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日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
第四章「輦制し編」
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第四章׳א:また昇る金烏

 さて、ここでアニーの話は終わりである。

 ここからはまた、俺の話に戻るので、そこのところ気を付けて欲しい、ということをお願いしよう。

 時系列は混乱しやすいので、言っておくと、


 これは、第二章の次の日である。

 ポチャン。

 ポチャン。


 水が水溜まりに落ちる音。

 俺はそれと共に起きた。


「ええ、と。あたりめは……」


 自分のポケットの中を弄ると、あたりめを入れてあるコンビニの袋が出てくる。

 そしてあたりめを食って、改めて実感した。

 昨日公園にいたのに、今の場所は洞窟。

 もう、三日連続だから正しいと思ってはいたので人物とかに確認をとるのはいいだろう。


 どうやら俺は、毎日のように異世界転移をしなければならないらしい。


 ついでに今日は、その四日目だ。


 改めて持ち物を確認する。

 財布にレジ袋、あたりめの袋。

 それぞれの中には時計や空の弁当箱などが入っている。


「――あれ? 昨日電車でこのレジ袋とか持ってたっけ?」


 ふと疑問に思う。だが考えてみれば当たり前のようだ。

 確かに一昨昨日も、一昨日も、昨日も、起きた場所の付近にこれがあったんだからな。


「……起きましたか、ルイさん」


 だが、一つだけいつもと違うことがあった。

 どこからか聞こえるこの声……後ろ!?

 と後ろを見ると正しく、とある白い長髪の緑色の和服を着た女がいたのである。

 いや、どうやら女だけじゃない。いつの間にか俺は謎の集団に囲まれていたのだ。

 というか和服とは……色々この世界は一昨昨日や一昨日、そして昨日とはまた違う感じなのだろうか。


「誰ですかね?」


 俺は周りを睨みつけながら、訊いてみた。

 俺の仮の名前を知っている上に、明らかに不審人物に感じたからだ。

 だけどあれ? 昨日は皆俺のこと知ってたっけ??

 あ、それだったら今の発言は失礼だったかも、と俺は後悔する。

 しかしどうやら、彼女らの次の言葉からして今日は昨日と違うらしい。


「いえ、決して貴方に危害を与えようとは思ってませんよ?」


 いやそういう人ほど危害与えるんですよーー。

 俺は単調にそう言いながら周りを見回す。

 大人の男五人程度に子供が一人……いや二人か? そして指揮官らしきこの白髪女。

 どうやら全員が魔法みたいなものを使えなくても、俺一人では勝てない人数である。

 ここは素直に従って、途中で逃げるか。すぐに頭の中で作戦を構築した。


「それで、何スかん」


 取り敢えず訊いておく。あ、「ん」が入っていることについては気にしないでほしい。

 まあ他の人も気にしてないみたいだし、本当に気にしないでほしい。

 すると白髪女は口を開いた。


「いや、嫌いなものは特にないかな~~」


 いや気にするな!

 何好かん、じゃねえから!! そして地味に敬語口調から溜口にするのやめろ!

 俺は久しぶり(?)の突っ込みをし、ちゃんと溜息をして相手を見つめた。

 というかこの白髪女、どこかで見たことが……。


「は!?」


 俺は気付く。もしかしてこいつって……。


「第二章-8、あたりめで登場したあの謎多き『この世界はどうですか』の人じゃねえかーーーーー!!」


「いやメタい!!」


 そう俺に突っ込みを入れたのは、また別の者である。

 まずい、そんな突っ込みをされると俺も目覚めてしまう、ボケに!!

 そんな俺はいつの間にか仲良く会話していることに気付いてない。


「……謎多きにして『この世界はどうですか』の人と覚えられていたとは心外です」


 そして俺に頬を膨らませるのは、その本人である白髪の女。

 どうやら大分ショックであったようである。


「まあ正確に言うと、貴方の記憶だと三回目ですね? 私と会うのは」


 そういえばミシュリーヌやシャルロットと合わせて敬語キャラ出ちゃうのか~~。シャルロットはちょっと特殊だけどこいつ、ミシュリーヌと丸被りだな。

 そう思っていた俺はその言葉を聞いて驚く。


「え? 二回目じゃなくて三回目??」


 それならいつ会ったのであろうか。

 う~~ん。俺は考える。

 考えて考えて考える。

 っていうか


「お前、他の世界でも俺と会ったこと覚えているのかよ……」


 そうだ、そうなのだ。

 なぜお前が他の世界のことを知っている?

 学食の時訊けなかったことを今ここで訊く!!

 そう思って彼女の方向に前足を踏み出した俺は、相変わらずいつの間にかこの人に溜口をきいていることを気付いていない。


「おい、その……誰だ?」


「『オンナ』とお呼びください」


「そうだ、オンナ。それじゃあその何でお前は」


 オンナ……変な名前だ。

 そう思いながら訊こうとするが、俺はここでやっと、気付いたのである。

 何でこんな警戒心が無くなったんだ? 俺。


 まるで昔から仲良くしていたみたいな感覚にさせるこの感覚。

 ……そうだ。これが魔法だ。

 俺は確信する。

 そしてその感覚を振り払い、再び警戒を始めた。


「……何ですか?」


 オンナは仲間と共に、不思議な顔をする。

 そして「まあいっか」みたいな顔をした後、俺にこう話しかけた。


「ルイさん。貴方は今まで、異世界転移を何回もしてきました。私たちはそれを知っています。そして私たちは、今から貴方に提案します。どうか、私たちと共にいてくれないでしょうか?」


 ……は?

 俺は思わずそう言ってしまう。


「全く知らないこの人たちを一緒にいてほしい? 無理を言っちゃいけねえよ。俺は毎日異世界転移をしてるんだ。お前ら結局は異世界転移してない組とは暮らしたくても一緒に暮らせねえぜ」


「いや。私たちも毎日異世界転移を行っています」


 前者は俺、後者はオンナの言葉だった。

 俺は驚く。

 俺以外にも転移していた者がいたとは……。

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