双子の弟妹が大大大好きな俺、顔は平凡ですが能力は非凡です
とある貴族に生まれた俺には双子の弟妹がいる。めちゃくちゃ可愛い。
弟は可愛い顔立ちで将来は絶対イケメンだ。妹は可愛い顔立ちで将来は絶対美人だ。つまり2人は可愛い。
ちなみに双子の弟妹が可愛いが、毎日幸せな日々を過ごす俺の顔立ちは平凡だ。そのせいか婚約者がいない。まぁ周りの貴族と比べるとかなり下と言ってもいい。周りは美男美女ばっかりだからな、もちろん俺の弟妹の方が美男美女だけどな。
そんなある日、弟妹が元気がなかった。俺はすっ飛んで近づくと膝をついて2人と視線を合わせた。びっくりした顔も可愛い。
「どうした?具合でも悪いのか?」
「な、なんでもないよ。ね?マイ」
「うん、なんでもないよ、テイ」
弟のテイが妹のマイに聞くと頷いた。
これは!隠し事をしている。お兄ちゃんには言えないことなの?
「本当に?」
「うん、行こうマイ」
「うん」
2人は手を取り合って走って逃げた。ぽつんと残る俺は泣きながら母親の元に行った。
「母上、テイとマイが、俺に、ぐす…俺に隠し事、してるよ!うわあああん」
自分の部屋で本を読んでいた母上の足元に泣き崩れた。母上はため息をついて本を閉じた。ちなみに母上は美人だ。父上もかっこいい、だから最初俺が産まれた時、周りから色々言われたらしい。でも2人は大切に俺を育ててくれた。
「もう、そんなことでいちいち泣かないの」
「だって、だって、隠し事だよ!お兄ちゃんに隠し事だよ?」
「普通に隠し事ぐらいするわよ」
そうなのかな?俺は黙り込むと部屋の扉が乱暴に開いた。
「うわあああん、テイとマイが私に隠し事をしてきたんだ!」
父上だった。泣きながら母上に抱きついて殴られた。
「なんでこう親子揃って!」
殴られた頬に手を当てて父上は泣いていたが俺に気づくと抱きついてきた。
「お兄ちゃんは、なんか聞いてないのか?」
「俺も…………隠し事されたんだよ」
「なん、だと…うおぉぉお!私もなんだ!悲しかったよな、つらかったよな。一緒に泣こう」
「父上!!」
2人で抱き合って泣いていると、母上がため息をついて椅子から立ち上がり持っていた本を俺と父上の頭に振り下ろした。
「私が聞いてくるからいい加減に泣きやみなさい」
「本当に?」
「痛い…」
俺は母上を見上げ、父上は頭を抑えている時だった。
扉がノックされ母上が返事をした。中に入ってきたのはテイとマイの執事だ。
「失礼します、テイ様とマイ様が魔の森に向かいました」
我が家の少し離れた場所にある魔の森は魔物が沢山いて危険な森だ。しかし珍しい素材が手に入るので、冒険者がたまに向かうのを見たことがある。
「なんだと!それは本当か!」
「はい、今騎士達が捜索に向かいました」
「お前がいたのに何故行かせた!」
父上が怒鳴り声を上げると執事は眉を下げた。
「申し訳ございません、テル様とマイ様に言われてお菓子を用意しておりまして…しかし騎士達が気づいて保護しようとしましたが、魔法を使いうまく逃げられてしまいまして」
「さすがテイとマイだね、父上!」
「まさか騎士達から逃げるとは、さすが我が子だ」
母上が咳払いをして父上を睨んだ。
「あなた、今は2人を探すのが大事よ」
「そうだな、一刻も早く見つけないと危ない」
「母上、父上、俺も探しに行ってくるよ」
俺は2人を安心させるように笑うと父上と母上は同時に頷いた。
「頼む」
「お願いね」
「うん大丈夫、二人とも無事に連れて帰ってくるよ」
俺は指を鳴らすと一瞬で部屋から魔の森に移動した。
相変わらず昼間なのに薄暗い。
「えっと2人の気配は、……良かったあった」
俺はもう一度指を鳴らすと一瞬で2人の前に現れた。驚いたように目を見開く2人は可愛い。可愛いが今回はちゃんと叱らないといけない。
「こら、2人とも!魔の森に入ったら駄目だって言われてただろう?」
怒られてしょんぼりした2人に俺は慌てて手を振った。
「ごめんごめん、お兄ちゃん強く言いすぎたよね?嫌いにならないで!」
「「ごめんなさい」」
謝った2人は俺に抱きついてきた。どうしよう今凄く幸せ。右にテイと左にマイがいる。あぁ幸せだ。
俺は幸せを噛み締めていると目の前に魔物が現れた。しかも群れで現れた。何十頭いるのだろうか。俺達を囲むようにして立っている。
「きゃっ!」
マイが怯えたように悲鳴を上げるとテイが心配そうにマイの手を握った。テイも震えてるのに、男の子だもんな。偉いぞ。
俺は2人を抱きしめて魔物を見た。牙を向いて今にも襲ってきそうだが弟妹のためなら余裕だ。
「大丈夫、お兄ちゃんが守ってやるからな」
「「お兄ちゃん」」
2人が涙目で俺を見上げてきた。ヤバいこれはヤバイ、可愛いすぎる。どうしようもうちょっとこのままでもいいかな。
しかし魔物は地面を蹴って襲いかかってきたので、俺は指を鳴らすと全ての魔物の体が空中で止まった。
魔物は驚いたように目を見開くが体は動かないだろう。このまま剣でも刺せば殺せるが…。
「殺しはしない、テイとマイに感謝するんだな」
可愛い弟妹にそんなところ見て欲しくない。だから俺はもう一度指を鳴らすと魔の森から屋敷へと戻った。
「たっだいまー!」
急に現れた俺に驚くこと無く母上が泣きそうにテイとマイを抱きしめ、父上が笑顔で俺の頭を撫でた。
「良くやった、騎士達には帰還するよう伝えてくれ」
父上がテイとマイの執事に言うが何故か動こうとしない。
「詠唱無しで魔法を?いやそもそも転移魔法など使えるなんてありえない。唯一使えたのは大賢者様で、しかし今この目で見たのは…」
ぶつぶつと何か悩んでいる。俺は父上を見上げた。
「じゃあ、俺が魔法で言っとくよ。危険だし」
「すまんな」
そう言って魔法で騎士達の頭の中に直接伝えれば何故かパニックを起こしたので、慌てて全員屋敷に戻した。
「今のは魔法なのか?何故頭の中で声がするんだ」
「大量の魔物が空中で浮いていただと!?」
呆然とする騎士達はぶつぶつと執事のようになってしまった。もしかして俺が悪いのこれ?
「「お兄ちゃん!」」
「なんだい?」
2人に呼ばれて騎士達のことはすっぱり忘れて、俺は笑顔で2人と視線を合わせた。
「「ありがとう助けてくれて」」
笑顔の2人に俺は両手で顔を隠すと幸せに体を震わせた。めちゃくちゃ可愛い。ぷっくらとした頬を染めて笑顔で言ってくるんだよ?可愛いに決まってる。
あ、そうだこれは聞いとかないと。
「ところでなんで魔の森に入ったんだ?」
「「……」」
「お兄ちゃん絶対怒らないから言ってごらん?」
2人はお互いを見てから話し出した。
「あのね友達がお兄ちゃんのこと、かっこよくないって言ってたの」
「マイとテイはね、そんなことない、かっこいいもんって言ったら、魔の森にあるドラゴンのうろこを取ってきたら認めてやるって言われたの」
2人は落ち込んだように俯いた。
「でもドラゴンのうろこ取れなかったの」
「ごめんなさい」
「そっか、ありがとうね。お兄ちゃんのために…」
俺は2人を優しく抱きしめてから立ち上がると父上を見た。
「そいつ半殺しにしてきますね」
「私も行こう」
「やめなさいっ!!」
母上に俺と父上は頭を叩かれた。俺は父上と一緒に頭を押さえた。
「それより、いい方法があるわ」
母上は珍しく不敵に笑みを浮かべた。
後日、友達の家にドラゴンの新品の剥製を1匹丸々送ってやった。
その後、友達の家族は何故か遠いところへ引っ越して行った。テイとマイは寂しがっていたが、母上と父上はどこか満足げだった。
しかしテイとマイにも新しい友達が出来て楽しく遊んでいるので、俺はそんな2人を見つめながら幸せを噛み締めていた。
俺
弟妹大大大好きな平凡で非凡なお兄ちゃん。弟妹のためならなんでも出来る。ドラゴンをちょっとトイレ行ってくるって感じで倒してきた。そのせいか分からないが、執事と騎士達が俺を見ると崇拝してくる。
それを真似してきた弟妹が可愛くて悶絶した。
テイ
双子の男の子の方。
めちゃくちゃ可愛い。
マイ
双子の女の子の方。
めちゃくちゃ可愛い。
父上
俺と同じ性格。そのおかげもあり、母上の浮気疑惑は晴れた。イケメン。
母上
この屋敷の1番の苦労人。唯一、俺と父上を止められる人でもある。美人。
執事
いつも双子に振り回される。いつも落ち着いて行動しようと心掛けている。俺の力に数日戸惑っていた。
騎士達
俺の魔法で固まったままの魔物を発見して驚き、頭の中で声がしてパニックになった。そして急に屋敷に戻ってきて呆然としていた。一応強い。
友達
家にドラゴンの剥製が来て泡吹いて気絶した。泣きながらテイとマイに謝ろうとしたがそれを俺の力で謝れないようにした。
夜、ドラゴンの剥製が動き出し(俺のせいで)家族と一緒に夜逃げした。
読んで頂きありがとうございました。