第四章׳די:escape
何か作者の想定を大きく上回り続いていた第四章、いよいよ終了です!
草をかき分ける音。音がした森の方向を見ると、そこには……。
微笑んだ、アンリがいた。
その装甲は激戦をグレゴワールと繰り広げたことを物語っている。だが、ここにアンリがいるということは……。
「グレゴワールが……負けたってことか」
「その通りだ」
生憎マチルダの方は逃がしてしまったが、どうにかもう片方の逃がした獲物を見つけられて良かったぜ。そこまで一緒にいて……カップルかいお二人さん?
アンリはそう揶揄ってくる。
「違う。俺はここに来るまでの記憶がない」
私も。アニーも俺に言葉を続けた。
アンリはそれを聴くと、大きく高笑いを始めた。笑い終えて、静かに続ける。
「まあグレゴワールのお蔭ってことだな。感謝するといい」
どういう意味か、分からない。
俺はそれを言葉に出しながら、段々と後ろに下がっていってしまっていた。
が、そこで後ろが無いことに気付く。なぜここは崖なのだろう。
「分からなくともいい。グレゴワールも秘密にしたがっていたからな」
アンリはそして、静かにまた笑う。
と、思ったその瞬間。アンリの周りの空気が歪んだ。
「風属性だよ!」
アニーは未だに「ちゃん」付けをせずに、俺に申告する。
それじゃあ、さらばだ。
アンリは握り拳を固める。
そして……!
アンリは俺の方に向かって、殴っていた!!
もの凄い強い風圧が目の前までくる。
その時俺は、少し対応に遅れてしまった。
頼みの綱、アニーにこれは頼むしかない。
俺はアニーを見たが……
アニーもその時、対応に遅れてしまっていたのである。
何だろう……。
さっきは死を望んでいたはずなのに。
今俺は、死にたくないと思っている。
ただ足掻いても、何にもならないのに。
これは、滑稽だ。
ー - - - - - -
小鳥の可愛いさえずりが聞こえてきて、目が覚めた。
何だろう、体が温かい。どうやら布団に包まっているらしい。
そして実感した。また異世界転移をしてしまったと。しかも五回目だと。
よし、もう少し眠っていよう。俺は寝返りをうちながら目を閉じる。
「ルイちゃん! 今起きたでしょ!! そのまま寝ようとしないで!」
うわ! 折角寝ようとしていたのに、邪魔するとはこれは酷い。
俺は思わず俺は起こそうとするアニーに怒る。
「煩い! もう少しだけ眠らせろ!!」
それにしては、三日目と同じ、ミシュリーヌ達が俺を知っている世界か~~。
良かった、わざわざ自己紹介する手間が省ける。
ってあれ? そういえば昨日も自己紹介しなかった気が。
まあ、いっか。
「煩いとかそういうことどうでもいいでしょ! それより説明して!?」
あ、アニーの癖して「ちゃん」付けしてない。
何か真剣なのだろうか。いや、真剣の時も「ちゃん」付けしている気がするがな。
というか、何を説明しろと彼女は言うのだろうか。多分それは俺じゃない俺、つまりルイって奴が知っているんだ。俺じゃない。
どんどん俺は思考を進める。
「アンリはどこに行ったの!?」
知らん。昨日の俺は俺じゃない。
俺はずっとそう思いながら、無言で寝たふりをする。
だが、アニーは俺を揺さぶりながら質問を続ける。
「ここはどこなの!?」
しらな……へ?
ここで俺は起き上がった。
「お前知らないのか? ひょっとして昨日俺に誘拐されたとか??」
俺は訊く。
でもそれにしては妙に俺と仲良さそうな態度である。
「何を言っているの? 昨日は私と一緒に逃げてたじゃん!」
ちょっとよく分からない。昨日の俺は俺じゃない。
さて、心の内でそう思いながら俺は周りを見る。
ここは、旅館のような場所だ。木造で和室、テレビに椅子が一つと、妙に俺が元いた世界に似ている。
そして、誘拐するには適してない解放感である。
だったら、昨日この世界の俺がアニーを誘拐したという線は薄い。
では、なぜアニーはここがどこか知らないのだろうか。
「何で私は死んでないの? 何でルイも死んでないの? ここは天国なの? それともあれからアンリから逃げられたってこと!?」
え? いやまあ確かに何で俺が死んでないかは気になる。
まあ運よくその時丁度異世界転移をしたのだろう。
俺はもう既に異世界転移に慣れてしまっていた。しかもまだ少し寝ぼけている。だから軽くそれは言える。
「って、あれ? 今アニーなんて言った??」
俺は耳を疑った。妙に、昨日の俺と同じことを言っていた気がする、と。
「だから! 何で私もルイも死んでないの!? アンリから逃げられたの!? そしてここは天国なの!? ってこと」
……俺はこの時、少し変な予想をしてしまった。
いやいやまさか、それはある訳がない。
俺はその真偽を確かめるため、一つ質問をする。
「変な話を訊くが、昨日森の中で俺とアンリから一緒に逃げていたか? そして、あと、えっと。昨日ミシュリーヌらが……死んだか?」
言いづらいことだった。でも、俺は言葉を放った。
すると、アニーはこう言ったのだ。
「……そうだよ?」
まずい。いやまずくはないのだが。もしかすると、いやもしかしなくても、と俺の勘は予想が合っていることを示す。
そうだ、そうなのである。
四日目に俺と一緒に逃げていたアニーは、俺と一緒に異世界転移をしてしまったのだ。
note
・転移四日目
・レジ袋は毎回の転移で運んでいる
・「オンナ」という女性がいた。
・オンナは仲間を連れていた。
・オンナ曰く「地球は人間の衰退を望んでいる。俺はその切っ掛け」
・アンリは五人組と戦っていた。
・魔法は人間の脳が介入できる自然現象である。
・魔法の中に超能力とかはない。
・昔の人は魔法とか使えなかった。
・属性には分類があり、基本人はその兼用をしている。
・よく食べる人の方が魔法は強い。
・五人の職業、冒険者は危険だと言われている場所にわざわざ赴き調査、あわよくば一般人が安全に行き来できる場所にする仕事。
・風魔法を使うには、光と炎の特訓も必要。
・ミシュリーヌ(アンリに殺される)
・アニー(俺を特訓する・皆に俺を警戒しろと言われる・真珠の宝石を俺に渡す・俺と共に五日目の世界へ)
・ロラン(30分足止めできると考えるがすぐに殺される)
・グレゴワール(アンリに厄介と言われる・アンリに負ける殺された?)
・マチルダ(最初の戦闘中アンリを分析・ドローンを使用・逃げた?)
・アンリ(魔王・世界最強の魔術師・監視カメラを使用・皆を圧倒)
・オンナ(謎・異世界転移を毎日している)
・シャルロット(未登場)
疑問
「オンナとは何者か?」
「なぜアンリが魔王なのか?」
「なぜみんなはルイの名前を知っていたのか?」
「なぜ俺は魔法の才能がそんな無く、昼食一つでまあまあの実力になれたのか?」
「なぜ俺は鵺と言われるのだろう?」
「アンリはなぜ復活し、なぜ強くなっていたのだろう?」
「グレゴワールは俺達にどうやって逃げさせたのか?」
「なぜアニーは異世界転移した?」
等




