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日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
第四章「輦制し編」
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第四章׳ב:流転ヲ望ム

「いや。私たちも毎日異世界転移を行っています」


 その言葉に俺は驚愕していた……。

 まさか、俺以外にもいたとは。

 でも待てよ、この人は違うルートから来たという可能性も、とそう思ったのだがそれもどうやら違うらしい。

 昨日俺に会った記憶はあるし、一昨日や一昨昨日の世界の特徴を訊いたら彼女らは全く同じものをさしていたのだ。


「でも……なぜお前たちと一緒に俺は暮らさなければならない!? その理由を言わなきゃ俺は承知できない」


 次に俺はそう言うと、彼女は真剣な顔をして答える。


「言わなきゃ、いけませんか?」


 勿論答えはYESだ。一緒に暮らすにしても、それを知らないのだけは嫌だからな。

 そう思いながら彼女を見つめる。

 すると返ってきた答えは……。


「流転、という言葉を知っていますか? 移り変わってやむことがないこと、を指します」


 ああ、それなら何となく。

 少し使わない気がするが、確かに「万物流転する」とは使ったことがあった。

 大体中学の授業の時も、使っていたような気がする。


「しかしこの数百年。小さな流転はまだあっても、大きな流転は続いていません」


 ……へ?

 思わず訊き直してしまう。

 どういうことなのか、今一分からなかったのである。

 だがオンナはその俺を無視して、続けた。


「神は、もっと言うと地球は、大きな流転がまた始まるのを望んでいます」


 いやだから今一分からないんだって。なんか流転ってお前らが言う小さな流転を指すんじゃないか?

 だってさ、お前らの言う小さな流転がどれ程の大きさかは分からないけど、恐らく人間関係とかそういうことだろ?

 大きな流転は社会情勢とかそういうことだと仮定して、確かにそろそろ安定しそうだよ? 今の世界、良く出来てるからさ。


 俺はここで言葉を放った。

 それでもオンナはそれを否定した。


「いいえ、人類の文明です。その繁栄がおかしいのです。確かに恐竜は約1憶5000万年、地球を支配しました。ですがそれも自然に従ってのことだったから良かったのですが」


 人間は自然に逆らった。確かにそれは分かる。

 だが妙に分からない。地球が望んでいる大きな流転、それは人間の衰退なのだろうか。

 それを言葉にしてみた。


「そうです。しかもそれは、貴方が来たということを切っ掛けにしているんです」


 オンナは即答した。

 しかも、一番大事なところを共に言って……。

 ……。

 は?


「は? 俺が来たことによって人類が衰退する?? 意味が分からねえよ、それは。何で」


「なので、貴方の精神を保つため、私たちは貴方を保護しなければならないのです。今のは確かに全て推論ですが、恐らく私たちが生まれた理由はそれだと信じています」


 オンナは俺の言葉を遮るようにその言葉を発す。

 俺はそれを聴いて、やっと納得できた。


 そして、笑った。


「結局、全ては推論じゃねえか。何を根拠にそれを考えたかは知らんが、だったら何でだ?? 何で昨日も、一昨日も、一昨昨日もその衰退が発生していない!? そうだよ。お前らの言っていることはただ推論だ!!」


 オンナたちは、それっきり默ってしまった。

 そうだ、俺はあくまで彼女らを信じない。

 改めてそう思った。


 洞窟全体が、なぜか揺れる。


 それと共に、オンナたちの集団の端にいた人たちが俺から注意をそらす。

 俺はそれを見逃さなかった!


「じゃあな」


 静かにそう告げながら俺は全速力でその穴を駆け抜ける。

 追手は来るか? だが大丈夫だ。俺は足は速い方。

 しかも体力は今満タンだ。

 だけどどうやら、追手は来なかったようだ。


「待ちなさい! A」


 その言葉のみしか、来なかったようだ。


 ー ー ー ー ー ー ー ー


 暫くして、俺は疲れ果てて岩の後ろに隠れていた。

 そういえば、こんなこと前にもあったっけ? そう考えながら。

 そうだ、あれはもう一昨昨日か……。

 一昨昨日も確か、岩陰に隠れていたら、後ろから紅色の龍が……まさか!!

 後ろを向く。

 どうやら今回は龍が登場しないようである。


「よし、それじゃあまた適当に洞窟を彷徨うか」


 俺は服の汚れをはたきながらその方向を向く。


 また、揺れた。

 しかもどうやら前よりも大きいようだ。


 地震か? いや違う。

 それとは少し違う感覚を受けるのだ。

 だったら、何だろう。

 俺は足を進める。


 すると、どうやら出口のような道が見えてきた。


 お?

 俺は少し喜んで、その道を通り、外に出た……。

 と、思ったのだが。


「避けろ!!」


 聞き覚えのある声が俺に向かって木霊される。

 俺はそれを聴くか否かのスピードで何かを避けた。

 ……何を避けたのだろう。


 火矢だ。


「うわあぶねえ……」


 俺は思わず声を出す。

 そりゃそうだ。

 もう少し死にそうだったんだからな。


 それではそんな俺に声をかけた相手は誰だろう。それはすぐ分かった。

 あの弓矢を持っているロランだ。

 もう分かりきったことだったが、この世界にもロランはいたのだ。


 ……いや、ロランだけじゃない。

 剣を持つミシュリーヌ、短剣を持つアニー、刀を持つグレゴワール、電子機器などを持つマチルダもいる。

 しかもその中央にいるのは……。


「アンリ」


 そう、アンリだ。五人組に襲われている(?)のはアンリだった。

 しかもどうやら彼は、紅マントに黒甲冑、黒い角と、大分魔王チックな格好である。

 まあそれもそのはずだ。なぜなら彼は……


「一般庶民まで迷惑かけないで下さいね。魔王?」


 魔王だったから。

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