短編三つ。
俺はスーパー野菜人だ。宇宙にある野菜の惑星ほしで生まれた。名前は教えてやろう、ごんぼうという名前なんだぜ。いかしているだろう? へいへい。へいへいほー。なんでこんなに俺が機嫌が良いかって? それは太陽の光を浴びて、順調に成長しているからだぜ。
そう、俺は、俺達は太陽の光が栄養の元だったりする。まあとは言っても我が惑星の人種全てがそうであるわけではないがな。
「きゃ、きゃーー!!」
な、何だ? ま、まさか……奴らが……。
「おい、また侵略者が攻めてきたらしいぞ。ごんぼう」
「な、なんだと?」
俺に危機を教えてくれたのは隣にいた、ハクサイサイだ。
「くっ、また攻めてきやがったのか。こうなったならば自己防衛能力を発動するしか手があるまい」
俺達は大地に根付く、スーパー野菜人。そう一歩も動くことが出来ないのだ。だから、何とか個人で自己防衛を発動させ、他の惑星からの侵略者の狩りから身を守らなければならないのだ。侵略者に食べられない為に。
いよいよ侵略者が俺の目の前にやってきた。自己防衛発動!!
「ありゃ、何だこの野菜? 腐っているべ? この野菜もう食べられないから、ぽいっ!」
俺は地面から抜かれ、無造作に空中に投げられ、なすすべもなく宙を舞った。
青い空と、眩しい太陽がいつもより綺麗に見え、そして最後に見慣れた大地が俺を待っていて、俺はその後、干からびて死んだ。
別の話〉
少年は死後について深く悩んでいた。
「死んだらどうなるんだろうか。肉体がなくなるってことは今までの記憶はなくなるよな。そしたら僕は僕でなくなっちゃうんだなあ。哀しいなあ。もし来世があったとしても、一からやり直しかあ。それとも輪廻って魂が生まれかわるから、魂に思いでが刻まれたりするのかなあ。だとしたら、もっと良い思い出を作らなきゃあなあ。魂に良いことと悪いことの区別を刻みつけないとなあ」と少年は独自の考えでそう決めた。
その日から少年は、自分が悪いと思ったことはもうしないと、魂に言い聞かせるように決心し、良いと思ったことも胸の奥魂に向かって刻みこませようとした。
そして死んだら今の記憶も、この遺伝子も、この環境も全てなくなってしまうので、良い思い出をいっぱいなるべくたくさん作ろうとそう思った。
良い友達を見つけたくさんの思い出を作り、両親に親孝行をたくさんして……そんな日々を送っていたが、彼はやがて思春期に入った。
「確かに親孝行はしているし、友達との思い出作りも楽しい……しかしこれだけでいいのか?」
成長した少年の悩みは次なる段階へと移動した。
「思春期ってこんなにもイライラするものなんだ。でも何でこんなにイライラするんだろう」
少年は思った。
少年は思春期である自分を満足させる物がないと気づいた。
「そうか。思春期の僕を満足させる音楽がこの世にはなかったのか」
少年は深く考えた、そして一つの結論に思い至った。
「なければ作ればいいじゃない」
だが、少年は今の自分を満足させる為だけに始めた曲作りだったが、ある日、昔のことを思い出した。
「いや、待てよ。もし僕が死んで来世、生まれかわったとして、その時また同じように思春期で悩みイライラするかもしれない。これはまずい」
少年はそれに気づいたことで、今後の方向性が見えた。そう、記憶に残せないならば、記録に残せばいいじゃないかという考えである。しかしただの記録では、次に生まれ変わってもそれを探し見つけることは不可能だろう。有名にならなければ、それも超有名に。と少年は思った。超有名になって自分が作った曲が、世に、世界中に知れ渡れば、次に自分が死んで生まれかわったとしても、自分が前世で作った曲に出会える可能性が高まるからだ。そして自分だけじゃないく、この人生で同じ悩みを抱える少年少女、赤ちゃんから老人まで全ての人間を含めて、一人でも僕が作った曲で幸せになり、魂が浄化されるのならば、魂にいい思い出が刻まれるならば、これ以上の社会奉仕はない。そう考えもしていた。だから彼は努力した、努力出来る才能があった彼は天才ではなかったかもしれないが、大成功をおさめた。いや彼は努力の天才だったのかもしれないが。そして彼の作った曲は世界のほとんどの国で発売され、知らぬ者はいないと言っても過言ではないぐらいの大活躍を遂げた。彼はやがて老衰で死んだ。その死に顔は全てを成し遂げた、満足、幸せその物の顔だった。彼はやがて輪廻をし、前世では日本人だった彼だが、今度はアメリカ人として生まれ変わった。アメリカ人の彼はアメリカの広大な大地の元すくすくと育った。しかし、彼はやがて思春期となり、悩みが募った。どうしてこの世には僕を満足にさせてくれる作品がないんだい? ベイベー、と。しかし、そんな時、彼は衝撃の音楽に出会った。心の奥から痺れるような、エクスタシーを感じた。カタルシスを感じた。彼はその受けた衝撃に心を奪われ、日本に興味を持った。その曲を作った日本人に興味を持った。そして日本語を習い始めて、一年でマスターした。「ウルトラクレイジーでもアメージングな彼はどんな人間だったんだろうか。あはん」彼はまだ気づいていなかった。その曲を作った日本人こそ、前世での自分自身であることに。彼はその曲に秘められた、思春期の悩みを打ち砕く、解放感、メッセージ、痺れるようなサウンド、全てに心を奪われ、作った日本人のことを調べ、紐解いた結果。それを作ったのは前世の自分自身であるという結論に至った。「なんてこった、この人前世のワタシダヨ」彼は一粒の涙と共に呟いた。彼は前世の自分の行動が今世での自分の悩みを前世の読み通り救ったことに感銘を受け、今世でも、前世と同じように今世での人々の悩みを解決しつつ、来世での自分も救えるようにと思った。しかし前世での自分が音楽の面で全て、やりつくしていたように感じ、今世でも前世と同じように活躍するのは不可能だと思った。そう思った彼は今度は発明家になって世界を救おうと思った。世界を変える発明をして、世の中を救いたい、不便な世の中を改善したい、そう思った。そして彼は今世でも成功をおさめ、世の中を大きく変えた。そして彼は幸せそうな笑みを浮かべて、今世の幕を閉じた。彼は再び輪廻した。今度はアフリカ人だった。彼は自分の環境に満足していなかった。そしてまた同じように思春期を迎えたが、前々世で作った自分の音楽にまた救われた。そして前世で自分が作った世界的な発明も彼の生活を豊かにした。彼は今世でも自分の前世に気付いた。そしてすぐに前々世にも気づくようになる。彼は今世では何になろうか悩んだ結果、この世界中でまだ解決していない病気問題をなくしたと思った。彼は前世、前々世での魂に刻み込んだ教訓を胸に必死で努力し大成功を収め、彼は今世でも大偉人となった。
そして彼は、また輪廻した。どうやら今度は前世の記憶があるらしい。そして最初から言葉を喋ることが出来るらしい。
彼は見慣れぬアーモンドの大きな瞳をした頭が大きい灰色のその母親、父親らしき人に向かって最初の言葉を投げかけた。
「僕の前々前世はね……」
別の話〉
また夜がやってきた。寂しい寂しい凍える夜が。
俺はいつも同じ場所で佇んでいる。
こんな暗く寂しい俺には体温などないのかもしれないな、といつも自虐している。
夜になると息を潜め、夜の闇に完全に溶け込み完全な眠りに就く。
そして、朝になると首をポキポキ鳴らしながら準備をし、再び活動を始める。
そう俺は太陽電池で動く首振り人形だ。
『文字数が足りないみたいなので、歌います。
UAE♪
アラブ首長国連邦♪
UAE♪
ザッケローニが今、監督♪』