【300文字】冷たい世界にさよならを
場所 校舎の屋上
時 月の隠れる頃
「……なにしてるんですか。先輩」
「最後の晩餐にアイスティーを」
「わかりません。先輩の行動も、思考も」
「わからなくていいよ。ただ、私にはこの世界は眩しすぎただけだ」
「……」
「夢を持て、頑張れ。そういう言葉に辟易したんだ。それだけ」
「わかりました」
「えらく物わかりのいいやつだ」
「あなたのことが好きでした」
「知ってた」
「それでも死ぬのですか? 薄情な人ですね」
「私はいま幸せだ。だから死ぬんだよ」
「瞬間を永遠に、ですか」
「あぁ」
「それは幸せなんですかね」
「どうだろうな。ただ、私はそう“信じて”いる」
「先輩。好きですよ」
「……ありがとう」
月が隠れて世界が白む。
太陽なんて、見たくない。