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日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
序章「蒔直し編」
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序章׳ח:anywhere

 ドラゴンが現われた。先程会った龍と違い、翼をはやしたドラゴンが。

 俺でもその危険性は分かる。


「下がって下さい!」


 緊迫した状況の中、ミシュリーヌの一言で三人とも陣形を組む。

 ミシュリーヌが一番前で、その他二人がその後ろという陣形だった。

 現在、他の化け物はドラゴンの影響か気配がない。それ故、ドラゴンに集中した陣形であった。

 俺はそれに合わせて取り敢えず後ろに回る。

 すると、その後ろにアニーは動く。


「おい! 俺の後ろに行っても意味ないぞ!!」


 そう弁明したがアニーは、


「大丈夫、盾ぐらいにはなるよ。大体時間を掛けさえすればどんな人ちゃんでも生死を問わずに私は回復が出来るんだから。喪失のにっちゃんが死んでも生き返らせる」


 と言って聞かない。

 まあそれを許容するとしたら、陣形は完全に組めたと言うべきであろう。

 問題はちゃんとした攻撃役がいないということだ。

 ミシュリーヌの動きは、どうも一撃必殺のようなものばかりであるし、それ以外の二人も決め手となる攻撃が無い。


「ルイ君。ミシュリーヌの攻撃が躱された場合、覚悟してね」


 そう。ロランの言う通り、ミシュリーヌが攻撃を躱された瞬間、負けになるであろう。

 予想するに躱された場合、まずミシュリーヌが倒されてしまう。すると残ったのは以下の三名。

 ロランは防御こそ、大分良い動きであるが、忘れてはならない。彼はドジである。

 ここ一番で転ぶかも知れない。

 アニーは今までの動きから回復専門。しかもさっきの発言からして、回復には時間が掛かりそうだ。

 そして俺。弱い。

 この三名ならば、確実に陣形は瓦解し逃走を余儀なくされる。運悪ければ全滅だ。

 と、なるとそもそもミシュリーヌが倒されないようにすれば……。

 それも無理だ。ミシュリーヌ以外の攻撃が有効である可能性はゼロに等しい。

 全員ここで逃走するということは? 三十六計逃げるにしかずとも言うし……。

 いや、相手に後ろを見せることは出来ない。後ろを見せた瞬間、全滅しそうだ。

 だったらミシュリーヌをロランの防御で守り、その上で攻撃を任せるというのは……。

 駄目だ。出来るかどうか分からないし、例え出来たとしてもロランがここ一番でやらかす可能性を考えるとリスクが高い。

 ならばロランなど頼らず、アニーだけで切り抜ける策を……。

 思いつくわけねえ!

 ――咆吼!!

 ドラゴンの咆吼は、俺を怯ませた。

 ……どうする?

 俺はまた考えようとする、だがそれも時間が無い。


「先に……倒します!」


 それをいち早く悟ったミシュリーヌは風を切った攻撃を繰り出す。

 そしてその攻撃は、見事直撃し、ドラゴンには結構なダメージを与えた!

 ――と、思われた。

 実際、剣は当たっていた。だがミシュリーヌの剣は、壊されていたのである。

 そう、ドラゴンの翼によって。


「え?」


 ミシュリーヌの言葉が早いか、ミシュリーヌは吹き飛ばされた。

 まずい!

 それに気付いた瞬間、今度はロランのシールドが突破される。


「くっ!」


 ロランは吹き飛ばされる。

 間違いない。

 理由は知らんが、俺を狙っている。

 そう直感が言った。


「アニー!!」


 呼びかけるが、アニーは目を瞑っただけだった。

 俺はもう一回呼びかけようとするが、俺のその言葉を察したよう言おうとする前に、アニーは叫んだ。


「今ミシュリーヌちゃんを回復中なの!!」


 ――そうか。

 なら……これは詰んだ!

 そう思った時。


「今じゃよ」


 老人の声と共に、ドラゴンが斬られた。

 ドラゴンは怯む。

 また間一髪といったところか、と思えた。

 が、まだ倒されては無かった。


「お主ら、今のうちに!」


 その老人の声を聞くと同時に、俺は足を踏み出す。

 一方老人は刀をしまい、ミシュリーヌとロランを担ぎ上げた。

 彼も俺達と共に逃げるらしい。

 そう老人の力を使っても、勝てないようだった。


「ちょっと、喪失のにっちゃん!!」


 何だろう? 一緒に逃げているアニーは俺を呼びかける。

 後ろを振り向こうとするが、怖くて振り向けない。


「そっちじゃないよ!」


 どういう意味か、俺は分からなかった。

 そうである。この時俺はすっかり、皆と一緒に逃げていると錯覚していた。

 本当は、皆と違うルートで逃げているというのに。


 ー ー ー ー ー ー ー ー


 何時間経っただろうか? 走り始めてから。

 俺は休みながらまだ逃げ続ける。

 気付けば、周りは氷で囲まれていた。

 手足はかじかんでいて、もう冷たさも感じられなかった。

 いや、それでも氷を触ったら冷たさは感じた。


 ポチョンッ


 体中が濡れていた。

 俺はまず、周りを見渡した。

 化け物の声がする。


「まずいな……」


 完全に守ってくれる人はいないって状況か。

 というか何ではぐれたんだ?

 溜息をつきながら俺は状況を整理する。

 そして、一つ思ったことを口にしてみた。


「俺って……今一人なのか」


 別に一人だから、ということはないのだが、それでも気になってしまう。


「二度三度も幸運はない。のは分かっている」


 だからこそ心配なのだ。

 言っておくが何も俺は能力を持っていなかった。

 いや、まだ見つけてない――ということかも知れないが。


 ガタッ


 何か音が聞こえた気がした。

 俺は希望を持ちながら振り返ってみた。

 しかしそれは……。


「ケルベロス、にしか見えないよな……。どう考えたって――敵だよな!?」


 三つの首、犬の体。その上蛇のようなものが沢山生えている……俺の頭のイメージのケルベロスとほぼ一致したのだった。


「最初といい、今といい。どんだけ有名な強い化け物ばっかいるんだよ! この世界は」


 普通ならスライムとかが最初だろ!

 そんなことを思いながら俺は今そんなこと思っている暇が無いことに気付く。

 っていうかこれ、本当にヤバくね?

 そう思った瞬間……ケルベロスの足は俺の頭に振り下ろされた。

note


・クッキーシュー……物/なぜか主人公が取ってしまう

・ビニール袋……物/主人公は転移後、所持している

・謎の笑い声

・喪失のにっちゃん(名前)

・ルイ(名前)

・ミシュリーヌ(先制)

・ロラン(防御)

・アニー(回復)

・Un known

・Un known

・老人(味方・刀)


疑問

「何でミシュリーヌは主人公を助けたのか?」

「俺の名前は何か?」

「魔法とは何か?」


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