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タイプ7「マジラブレター、まじ!?」

「・・・さすがに、今日は入ってないでしょう」

羊がそう言いながら、恐る恐る手を差し出す。

そして、下駄箱の、自分の靴入れの扉を掴む、

「大丈夫、きっとない、今日はない!」

勢いよく、扉をひらく。


「ザーー」


雪崩なだれの様に落ちていく、ラブレター、


「・・・・もういや」


「あぁ〜あ、毎朝毎朝、ラブレターを下駄箱に入れるなんて迷惑だよ」

「すごい嫌味だなこのやろう」

狼が頭に怒りマークを出しながら言う。

「だってラブレター全部どうしろって言うの?」

「捨てろ」

あっさり吐き捨てる狼、

「もらったこともないからそんなことが言えるんだよ、全く」

落ちているラブレターを拾う羊、

その間に狼も下駄箱を開けた。


「ん?・・・なんか入ってる?」


上靴の上に置かれた手紙、取り出して狼がその裏を見ると、

ハートのシールが貼られてあった。


≪・・・きた!俺の時代!!≫


有頂天になる狼、そしてその手紙を懐に入れてそそくさと先に進む。

「え?どうしたのじん?」

「なんでもねぇ、先行ってるからな」

羊を置いて、狼は屋上へ上がった。


『じん先輩へ、

入学した時から先輩の事が好きでした。

私の学校に来る楽しみは、先輩に会う事です。

先輩とは話したこともありませんし、たぶん先輩は私の事を知りません、

ですが、私は決心して告白する事にしました。

今日の下校時間、美術室で待ってます。

         佐咲ささきみゅうより』


「・・・・おっし!おっしおっしおっしおっし!!」

声を抑えながら喜ぶ狼、彼は今、幸せの絶頂にいた。



 そして、下校時刻、

要弧達には先に帰るように言った、

邪魔しに来る可能性はない、髪形も変じゃない、後は、相手次第!

緊張しながら美術室へ向かう狼、

そして、美術室の前に来た。

≪一体どんな子だろう、かわいい子だと良いな〜≫

そう思いながら、扉を開けると・・・。


窓に寄りかかっている、長い金髪をカールにした、ハーフ。

青い瞳に、日本人とは少し違う顔立ち。

「・・・・みゅう・・・ちゃん?」

「・・・じん先輩!」

名前を呼ぶと、かわいい笑顔で寄ってくるみゅう。

≪あぁ、ハーフだからみゅうって名前なのか、にしてもかなりかわいい!これはラッキー!≫

もう嬉しすぎて気がだらけまくっている狼、


だが、これは罠だった・・・。


抱きついてくるみゅう、普通に喜んで抱きしめる狼、


「カシャ」


そして聞こえたシャッター音。


「これでばっちり」

「はい?」

ふと、空気が変わる。

「写真はばっちり取れた〜?」

「もちろんよ」

みゅうが声をかけると、なんと美術室の隅にカメラを持った女子生徒がいた。

「・・・・はい?」

混乱する狼に、みゅうが微笑んだ。


「これでじん先輩は私のものね」


どことなく、その不敵な笑みは要弧と似ていた。



 翌日

「はぁ?じんの野郎先に行ったのか?」

要弧が狼の家の前で声を上げる。

「う、うん、なんでも用事があるとか言って」

「ったく、しかたねーなぁ」

要弧は特に気にしない様子だが、羊は心配だった。

≪あいつ・・・なにしてんだよ?≫

ただの気苦労であって欲しいと思ったが・・・そうもいかなかった・・・。


「・・・じんなら、まだ来てない」

教室ではいつものメンバーが顔をそろえていたが、狼だけはいなかった。

「全く、なにか良からぬ事をしでかしたんじゃないだろうな?」

「もう、今日は今度行く予定の映画の話をするって言ったのに〜」

「ったく、めんどくせぇやつだな」

要弧たちは口々に文句を言っていたが、羊だけは黙っていた。

≪・・・・絶対嫌な予感がする≫

今まで何度もあったこの気持ち、そう、不幸が振りかかる予兆だ!

なにか災いが襲ってくる感じに、羊は顔を青くした。


そして、その予感は的中する。


「ようこちゃん達、もしかしてじん捨てた?」


そう言ったのは、ニューハーフの慎だった。

「・・・・え”?」

羊が声を出すが、後の四人は声すら出していない。

「いやさぁ、じんが一年の美少女グループのマネージャーしてたからさ」

≪・・・・なんじゃそりゃぁあああ!!!何してんだオレ!?≫

パニックにおちいる羊をよそに、


四人がすごい剣幕で怒りの形相になる。



「ねぇ、みゅうちゃん達のマネージャー見た?」

「うん、見た見た!あの人って確か、二年のようこ先輩のマネージャーじゃあ?」

「噂だと、捨てられたらしいよ」

「えー!マジ!」

一年の女子生徒の会話が聞こえる。

それをばっちり聞いた羊は事の重大さを確認する。


≪まず、じんはなぜか一年生の美少女グループのマネージャーをしている、そして、ようこ達はかなり怒っている・・・って所か≫

何とか要弧達を説得して狼を連れ戻してくるからと言って一年の教室に来た羊。

≪ったくあのバカおおかみは何してんだオレの癖によう!!≫

一年の教室を見回る羊、なかなか狼は見当たらない。

≪仕方ない、適当な奴に聞くか≫

そう考えた羊は、近くにいた女子生徒に声をかける。


「ねぇ、一年生の美少女グループのマネージャーってどこにいるかわかる?」

「はい、たしか〜、Fクラスにいましたよ」

「ありがとう」

Fクラスは一番端っこの教室だ。

羊は少し早足で教室の前に来る。

既に開けてあったドアの中を覗くと・・・。


「じん先輩〜、この缶ジュース開けてください」

「・・・・はい」

「じん先輩、ここの問題がわかりませ〜ん」

「・・・・はい」

「じん先輩!まだ私とオセロの途中ですよ!」

「・・・・はい、すみません」

「ちょっと待ってよ〜、じん先輩は私に問題を教えてる途中なんだから〜」

「だめ!じん先輩は私とオセロするの!」

「はいはいはい、ケンカはダメ、どっちもちゃんとするから」

「じん先輩?あのドアの前に立っているのはお知り合いですか?」

狼が顔を上げると、顔をうつむけた羊がそこにはいた。


≪ひじり!助けに来てくれたのか!?≫

≪このどあほうが!!情けなくてガックリしてたんだよ!!≫

≪文句なら後で何度でも聞くからまずは助けてくれ〜!!≫

四人のかわいい後輩のいいなりになる狼は本当に情けなかった。

とりあえず、羊は教室へ入り、みゅうの前に立った。

「悪いけど、そこのバカを引き取りにきたの、返してもらえる?」


「いやです」


ニッコリと笑顔で答えるみゅう、対照的に羊は怖い笑みになる。

「あのね〜、そのバカの所有権はこっちにあるの、わかる?」

「ひどい!じん先輩は物じゃないです!」

勉強を見てもらっていた青い髪の少女がじんの腕を掴んで言う。

「好き勝手にこき使っといて物じゃないって言えるのかな?あなた達?」

「とにかく、じん先輩がここに居たいって言っているんだから、それで良いはずですよ?」

みゅうのそのセリフに、羊は反応して狼を睨む。

≪あぁ?貴様このガキどもに惚れたのか?このロリコンが!≫

≪違う!誤解だ!それと、オレ今弱み握られてて・・・逆らえないんです≫

≪弱み?・・・なんだよそれ?≫

≪・・・いや、その・・・誤解を招く写真がありまして≫

≪・・・・はぁ?≫

羊はとりあえず、みゅうを見る。

みゅうは不敵な笑みを浮かべて、勝ち誇った様子だ。

「・・・どうすればじんを開放してくれるの?」

「じん先輩は私たちのものですから、開放はできませんね」

「・・・・それはじんを気に入ってるってことかしら?」


「もちろんです」


自信満々のみゅうの後ろでは、青い髪の少女と長髪の少女とツインテールの少女が狼に抱きついて放す様子はない。

そして困り果てて涙を流す狼がいる。


「仕方ないわね、ここは一つ、ゲームで決めましょう」


羊はそう言って、かわいい笑みを浮かべた。


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