タイプ41「敬愛する姉のために・・・」
辰来と美緒が意外と扱いやすいキャラなんだよ。
それ以上にしゅうの方が使いやすいのだがね。
「やっほ〜、臣姉のかわいい妹!美緒で〜す!
お父さんが最近私と臣姉を見てこう言ったんです。
『・・・臣を逆さから読むと・・・美緒じゃないか!』
困ったな〜、ボケられるには速すぎるんだと思いま〜す。[作者は後日その事に気付きました。
まぁどうでもいい話は置いといて・・・臣姉の事なんですけど。
正直臣姉と狼さんのイチャイチャが少ないような気がするんです。
そりゃあ、夏休みの図書委員の仕事で一緒になったり、
臣姉のお弁当を狼さんが食べて誉めていたり、
クリスマス準備の時は一緒に買出しをして、マフラーイベントまでありましたけど・・・。
全部が噛ませ犬みたいに感じるのは私だけですか?」
「そ、それは一応無いと僕は思うけどな〜?」
辰来が困った表情で、演説をする美緒にそう言った。
場所は近所の公園。時は春風そよぐ春真盛りの昼。二人は写生大会に出かけているようだ。
≪あぁ〜あ、美緒ちゃんと二人っきりなのに・・・まさかお姉さんの話しが出るとは≫
辰来が恋煩いで落胆しているが、美緒は御構い無しに臣の話をする。
「容姿端麗!黒髪美人!口数の少ないミステリアスな美女で!滅多に笑わないアイスマスク!でも意外な事にちょっとしたMっ気がある意外性たっぷりな!胸も結構あって!流し目最高で!泣き顔最強の完璧なヒロインなのに!なんで!?なぜ狼さんは食いつかないの!?」
「・・・なんかそこまで無茶苦茶な性格だと引いちゃうんじゃ?」
「なに?辰来くん?女装写真ばらまくわよ?」
光の速さで辰来は土下座をした。
「う〜ん・・・キャラが弱いわけじゃないのに、何で臣姉は狼さんを落とせないのかしら?」
「そうだね・・・キャラは強いかもしれないけど・・・基本無口だからかな?」
辰来そう言いつつも、心の中では『狼さんが面倒な人だからじゃない?』と思っていた。
はっきり言おう、その通りだと。
「無口なのはステータスよ。最近はうるさい性格の女が多いから、男達は静かな女の子を逆に求めているのよ」
「・・・僕は美緒ちゃんみたいな明るくてよくしゃべる子は好きだけどな」
「え?なに?何か言った?」
「ううん、何も言ってないよ。≪なんでこの台詞だけ聞こえないのかな?≫」
辰来は不条理な矛盾に涙したが、話は更に進む。
「そう言えば・・・辰来くんのお姉さんも狼さんを狙っているんでしょ?」
「う、うん、まぁね・・・。でもお姉ちゃんは・・・無駄にツンデレだし、男っぽいし、ていうか学生服着ちゃってるし、何かいつもメンチきってる顔しているし、腕っ節があるし、喧嘩上等主義だし、胸ないし、そもそも本人が一番弱気なわけで・・・あはは、今更ながら・・・美緒ちゃんのお姉さんなんかとじゃ勝負にならないね」
辰来は自分で言ってて悲しくなった。
「え・・・えっと・・・貧乳はステータスだって誰かが言ってたわよ」
「うん、多分、誰かの負け犬の遠吠えかと」
美緒はさすがに哀れだと思って、辰来の肩を叩いて上げた。
だが、まさかそのダメダメな要弧が実は狼のヒロインの座に一番近いなどとは、二人とも夢にも思わなかった。
「まぁ、恋愛っていうのは何が起こるのかわからないんだから!それに胸の大きさじゃあ女は決まらないわよ!」
「そ、そうだよね!?」
少し元気を出し始めた辰来、だが。
「いや、やっぱ女は胸だろ」
どこからともなく、なぜかしゅうが現れた。
そして美緒の足の小指を狙ったかかと踏みをくらった。すさまじい痛みのようだ。
「行き成り出て来てそのセクハラ発言は死刑に値しますよ?」
「だぁおおおああらららら!!!かわいい顔して結構非情だねぇえ!?」
転げまわるしゅう、しばらくしてようやく立ち上がった。
「ふぅ・・・まだまだお子様だねぇ、君たちには女の魅力とは何かを・・・まだわかっていないようだ。キャラがどうとか、胸の大きさだの・・・はっきり言ってそんなの人それぞれだろ?要弧みたいな女性が好きな奴もいれば、臣みたいな女性が好きな奴もいる・・・ここで重要なのは・・・狼の好きな女のタイプだ・・・そこで質問だ。君達は今まで狼を見てきて、狼の好きなタイプがわかるかい?」
「えっと・・・狼さんが特に興味を示さなかったタイプの女の子を除外していけば、わかるはずですよね?」
辰来がそう言うと、早速二人は記憶を辿り始めた。
「まず、ツンデレの要弧さんはダメ、無口でミステリアス、大人しい子の臣姉もダメ、アイドル系の雫さんもダメ、眼鏡っ娘の奈絵美さんもダメ、ロリコンでもないし、グラビア系も好きではない、お嬢様系も違う・・・あれ?後何が残っているの?」
「・・・大人のお姉さんとか?」
「でも、狼さんは年上が好きでは無いらしいし・・・後は?」
「・・・もう無い気がする」
二人が困っていると、しゅうは不敵な笑みを浮かべて言った。
「君達はどうもアニメや小説の中のヒロインを視点に置き過ぎなんだよ、はっきり言えば君達のお姉さんみたいな女性はそう多くない、つまり珍しいんだ。それに興味を示さないって事は・・・狼の好きな女性のタイプは・・・ふ、ここまで言えばわかるだろ?」
「「全然」」
「だ〜か〜ら〜!・・・きっと従順なメイドみたいな子が好きなんだよ」
見事に的を外れた答えをしゅうははじき出した。
正直そこまでの考察をしておきながら、普通はここで『普通の女の子がタイプじゃね?』と言うのが正解なのに。予想の斜め上どころか、異次元に飛ばすような発言をするしゅうは、やはり馬鹿だと感じさせられた。
「そうか!そうなんだ!ようし、今日帰ったらお姉ちゃんのためにメイド服を作ってあげよう!」
「ふふ、悪いけど辰来くん、このメイド勝負・・・圧倒的に臣姉の方が有利なのよ?料理!家事!掃除!その三拍子が完璧にできて!尚且つクールなメイドさん・・・・これを完璧と言わず、なんと呼ぶのかしら?」
多分、普通のメイドさんかと。
「最近のメイド界では・・・あえて料理もできず、掃除もできず、家事なんてもっての他!そんなギャップのあるメイドさんが注目を浴び始めているんだよ?・・・この勝負・・・まさに神のみぞ知る戦いだね!」
二人が熱い火花を散らす。それを見ていたしゅう。
≪二人とも・・・立派になったな。ワシから教える事はもう無い・・・存分に戦うのだ!≫
なんか仙人みたいな面影でかっこつけるしゅう。もはやこの三人を止められるものなどいないだろう。
≪そうだ、どうせなら雫を応援している羊ちゃんと奈絵美を応援する慎にもこの事を教えてあげよう!くっくっく、狼は一体誰を選ぶのか・・・こりゃあワクワクがとまらねぇぞ!≫
しゅうは更に余計な事をして場を更に混乱させようとした。
次の日
しゅうの無残にもボコボコにされた死骸が学校の時計台に吊るされていた。
不思議な事に四着分のメイド服を着せられた状態で・・・・。
しゅうは学校をサボって中学生達の写生大会を見に来ていた。これは・・・本当のロリコンは奴やも知れぬ・・・・。