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日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
第四章「輦制し編」
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第四章׳ו:二時の休憩時間

 それからしばらくして、ミシュリーヌの声が聞こえてきた。


「ご飯できましたよ~~」


 いつの間に帰っていたのだろうか、ミシュリーヌは昼食を作っていたのである。

 財布の中にある、時計を見る。


 2:25


 もうおやつの時間の気がする……。

 ――うん。気にしないでおこう。


「やったーー。やっとご飯ちゃんか~~」


 一方アニーは子供のように飛び跳ねる。

 いや、あれ? お前俺と同い年だよな……。

 ……。

 どうやら違うようである。

 というか何だ、お前も我慢していたのか。


「ルイさんも。お待たせしました~~」


 ミシュリーヌは来た俺に微笑みかける。

 やっぱり最近関わってなかったから思ってなかったが、ヒロインはミシュリーヌに相応しいと改めて思うのである。

 うん、こんなロリよりずっとヒロインっぽい。

 まあヒロインがいるのかどうかは分からないが。


 さて、そんな俺が座ったその場所は、何と囲炉裏であった。

 片仮名の人名ばかりなのに、囲炉裏があるのか……。ちょっと不思議に思う。

 そしてその囲炉裏の中には、ぐつぐつ音を立てる花の香りがするポタージュが……。

 俺は思わず歓声をあげる。


「おーー」

「……やっとご飯か~~。もう家に帰っちゃおうと思っちゃったよ」


 そして来るのがマチルダ。

 ゲームをやめてきたのだろう。……文句垂れるのだったら何でゲーム優先したんだよ、俺じゃあるまいし。


「というかお前、他に家があるのか!?」


「え? いや、ボク以外も全員家は持ってるよ?」


 そんな俺の声にマチルダは答えた。

 そうか、他の人も家あるのか。


「ええ……ええとそれじゃあですね。何でここに今皆さん暮らしているんですか?」


 よし、恐らく完璧な敬語を使えたぞ!

 ガッツポーズをする俺に、ミシュリーヌがお椀のようなものにポタージュをよそりながら優しく答える。


「所謂、ここは秘密基地のようなものなんですよ。私たち、冒険者なるものをしてまして……」


 ついでにそのポーズってどういう意味ですか? 脅しですか?

 ミシュリーヌは続けて訊いてくるが、俺は「ええ、あの、まあ……気にしないでください!」と言っておく。相変わらず話すのが苦手だ。

 ――冒険者。それから食べながら訊くと、どうやら色んな未開拓地を探検する、言い換えれば探検家のような仕事らしい。勿論、多少の違いはあった。

 と言っても、ほんの少しである。冒険者は危険だと言われている場所にわざわざ赴き調査、あわよくば一般人が安全に行き来できる場所にする仕事らしいのだ。

 2000年以前は無かった仕事らしい。


「へえ……」


 それにしてもこのミシュリーヌのポタージュ、絶品である。サッパリとした味付けに、花の香りがする匂い。そして如何にもポタージュですという味……。オリーブオイルもまた合って、素朴な美味しい風味を出している。


「美味しいですか?」


 顔に出たのだろうか。ミシュリーヌが訊いてくる。

 うんどう言えば良いのだろうか。悩んでいる内、先にアニーが感想を述べた。


「とても美味しいちゃんよ~~。何かね、やっぱり私ちゃんの大好物って感じちゃんが……」


 ……タイミングを取られた。もう俺は感想を言えない。

 ちょっとアニーを見る。どうやら本当に大好物のようだ。俺も美味しいとは思うが、アニーみたいに五杯よそるぐらい好きか? と訊かれると口籠ってしまう。そう思える食いっぷりだ。

 今俺はただ、アニーの勢いに圧倒された。


「……あ、それじゃあ私ちゃんそろそろルイちゃんの特訓もあるし行くよ?」


 あ、あのアニーが名前以外で「ちゃん」付けをしてない。これはレアだ!

 真っ先にそれに反応する俺の服を引っ張り、アニーは外へ立ち去る。


「あ、美味しかったです。有難うございました!」


 俺は咄嗟、丁寧にミシュリーヌにお礼を言い、アニーが引っ張る方向へ引っ張られてあげたのであった。


 ー - - - - - -


「さて、いよいよ光属性ちゃんも少し分かってきたね。それじゃあ更に練習ちゃんをハードにするよ~~!」


 外に出て、アニーは真っ先にそう言った。

 それにしてはここ、本当に大自然に囲まれているな~~。俺は感服する。

 どうやらそのお蔭で、初夏の暑さもないようだ。


「あ、OK」


 返事をしたところで、今の俺の魔法の使えている具合を話そう。

 今俺は、風属性を使用して、通常の1.2倍の速度を出せるようになった。

 また光属性を使用して、黄色い物体を少し、1秒で作れるようになった。大体こんな感じである。


「でも……1秒で少し、ってことはもっと特訓必要かな~~」


 俺は独り言を呟く。

 そんな俺に、アニーは答える。


「いやいや、そんなことないちゃんよ。メインの修業は風属性ちゃん習得だからね、風属性ちゃんを使用するために必要な光属性ちゃんはそれで十分ちゃんなんだよ。でも風属性ちゃんでもう少し強くするには、もう一つの属性ちゃん出来るようにしなきゃいけないけどね」


 ……まだ使える属性増やさなきゃいけないのか。それも教えられるのか?

 俺はアニーに問う。


「うん。ミシュリーヌにこっ酷く教わったから」


 ……ミシュリーヌに教わった属性、か。

 まさか。


 炎属性、か?

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