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日の出で続く異世界流転  作者: 花見&蜥蜴
第一章「鵺殺し編」
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第一章׳ה:グレゴワール

「まさかお前が、鵺なのか?」


 殺気立ったその声は、俺の体を震わせた。

 そして……


「え? 鵺ってなん――」


 一閃。強力なそのロランの攻撃は俺の心臓を確実に、そして高速に狙っていた。

 そんな斬撃をなぜ躱せたか、自分にも分からなかった。


「ここまで証拠があってとぼける気なのか。悪魔」


 ロランは今度、剣を投げる。その矛先はまたしても俺の方を向いていた。

 これを躱せば攻撃は終わるだろう。それは分かっている。

 だが俺は、その剣を躱せそうに無い。


「――!?」


 その瞬間、また何かに助けられたようである。天井から落ちた岩となぜか発生した氷の壁が、俺を守った。


「やはりお前は!」


 ロランは後ろに大きく回避し、落ちた岩につられてロランの方に落ちてくる石や岩を何かで薙ぎ払う。

 俺はどうすればいいか、分からなかった。

 頭が空っぽになったのだ。

 ここは逃げるべきか、それとも事情を訊くべきか。それを考えることもできなかった。

 今、ロランは敵なのか、それすらも。


「逃げなさい」


 どこからか声が聞こえる。十代女性くらいの、若い声が。

 そしてそれと共に、どこかで聞いたことのある笑い声が聞こえた気が……。


 逃げなければ!!


 俺は即座に決断する。

 逃げる先は勿論……入口しかない。

 そこを全力で抜けなければ!

 それしか思いつかなかった。


「……待て!」


 ロランの声が俺の足をなぜか躊躇させる。

 だが俺は無視して走らなければいけなかった。

 このままでは、ロランに殺される。

 それが伝わってきたから。


 ――光。

 日光が俺を驚かせる。

 そうだな。

 そういえば俺は日光が得意な方では無かった。

 特にこの強い光は。

 時刻は日の高さからして、10:00くらい……というところであろう。

 そしてその出口の近くには、白髪の老人が彷徨いていた。

 和服のような服装で、侍に似た感じの顔は、俺を見る。


「ルイ……」


 彼はふと呟いた。

 俺が驚く。すると老人はフッと笑い、俺に近づいてきた。


「お前、まさか」


 刹那老人は腰に下げた脇差しを抜く。かと思うとその剣は俺の首を狙った。

 どよめく。しかしその攻撃は、俺の命を狙ったものでは無かった。

 彼はまたしてもフッと笑い、面白そうに俺の顔を見た。


「お主は、そうか」


 そして彼はそう呟くと、自己紹介を始めた。

 彼の名前はグレゴワール。

 彼はどうやら、仲間とはぐれてしまったようだった。

 そして、


「どうする? 儂と一緒に街に行くか?」


 と提案してきた。

 勿論答えはYESである。

 しかし、すぐにこいつを信用して良いのか、そのような疑問が湧いてくる。

 ……。

 だが何でだろう。信用しなければいけない、そう誰かが呟いている感覚がする。

 そう、呟いてくる相手は……。


「ついていかないと、死ぬぞ」


 声の主を見る。

 しかしそこには、誰もいなかった。

 誰かがいたのは、確かであるのに。


「それで、どうする?」


「あ、ああ。じゃあついていくことにするよ」


 しまった、気配に気を取られて適当に答えてしまった。

 が、どうやら俺は後悔していないようだった。

 なら良い。例え悔いるような結果であろうと、その時はその時だ。

 なぜかそう思えたのであった。


 ー ー ー ー ー


「騒がしいな」


 暫く経って歩いていると、グレゴワールが呟いた。

 そうか? と俺が思っているとグレゴワールは後ろを斬る。

 後ろからは、斬られた謎の物体が現われた。


「やはり。レイスか」


 え? 何?

 と訊くより先にグレゴワールは他の化け物も斬っていく。

 そしてその途中で、驚いた顔をした。


「どうかしたんですか?」


 俺が訊くとグレゴワールは叫ぶ。


「避けろ!!」


 と。

 まさか――。


 その一瞬だった。

 俺の足が何かに引っ張られ、俺が転んだのは。


「くっ!」


 グレゴワールはすぐに俺を蹴っ飛ばす。

 恐らく俺に緊急回避をさせるためであろう。


「痛ッ!」


 そう俺が言うが早いか、グレゴワールは周りを切り刻んだ。

 すると化け物は姿を現す。

 その形はただの狐であった。


「ルイ。お主はそこを一歩も動くな。じゃないと殺されるぞ」


 俺が動こうとするとグレゴワールはそう話す。

 どうやら俺は邪魔者らしい。それはそうだが、少々ショックだった。

 と、思ったと同時にグレゴワールは剣の速さを一段階上げ、狐の化け物に襲いかかった。

 その速さは神速で、残像以外何も見えない。


「おお! 流石は先輩じゃな」


 しかしその剣もなぜか全て狐に避けられていた。

 俺はグレゴワールの剣と狐の速さ、どちらにも感嘆してしまう。

 というか……先輩?


 斬撃!


 今度は刀と刀がぶつかる音と同時に狐の尻尾と剣がぶつかり合った。

 が、不思議なことにグレゴワールの剣の残像は、まだ彼の周りを蠢いていた。

 刀は止まっているはずである。なぜだろう。

 そんな疑問もよそに狐は次々と追加の攻撃を放つ。

 形勢が、逆転した。

 誰でもそれが分かるようになってきた。グレゴワールがおされている。

 俺は思わず動こうとするが


「ルイ! お前は動くな!!」


 と、グレゴワールが叫んで止める。

 だけど……。

 俺はいつの間にか、ついさっき初めて会った男のことを心配していた。


 斬撃!


 そして今度は音と共に、グレゴワールの剣が宙に舞っていた。

 風が吹き、グレゴワールは剣なしで狐の攻撃を防御する。

 これは完全に負けた……かと思ったその瞬間。


「グガッ!?」


 狐が急に変な声を上げたと思うと狐は砕け散った。

 俺は何が起きたのか分からず、瞬きをする。

 そう、その時グレゴワールは素手で防御のみしていたはずである。しかしその次の瞬間見た彼は。


 剣を持ち、狐の後ろから狐を斬りつけていた。


 次元を超えた能力、それを感じた。

 そしてそれと共に、恐怖も覚えたのであった。

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