第二章׳ד:秘密
「は~~い、てめえら早く席につけ~~」
教室の扉が開く。
俺はアニーに取り敢えず座れという指示を出し、入ってきた担任教師を見る。
爽やかな朝。まさに学園生活という感じである。
が。
「早く座れ、おい。ルイ」
が、どう見ても彼は知人だった。
そうだ。
この担任教師は、俺の知り合いなのだ。
――アンリ。
心の中で彼の名前を呟いてみる。
「気を付けろ」とあのレストランで言った男であるのだ。
「アンリ……先生」
ちょっと名前に先生をつけてみた。
信じられないが、しっくりきたりした。
でも思うのだ。
別に序盤だし、もう既に登場したアンリを無理矢理教師役にするより、新登場人物を出した方が良かったのではないかと。
そちらの方がリアリティがあるのではないかと。
だが、今実際はそうではない。人が考えるリアリティなど現実は考えてくれないのだ。
「どうした~~? ルイ。何かあったか?」
アンリの声。
いや……何もない、です。ここで諦めて俺は大人しく席につく。
するとアンリは安心したようにホームルームを始めた。
俺は、そのホームルームを聞きながら考えるのである。
まず、ここはどこなのだろうか。
明らかに昨日とは違う世界で、日本語ばかりの世界。
何か違和感を覚える。
そんな、三つ目の世界であるとしか、分からない。
だが分かることがある。
俺は斜め前の男を見る。
アホ毛の美男子、ロランがいた。
そう、そうなのだ。
ここまで、昨日いた人物、一昨日いた人物がいる。
つまり、俺が巡る世界には共通した人物しかいない。
ここまで来ると確信しか無かった。
そして、この世界でミシュリーヌたち一つ目の世界で会った人達は生徒。
アンリは教師、クロティルデは妹なのだ。
さて。
ならこの世界にグレゴワールはいるだろう。そう思う前に俺はここで一つ思ったのである。
あの、朝会った女は一つ目の世界にも、二つ目にもいたのだろうか。
少し背筋が凍る。
何か、彼女は恐ろしかったのだ。
「どうしたの、疲れちゃった?」
ここで後ろの女子が話しかけてきた。
青紫の眼に茶髪のロングヘア、毛布のようなフードのようなものに包まっている大人しそうな少女である。
いやここで俺からしたら面識のない話しかけて欲しくない、美少女だから余計話しにくいし。
戸惑ってしまう。
「いや、どうしてそう思う?」
俺は取り敢えず返した。
皆からそう言われるな……。
そう思いながら。
「いつもだったら考え事しながら聞くなんてことしないじゃん」
……そうなのか。
この世界の俺は勤勉だな。
我ながら(?)感心する。
やはりこの世界の俺と俺は似ているのか、そう思った。
いやお前はそんな勤勉じゃないだろ! どうせ今までの性格からして。
読者の方々はそう思っただろうか。でもな……言わせてくれ。
俺も登校していたらそうだったと思うぞ!
「これでHRを終了する~~」
礼。
ここでHRは終了した。
ー ー ー ー ー
「ルイそうちゃだ~~りん!!」
行き成り特攻部隊「アニー」が襲いかかってくる。
その速度、明らかに才能の無駄遣いである。
「捕まえたよ、ルイちゃん。さあ、話そ!!」
アニーは笑いながら俺を捕まえる。
その力もまた、強かった。
本当に、才能力量の無駄遣いである。
「おはよう、ルイ」
ロランがここで話に入る。
ロラン……。昨日、彼は俺を「鵺」と言った。
それを覚えているからこそ、多少彼を恐ろしく感じたが、俺は笑顔で返す。
「ああ、おはよう。ロラン」
ヤバい。指先が少し震える。
俺は咄嗟にその指先を隠す。
「……やっぱりどうしたの? るちゃ」
るちゃ? アニーのその呼び名に少し時間がとられるが、やはり俺を指しているようだった。
正直ややこしい。やめて欲しい。
が、彼女が心配しているのは事実のようだ。
「いや、本当に何でもないって」
俺が鋭い彼女たちに弁護しているところで、先程の女の子、そしてミシュリーヌが現われた。
「おお、おはようミシュリーヌ。マチルダ」
そうか、マチルダと言うのか、彼女。
俺はここで初めて知る。
これで幾分か話しやすくなって良かったである……のか?
「おはようです。ボクも話しに入らせて下さい」
しかもどうやら似合わぬ、いや似合うかもしれないが僕っ娘であった。
彼女は少し恥ずかしそうに話題に入ってくる。
うん、どうやら俺はこいつらと主に仲良しらしい。空気で推察する。
まあ、俺は一先ず仲間が学校にいるということで、落ち着いた。
「ところで、その……」
そんな感じでいると、ミシュリーヌが小声で話しかけてきた。
俺は耳を寄せ、ミシュリーヌの声が聞き取れる位置までくる。
すると彼女はこう囁いた。
「何で今日遅れたの? 私の方が早く来ちゃったじゃない」
……。
やはり彼女はそれについて気になっていたようである。
正直、触れて欲しくない。
これ以上喋ればバレてしまいそうだからだ。
俺がルイであるが、本物のルイでないことを。
だから、言えなかった。
「ねえ、どうしたの? 今日の朝からルイ、調子が変だよ??」
ミシュリーヌは心配しているようだった。
いや、ミシュリーヌだけでない。
ここにいるメンバー全員が心配している。
俺はそれを改めて感じ、それと同時にどう答えるか悩んだ。




