なんて言葉は知らなかったんだからね!


 なんか静海の愚痴聞いて、一生懸命役に立とうとしてたことが馬鹿らしくなってきた。


 確かに、お父さんの事故後、お兄さんに対する態度がおかしくなってきたのは解ってたけど!

 わかってたけどね!


 お父さんが亡くなった後、白石家を支えて、その評価が変わったらしい、みたいなこと、鳴海も言ってたけどね。


 本当に鳴海は陽誠と付き合ってからは、私たちを置いてきぼりにしてるからな。

 で、静海は静海でお兄さんにべったりってねえ。


 最近、お姉ちゃんも彼氏ができたようなこと言ってたからなあ。

 なんか周りが春だらけで置いてかれてる感じがするんだよなあ。


 でも、ちょっと気になるんだよね、静海のお兄さん。

 背は普通より少し高い感じかな。


 後姿を見ている感じだと、陰キャ野郎って雰囲気は感じない。

 それに、なんだか綺麗な感じの人と、可愛い感じの人と一緒にいる、よね。

 単なる偶然?


 あっ、綺麗な人の間に可愛い感じの人が割って入ったような…。


 なんか、静海のお兄さんって、もしかして…モテモテなんですか?


 あの嫌い様は何だったんだろうか?


 もしかして、高校デビュー?


 でもなあ、そうなると静海の態度はおかしいんだよな。

 どちらかと言えば、私たちをお兄さんに近づけたくなかったんじゃない?

 私たちがお兄さんに接近するのを恐れるくらいのブラコンだったか!


 でも、あの言い方は、そうとも言えないような感じなんだよね。


 ここからじゃ顔見えないし、やっぱり行くか!


「静海、おはよう!」


 私は後ろから静海の肩を叩いた。


 静海の顔が驚きで固まっていた。

 あれ、私、嫌われてる?


「麗愛!あれ、今日は朝練ないの?」


 ん~、そういう驚きではないよね。

 おそらくだけど、声を掛けちゃいけなかったんだね。


 今日はダンス部の朝練がない、なんてことで普段私がいるはずのない時間にいたことに驚いた、っていう事でもない。

 単純だよね、静海。

 私にお兄さんを見られたくなかった。

 特に自分が親しくしてるところなんかは、って感じかな。


 私たちにあれだけ悪口言ってたからね。

 普通なら、そこは空気を読む、ってところだけど、あんなにべったりくっつくとこ見ちゃうと、お兄さんの顔は是非拝見したいよ。


「あぅ、この人が、静海のお兄さん?」


 違ったらそれは静海が恋する人確定って感じですよね。


 一応肯定したけど…。

 やっぱり紹介する気はないみたい。


 でも、遠目で見てたけど、あとの二人もやっぱり、美少女って感じ。

 いや、背の高い人は美人と言った方がいいか。

 この高校、二人も強烈な美人がいるからなあ。

 なんとなく、だけど、高校生はみんな美人を選りすぐってるんだろうか?


 完全に困惑の表情を浮かべてるけど、静海はお兄さんからは離れないんだ。

 普通、こういうときは慌てて離れるんじゃないのかな、よくは解んないけど。


 ああ、あれか、この二人の美人お姉さんに対抗してるのか。

 そうか、そうか。


 そんな感じで静海を見ていたら、お兄さんが困った顔で自己紹介してきた。


 あれ、陰キャって誰のこと?ってな感じで、その時初めて顔をしっかりと見てしまった。


 同性のお姉さんの顔はまじまじと見てもあまり問題ないけど、異性である男子の顔はあまりしっかりとは見ないようにしていた。

 私が男子を見ると、相手が変に誤解することがあって、迷惑なんだよね。


 といっても、しっかりと挨拶をしてくる人を見ないのは失礼だと思う。


 白石光人、そう自分の名前を紹介してくれたお兄さんは、当然だけど静海に面影は似ていた。

 別にそんなに甘いマスクというわけではないんだけど、雰囲気が私好み。

 これは静海の顔が私好みってこともあったんだけど、その纏う雰囲気に「大人」を感じてしまった。

 ちょっと見惚れた。


 思わず口が日開きそうになって、慌てて手で隠す。


「あ、やっぱり静海のお兄さんなんだあ~。でも…、静海からは非モテ陰キャって言ってたのに…。」


 あっ、変な事言っちゃった。


 とりあえず私も自分の紹介をして、なんか頭がうまく回らない。

 こんな感じ、初めてだ。

 で、何とか言葉を繋いだら、静海が言ってたお兄さん像を語ってしまった。


 やめて、静海!

 その殺気の籠る眼をこっちに向けるのは!

 言ってることは嘘じゃないぞ!


 何とか誤魔化そう。


「お兄さんって、イケメンですね!」


 あれ、心の声が駄々洩れだ!


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