タイプ44「まともなデートはいかがかな?」
祝!50話目!!!
祝え!宴のはじまりだぁあああ!!!
「ねぇ狼・・・頼みがあるんだけど・・・」
土曜日の夜。羊はポツンと食事中にそんな事を言った。
「ん?なんだ?」
「明日・・・・デートするから留守番頼むね」
狼は盛大に味噌汁を噴出すのであった。
「話をまとめると・・・明日雫とデートをするって事だな。もちろん男になって」
「そうよ。あ、付いて来たら殺すから」
「誰が好き好んで付いて行くかよバーカ≪わかってるって、当たり前だろ?≫」
狼は本音と建て前を間違えてしまった。
「とにかく、そんな訳でよろしくな」
「・・・ひゃい」
狼は口から血を流しながら返事をした。
そして、楽しい残酷な日、日曜日になるのであった。
朝、狼がのんびり起きて下の階にいると、もう既に誰もいなかった。
≪あぁ、もう行ったんだな・・・まぁ二人は相思相愛な訳だし、楽しんでくれればそれで十分だぜ≫
「ピンポーン」
突然鳴り響くインターホン。狼は居留守を使おうと黙っている事にした。
「ドン!ドン!ドン!」
すると玄関のドアを激しく叩く音がした。
≪おいおい・・・ずいぶん荒々しい訪問者が来たもんだなぁ?≫
「ドコッ!バコッ!ガッシャァァァアアアン!!」
≪ドアが破られたぁぁああ???≫
狼が急な事態に腰を抜かしていると、侵入者はずかずかとリビングに近づいてきた。
「羊ちゃぁあああん!!!狼が!!じんが雫と浮気してるぅぅうううう!!!」
「うっぐ・・・えっぐ・・・狼が・・・狼が・・・捨てられた〜・・・ひっぐ」
台詞だけでは一体誰なのか分からない程、この侵入者は気が動転しているようだ。
そしてリビングに入るドアをありったけの力でぶち開けて入ってきた。
「・・・何しているんだよ・・・要弧、臣・・・」
二人とも怒っているのやら泣いているのやら、と、素の状態全開で狼の前に出てきてしまったのであった。
「「・・・・!!!!!!」」
二人は更に気が動転して戦闘状態に入った。そして狼を殴るわ蹴るわで・・・。
数分後
「・・・あれ?・・・オレいつの間に起きたんだ?」
「よ、よう狼。お前、その・・・お、起きるの遅いぞバカ!」
「・・・おはよう・・・」
二人は平穏を装っているようで顔は火が出るくらい真っ赤だった。まぁ狼はもちろん気付かないし、さっきの記憶は吹っ飛んだようだし。
「そ!それよりもよう!雫が!なんか狼とよく似たロン毛のやつとデートしてたんだよ!」
「・・・雫・・・いつの間にあんなかっこいい彼氏を・・・抜け駆け・・・羨ましい」
≪めんどくせぇ・・・よりによってこの二人に見つかるとはな・・・でもまぁ、特に何もしないだろう≫
「と言うわけで狼、雫ばっかりいい目見るのは癪だから私達を遊びに連れてけ!」
「遊びたい!・・・ねぇ、いい?」
「え〜、めんどくさい」
「なっ!狼てめぇこっちは美女二人が遊んでやると言っているのに!」
要弧がまたキレて殴りかかろうとした所で、臣がそれを止める。
そして耳元でささやくように要弧に話した。
「毎回殴ってばかりだと・・・狼も行く気がしないよ・・・だから・・・ゴニョゴニョ」
「え?・・・そ、それはちょっと・・・恥ずかしい気が」
「いいから・・・ね!」
二人がなにやらコソコソ話しているのを一切気にせず朝ごはんを食べる狼。
そして二人は話が終わったので狼の目の前に立つ。
「ん?なんだなんだ?」
「「・・・・遊びに、行こうよ♪」」
最高にかっこいい流し目をする二人。
正直ここで可愛い笑顔だの上目遣いだのを期待した諸君にはとりあえずごめんなさい、と、ザマーみそとだけ言っておこう。
で、そんな流し目を受けた狼は盛大な溜め息と疲れを感じながら言った。
「・・・期待を裏切ってくれてありがとう」
はは、密かに期待していたんだな。
「・・・おい、臣・・・何か反応薄いぞ?」
「・・・・おかしい・・・いつもなら・・・・盛大な歓声が聞こえるはず?」
「わかったよ、遊びに行けばいいんだろ・・・ハァ〜〜〜」
何はともあれ、三人は夏の予兆がする日差しの暑い日曜日を満喫する事にした。
三人が繁華街を歩く。
言っておくが要弧も臣もスカートなんかはかないから、傍から見れば男の子三人組なんだぜ?
見てみなよ、女子の視線はこいつらに釘付け。あっちの女の子なんか写メしてるよ、そして黄色い歓声。はは、もはや有名人同等だぜ。
≪狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい狼と手をつなぎたい≫
≪腕に・・・しがみつこっかな・・・いや、それよりも・・・腕を組んだ方が・・・いや、ここは大胆に・・・お姫様・・・抱っこ?≫
≪新型インフルエンザにかからないように息を止めるか≫
三人揃ってろくでもない考えを張り巡らしている。
そんな目立つ三人組に声をかけるグループがいた。
「ねぇねぇ!そこの君達〜、ナンパなら大歓迎だヨ?」
「きゃー!かっこいい!お暇なら遊びましょうよ〜」
「わ〜、遠くから見たら地味ですけど近くで見たら結構かっこいいですね!」
短いスカートにちゃらちゃらとした風体の女子高生三人組が三人を逆ナンしてきた。若干狼に対しては酷い扱いだが。
≪失せろカスが!女っぽいお洒落しやがって!何?当てつけ?私達の方が可愛くてセクシーとでも言いたいの?悪かったわね!どうせそんな格好なんか似合わないわよ!≫
≪・・・いいなぁ・・・可愛いスカートにシャツ・・・小柄なその体型が・・・一番・・・羨ましい≫
≪けっ、ま〜た要弧と臣目当てのナンパかよ。くそ!一度でいいから逆ナンされてぇ!オレ一人の時にそうなってほしい!≫
三人はうんざりとした顔をわざとアピールするように、その女子高生達に見せつけた。
「ねぇねぇ!カラオケ行コ!」
「私犬塚愛の歌がめちゃくちゃ得意なんですよ!」
「あ、そこの端っこの地味な人は何か用事あるんですか?嫌そうな顔してますから帰っていいですよ」
しつこく言い寄ってくる女子高生達、でもやっぱり狼に対しての態度がおかしい。いや、合ってるか。
さすがにしつこいので要弧が断ろうと口を開く。
「悪いけど遊ぶつもり無いから他をあたっ」
「いいじゃないですか!ホラホラ!行きましょうよ〜〜」
「一緒に来てくれなきゃここで大泣きしますよ〜?お巡りさんが来るかも?」
「ほら!あなたもこっちに来て!」
「・・え?・・いや、だから」
要弧と臣が腕をつかまれて引っ張られる。もちろん狼には誰も寄り付かない。
「い、いい加減に」
要弧が真剣に怒ろうとした時、要弧と臣は後ろから誰かに引き寄せられた。
「いい加減にしてくれないか?オレ達今デート中だから」
狼が要弧と臣をしっかりと抱き寄せてそう言った。
≪え?じ・・・狼?≫
≪わ・・・え?・・・そ、そんないきなり・・・≫
二人が恥ずかしく顔を赤くさせる。
「え?・・・なに?もしかしてゲイ?」
「やだ・・・ホモカップルだった?」
「地味×イケメン・・・・いいかも」
変な目でみられる三人≪若干傍観者の一人は変態のようだが≫。
白けた視線を送るのは目の前の女子高生達だけではない。
通りすがりの通行人達も要弧や臣と狼を完璧に同性愛者と見ているようだ。
当然だが傷付いた二人は一気に冷めた表情をした。そして狼から離れようとする。
「や、止めなよ・・・変態に思われてるぞ」
「・・・大丈夫・・・だから・・・早く・・・放して」
「・・・・けっ、折角の休みだから遊びたいっつったお姫様はどこのどなたでしたっけ?」
狼は離れようとした二人を更に強く抱き寄せて、目の前の女子高生達に言った。
「とっとと失せてくれるかなボケナスども。貴様らの濁った汚い目じゃあこいつらを男だと誤解しても仕方ないだろうがなぁ・・・はっきり言ってテメェらよりも二人のほうがかわいい女の子なんだからな・・・わかったんなら二度と話しかけんなよ下品な無能どもが」
狼の久しぶりの怒りの形相が、女子高生三人組を睨んだ。
「ご、ごめんんさ〜い!」
「ヤバイよ!早く行くよ!」
「・・・あの表情・・・かっこぃ」
三人は走って逃げ出す。そして周りの野次馬も、もう変な目で見てこなかった。
「・・・狼・・」
「・・・・・ありがと」
二人は真っ赤になって・・・嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、買い物の続といくか」
狼があっさり二人から手を放して先に進んだ。
≪えぇええ!??ボーナスタイム(?)終了かよ!?≫
≪う・・・・まだ・・・くっ付いていたかった・・・・≫
二人が落胆していると、狼がふとある行動にでた。
「はぐれないように、な」
狼は要弧と臣の手をつかんで、手を握ってあげた。
「さて、お姫様をしっかりエスコートしねぇとな」
そう言って二人の手を引いて歩き出す。
要弧も臣も顔を赤くするが、嬉しさに身を任せて、そのまま手を握る。
そして、同じく顔を赤くしている狼を間に挟んで、三人はデートを楽しむ事にした。
真っ赤で熱い三人を、太陽の日差しは、更に熱くするように照り付けていた。