タイプ51「男達の聖戦三」
非常にドロドロして参りました。
でもせめて!ここで馬鹿みたいにテンションあげてなきゃ!!負けだと思う!!
人が寄り付かなくなった廃工場、そこに、水島をさらった奴らと、その他の不良たちが揃っていた。
「意外だな〜、天下無敵にも思えるヘッド達が狼とかいう奴が来るって言っただけでここまで移動するなんて・・・そんなに相手は強いのか?」
外で見張りをしていた男達が会話を始めた。
「さぁな、とりあえず俺らが集団で襲い掛かっても勝てなかった相手だし・・・けっ、今思い出しても胸糞悪い。女を襲ったからどうのこうの・・・どうでもいいじゃねぇか、んなこたぁよぉ」
≪・・・ふん、下劣な奴だな・・・このチームも、そんなクソどもが集まり始めて、前みたいな気分のいいもんじゃなくなってきたな・・・≫
「別に逃げたわけじゃねぇよ」
そこで声を出したのが、あの雷門だった。
「ら、雷門さん・・・こちらは異常ありませんよ」
「そうか。それと、お前は辻風が負け犬みたいな事を言ったが・・・それは違うぞ」
≪後から入ってきた風情で偉そうにすんなよ?辻風さんが負け犬なワケねぇだろ?≫
この男は心の中でそんな悪態を付きながらも、口では謝っておいた。
「俺らの標的は要弧であってあの男共じゃない。それに、どうやら無駄に正義気取りなやつらみたいだし、あえて俺らを見つけることもできずに、精々悔しがらせばそれでいい。そして、あいつらが守りたい要弧たちを傷つければ、それでいいんだよ」
≪・・・・胸糞悪い≫
男はそれだけを思って、見張りの続きをした。
「おい!聡介のやつ逃げて来れたみたいだぜ!あいつらのうち一人を隙を見て脚にナイフ突き立てたんだとよ!あいつも根性あるじゃねぇか!」
中でそんな事を言う声が聞こえた。
≪・・・ケンカに出刃もってくんなよ・・・・殴り合ってこそのもんだろうがよ・・≫
そんな声も、一切出さないまま、男はただ、突っ立っているだけだった。
「うまくいきました。やつらは山中にある廃工場にいます」
「・・・そうか」
狼はそう言って、早速向かう事にした。
「おい狼、コイツどうするんだよ?誰が警察に届けるんだ?」
「・・・そいつはもう用無しだ、自首するなり帰るなり好きにしろ」
「ばっ!なに言ってんだよ!正気かお前!」
音恩がとうとう我慢できなくなって狼に掴みかかった。
「狼!お前さっきからコイツに対して甘くないか!?こいつは最低な奴なんだよ!女で遊んで、それで傷つけているようなゲスヤロウなんだよ!妹が死んだとか言ってるけどコイツに同情する価値はねぇ!むしろこんな最悪な兄を持った妹さんに同情するってんならわかるけどな!」
「・・・こいつの名前は聡介・・・多分、名字は『原田』だろ?」
「はぁ?」
音恩が怪訝な顔をすると、聡介は驚いたように、そうだ、と言った。
「・・・オレの妹の栗鼠が・・・コイツの妹と友達だった・・・不良少女同士でな」
聡介の驚いた顔と、北崎達の沈黙で、場は静かになった。
人っ子一人いない河原の近くで、五人は突っ立っていた。
「・・・・栗鼠が、ある晩・・・・泣いて帰って来た時がある。それでどうしたと聞いたら、久しぶりに会おうとした友達が、死んでいた、と答えた。しかも、酷い事に犯された後で・・・犯人は、都内ナンバーワン進学校のエリート生徒だ・・・そいつが言う事には、夜中ほっつき歩いている不良女だったから、やってもかまわないと思ったらしい・・・。とんだ偏見だな、頭いいくせに狂ってるんじゃないかと思ったよ」
「本当に不良少女だったんなら・・・別によかったさ」
聡介はふと、そんな事を言った。
「・・・あいつは、働きっぱなしの母さんに、甘えたかったんだよ。だから、不良ぶって、かまってもらいたがっていた・・・。ただ、ただそれだけなんだよ!あんたらが親にかまってもらえるように!あいつもかまってもらいたかったんだよ!・・・なのに・・・そのエリートは、妹を不良だと決め付けて襲った。泣き喚く妹を無理やり犯して!挙句に殺しやがった!決め付けただけで!・・・・あいつは・・・本当は・・・不良でも、なんでも・・・なかったんだよ・・・」
涙声で、聡介は自分の無念を叫んでいた。
「・・・それでも、許されるわけねぇだろ!てめぇは結局その狂ったエリート野郎と同じ事してんじゃねぇか!」
「その後母さんも死んだように抜け殻になって!自殺したんだよ!・・・オレだって・・・狂うしかなかったんだよ!最低な奴になって!本当の不良になって!表面だけ良いぶっている奴らを不幸に陥れたいんだよ!」
音恩と聡介が言い合っていると、狼がふいに静かにしろと言った。
「・・・・お前が狂いたくなるのもわかる。栗鼠だって、オレの両親が仕事ばかりだから、あいつなりの反抗の仕方で、不良ぶっているんだ・・・だから、お前の妹を壊された悔いはよくわかる・・・・でもな、だからと言ってお前がした事を誰も許しはしねぇよ・・・でも・・・もう目が覚めたってんなら・・・やるべきことやって来い」
また、静かな時間が流れる。
そして、聡介はおもむろに立ち上がり、わかったとだけ言った。
「・・・自分がやってきたことに、今は後悔している・・・だから警察に行くさ・・・・だが、今の俺たちのチーム『火行火』の奴らが、そんな大人しい連中だと思うなよ・・・ヘッドがおかしくなってから、マジでキチガイな奴らが集まってきたからな・・・死んでも恨むなよ・・・・」
よろよろと歩く聡介に、しゅうが声をかけた。
「一応聞くけど・・・なんであんたの所のヘッドさんは要弧にキレてるわけ?教えてくれるかい?」
「あぁ・・・そりゃあ・・・うちのヘッドは精神病もちでな・・・まぁ、要は狂っているんだが・・・要弧がその気もないくせに優しい顔したもんだから・・・きれいに言えば恋煩いみたいなもんだ・・・本当、そんなもんだったらいいのにな・・・」
「はぁ?何だよそれ?キチガイがそろいもそろって迷惑極まりないな」
音恩の台詞に、聡介はそうだなとだけ言って、歩いて去っていった。
「・・・・なぁ狼、お前・・・さっきの話で相手にかわいそうとかそんな情を」
「持つわけねぇだろ?相手は男なんだから手を抜くつもりはない」
音恩は如何わしい表情で狼を見たが、結局何も言わなかった。
「っていうか、お前こそあいつらに対して敵意むき出しすぎだろ?」
「・・・・当たり前だろ・・・弱い人間で遊ぶ奴をオレは・・・絶対に許さない」
狼が音恩からよからぬ感情を感じて、すこし戸惑う顔をした。
だが、そんな気持ちを抱えつつも、一同は敵陣に向かって歩みを進めた。
病院
「・・・・水島さんが・・捕まったの?」
慎から携帯で呼び出された雫と臣と奈絵美は、今病室前で慎からの説明を受けていた。
「みよちゃんは一命を取り留めたから大丈夫だけど・・・水島さんはいまだ安否わからずってところだね」
「そ!それよりも!そんな危険な奴らのところに狼たちは向かっているのか!」
奈絵美が焦った様子でそう聞くと、慎はうなずいた。
「・・・・すぐに・・・連れ戻さなきゃ」
臣が走って出て行こうとするのを、慎が止める。
「君たちが行くほうがもっと無茶だろ!狼たちの事なら大丈夫だ・・・だから、大人しく待っていなきゃ」
「そんな事してる場合じゃないわよ!」
雫が苛立った感情を表に出して叫んだ。
「あいつらが危ないんなら・・・首輪をつけてでも連れ戻さなきゃ、その女の子よりひどい目にあうかもしれないのよ!」
「でも、敵の場所もわからないんじゃあ、追うことはできない。それどころか、君たちを守るために彼らは動いているのに、その君たちが下手に動いて敵に捕まったらどうするの?」
「だからって!」
すでに雫は我慢できないようで、慎が手を掴んでいなければ走り去ろうとする勢いである。
「だからこそ・・・悪いけど、君たちに集まってもらった理由は・・・こうするためなんだ」
慎がふとそんなことを言うと、奈絵美と臣と雫が、相次いで気を失ったように、その場に倒れた。そして寝息を立てている。
「お手数をかけましたね骸骨さん」
「お安い御用や」
姿を消していた骸骨がふと現れた。
「それよりも・・・要弧ちゃんと羊ちゃんは?」
[ちなみに、慎は骸骨の存在は知っていますが、羊と狼が同一人物だということは知りません]
慎のその台詞の後、骸骨は非常に言いにくそうなようで、少し黙っていた。
「・・・どうしました?」
「・・・・・・要弧ちゃんと羊ちゃんは・・・・今ものすごい速さで狼はんの後追っとるで。たぶんバイクやろな・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
慎が青ざめた表情になる。
「すぐに私たちも追いましょう!」
「警察の事情聴取は?」
「そんなもの知りませんよ!」
慎が近くの看護婦に三人を頼むと、走って外に出た。
「ていうか要弧ちゃんは場所知っているんですか!?」
「まぁ相手が要弧と因縁あるみたいやし・・・そうなると、要弧自身にも身に覚えがあるんとちゃう?」
「あぁもう!ややこしくなる前に止めなきゃ!何か乗り物あります?」
「オレが人型になってバイクぱくるさかい、ちょっと待ってて」
骸骨はそう言って一瞬で人型になり、たまたまそこにあったバイクを見つける。
「メットは慎はんが付けとき、オレは平気やから」
「それよりも、キーもないのにどうするんですか?」
「平気へーき、こん時のための魔術やろ?」
骸骨は軽く詠唱をすると、バイクはエンジン音を上げて、いつでも動けるようになっていた。
「じゃあ行くで!」
「そ、それよりも気になるんですけど・・・瞬間移動はできないんですか?」
「できるで?ただし、固定の場所だけやけどな。せやから俺ら二人で移動しても、二人はバイクで走っているんさかい、捕まえるんは無理やで?」
「じゃ、じゃあ、このバイクごと移動すれば?」
「残念、昔のオレならできたんやけど、今は低俗の召還死神。魔力が足らんねん」
「そ、それじゃあ・・・今言うのは場違いかもしれませんけど・・・・なんで、そこまでして狼君たちに手を貸すんですか?」
「・・・・時間が惜しいわ。出るで」
骸骨は勢いよくアクセルを踏んでバイクを飛ばす。
「・・・・ただの、召還された死神だからですか?」
「・・・ちゃう・・・もっと、はるか昔の約束を・・・・守るためや」
二人の会話はそこできれて、バイクは要弧たちの後を追うようにして、スピードをどんどん上げていった。
時刻は、気づけば二時過ぎであった。
伏線回収中なのに新たな伏線張るってどうよ?