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研修プログラム②~神経交換装置

今、きみ(私の事)に渡した物は、先駆者(☆)が造った神経交換装置(※)だ。話している相手の言葉の真意はもちろんの事、考えている心の声も聞く事が出来るという代物だ。


特に指定しなければ、両方把握も出来るし、指定すれば、片方だけでも聞ける。やり方は、これは慣れるしかないのだが、言葉の真意は左脳で、心の声は右脳でコントロールする事になる。


注意点が1つだけある。慣れない内は、多勢の人々が集まる場所でフル稼動させない事だ。万単位の人の心の声が入り交じると神経が麻痺(まひ)して、さすがに気絶するか、吐きまくるか、まぁ経験としては、両方有り得るかのう…。


日本には聖徳太子という偉い政治家が居たそうだが、聞くところによると、大勢の問い掛けを同時に把握して、的確な応対が出来たらしい。そう言う人物が使えば、最初から楽勝に活用するかも知れぬが、凡人は少しずつ経験を積む事だな…。


しかし、全く持って気にする事はないぞ、継続は力為りとは良く言ったもので、(たと)え凡人でもやがては使いこなす事で、あなたも聖徳太子になれる!がコンセプトだ。まずはこのメイン機能を使い込んでもらう。



☆先駆者…今はまだ謎の存在、通称ーフロンティアーナ、別称ー"神"


※神経交換装置…霊体をサポートする補助器具、主に霊体の右脳、左脳でコントロールする事により、あらゆる行動が体現出来る。バージョンアップ(進化)する。通称"トータルチェイサー"、別称ー賢者の石(意志)



*******************


★脳の特徴★(参考)



【左脳】*****【右脳】


論理 直感


物証主義 想像主義


言葉と言語 シンボルとイメージ


現在と過去 現在と未来


数学と科学 哲学と宗教


知っている わかる


知っている 信じている


認知 感知


パタン認識 空間認識


名前を認識 機能を認識


現実ベース 空想ベース


戰略の構築 可能性の探求


実践的 衝動的


安全志向 冒険指向



*******************



あ!それから、試しにお手本を見せるというのは無しだ!結局こればかりは個人差があるのでな…。実施で馴れてもらうしか方法はない!勿論(もちろん)アドバイスはするので、まずは、さっそく取り組んでもらおう。


鉄は熱い内に打てだ…。


"ポアロもどき"は一気にまくしたてるや、少し身体を斜めにして自分の口許が私に見られぬ様にするや、「全く…また吐きまくるのは願い下げだ…」とブツブツ言っている。


私は少々呆れてそれを見ていた。


『…心の声でも読めるのに本音を口に出してどうする?』


そう苦笑していると、「何がそんなにおかしいのです!君、君は教わる立場なのに何て失敬な…」と(しき)りに(まゆ)を逆立てて、怒っている。


私は自分の無礼を謝し、かしこまって襟を正した。


すると"ポアロもどき"は…


「まぁ、良いでしょう。君も私も今や言葉に出さなくても、互いの心の内は理解出来るのですからね!装置はちゃんとリンクしているようだし、相性も抜群のようで安心しました。」と言った。


当面はお互いに声を発する事無く、相手の心の内を聞く事で、やり取りする事になった。私は(もっぱ)ら、実践前の練習として、"ポアロもどき"の心の声を聞く事だけに集中した。


成る程…今となっては、彼に助けられて以降、何度も心の内を読まれたのはこういう事だったのかと思い至った訳である。


しばらくそんなやり取りが続けられた後、「大分(だいぶん)、慣れて来たようだから、次の段階に進もう♪」と言い、次のステップは、言葉を発しながら、心の声を発する彼の感情と行動を同時に把握する事になった。


これはなかなか難しく、判り易く言えば、2人の人物が、左耳と右耳に同時に話しかけて来るような状態と言えば、理解してもらえるだろうか?


さらに気を抜くと二重音声が完全に1つの文章になり、もはや何語をしゃべっているのかさえ、よく判らなくなる始末なのである。たった一人の心の言葉を聞き分けるのさえ、なかなか大変なのだ…確かに多勢の心の言葉が一度に入ってくれば、もはやそれは大音量の雑音にしかならない。


しかも心の音(言葉)はそもそも極度に低周波か、またはその逆で高周波らしい。そんなものを絶え間なく聞かされた日には、確かに吐きまくってもおかしくないし、気絶もするだろう。


脳がそうとうなデシベルで揺すられ続けるのだから当たり前といえる。吐き気とまではいかないが、気がついてみると、鼻と耳から血がツゥーと垂れて来ていた。


"ポアロもどき"先生は、少々心配そうに、顔を歪めている。どうも私が絶え切れずに血を流した事で、一旦修練を中断したらしい。私は慌てて鼻と耳の血を袖口で拭うや、「すみません、先を続けてさい…」と願い出た。


先生は深い吐息をつくと、「大丈夫かね?」と心配している様子だ。「この程度でへこたれる事は出来ませんから、遠慮無くど~ぞ!!」と言い切った後、少々不安気に、「先生から見ていてどんな具合です?」と開いた。


"ポアロもどき"先生は…


「梵!いやいや、どうしてどうして、初めてにしては上出来です。そうだな…君は元々左脳の働きは悪くないのだから、右脳にもう少し集中してごらん!始めは感覚が掴めないだろうから、うまく行かないが、右目と左目で同じ側の脳内を見る感覚と言えば理解してもらえるだろうか?この場合は左目の視界を少々遮り、右目は右脳を睨みつける感じだろうか?理解したら、試しにやってみてもらえるかな?」と助言をくれた。


私は早速その助言を取り入れてみる。成る程!確かに先程よりは、発する言葉と心の言葉の区別がつくように感じた。どうやら、目の使い方は割りと重要らしい。


言葉同士が、べったり貼りついたまま耳に飛び込んで来ていたのが、ベリっと綺麗に剥がれて、お互いに切り離されたまま、ヒュンヒュンと時間差で入って来るようになったため、理解するのがかなり楽になった。


先生はそれを肌で感じて理解し、コツをつかみそうな今こそ反復練習だと言わんばかりに、立て続けに意志を発して来ながら、話しを通しで伝えて来る。


すると、この反復が功を奏したためか、ベリベリ剥がれていたものが、次第にツルンツルンと滑らかに二分されて、ほぼ同時に耳に入って来るようになって来た。


さすがは名探偵エルキュール・ポアロ!灰色の脳細胞の出した助言はまさに珠玉…これぞ金言為りだ!!とすっかり感服してしまった。


そんな事を考えていると、「ではそろそろ"もどき"発言は撤回してくれるかね?」と突然先生はギロッとした眼光で一言放って来た。


それは精神に対して直接貫通する程の威力があり、私にはまるで全力で打ち込んで来た矢のように感じるのだった。


『やはり気にしてたのね…』


私は苦笑しながら、先生に陳謝した。


すると先生は、「私の名前はデービッドだ。これからはそれで頼む!」と言った。

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