表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
第三章「見違い編」
39/60

第三章׳ז:あの人は、本物のルイではなかったようだ。

 私は走っていた。

 なぜ? なぜ走っているのだろう。

 何から逃げているのだろう。

 必死に私は私に問う。

 分からない。

 でもひょっとしたら、私は私から逃げているのかもしれない。

 私という名の罪から逃げているのかもしれない。


 風が吹いてくる。


 そろそろ、出口だ。

 私はそう思い、疲労に身を任せた。

 すると足は段々歩き出し、体は段々猫背になっていった。

 初夏の虫の音が響く。

 遂に私は、外に出た。


 木々の間の木漏れ日が、私の体に差す。

 私はすっかり落ち着いてしまって、座り込んでしまった。


 何を間違えたのだろう。


 また考えてしまう。

 というか、何が起こったのかさえも実は自分には分かっていない。


「ルイちゃん……」


 ふとした時、呟いているのは彼の名。

 亡くなってしまったのか分からない、彼の名。

 私の肩に残っているこの血の持ち主……。


「いや、違う」


 声が、出ていた。

 違う。

 それは心の奥底から出ていたのだ。


「違う、彼はルイちゃんじゃない」


 彼はルイじゃない。彼は……ルイじゃない。

 体中全てが、そう言っていた。


「そうだよ。ルイちゃんは……」


 初夏の虫が、また鳴く。

 ふとその方向を見ると、そこには一人の男がいた。


「ルイ……ちゃん」


 私は無意識の中で、彼に名前をつける。

 彼はすると、微笑んでこう返してきた。


「やっと見つけてくれたね」


 ルイ。

 本物のルイ。

 夢か幻か、彼が私の目の前にいる。

 黒い髪の、短髪の、私と同じ年の男の子。

 彼は私に歩み寄ってくる。

 私はそう思うと、涙を出しながら笑ってしまった。

 本日何回目の涙だろうか。

 私って、こんなにも泣く子だっけ?

 いや違う。

 理由は、何回も言っているが一つしかない。


「でもアニー。お前はここで、耐えなければいけない。ここで、これ以上壊してはならない」


 ルイは言う。


「何で、そう言うの!? 何でそんなこと言うの!?」


 私ちゃんは、もう十分耐えたよ。だからもう壊していいよ。

 そう言ってよ。

 私はそれを言う。

 でも、ルイはそれを拒んだ。


「いや違う、アニー。今、そうはいかないんだ。そうじゃないと壊れてしまう」


 それは何が、であろうか?

 何が壊れてしまうのだろうか。

 その疑問もよそに、ルイは続ける。


「いいか? これから暫くアニーは身勝手な行動をしてはいけない。大体、三週間程度だ。周りからの挑発にも乗らず、戦闘行為を避けてくれ。頼む」


 そう言って、ルイは頭を下げた。

 分かった。頼まれる。

 その時、私はそう言った。


「よかった……」


 ルイは、本物のルイは幸せそうな顔を浮かべる。

 私はそんな彼に抱き付きたくなる。

 本能なのだろうか。それとも……。


「ルイちゃん!」


 よし抱き付こう。

 そう思いながら抱き付く。

 が、抱き付けなかった。

 そこには何も無かったのだ。


 ……。


 今のは夢幻……?

 一瞬、そう疑ってしまう。

 だがすぐに首を振り、訂正する。


「違う。今のは幻なんかじゃない」


 そうだ。今のは、本物のルイだ。


 日差しが強く差す。

 そろそろ、お昼かな?

 なら私はまた、歩を進めるつもりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ