雫パニック！壮絶な始まりが今始る
ははっ、タイトルがそのまんまだぜ。
「ガイコツ！骨！人骨！お化け！いやぁああ！！！ひーじーりいぃいい！！！」
雫がおかしくなってしまったようだ。泣き叫びながら羊に抱きつき震えている。
「残念、悪魔やで」
骸骨がどうでもいい事を口走った。
≪てか羊ちゃん、何してんの？≫
≪いや、まぁ、何か知らんが異世界に迷い込んだ≫
≪・・・・？、何で男口調なん？≫
≪え？・・・き、気にしないでよ≫
骸骨とテレパシーをしていると雫がまたも騒ぎ始める。
「羊！なんで驚かないの！？怖くないの！？悪魔だよ！？骸骨だよ！？」
「大丈夫よ、きっと特殊メイクかマスクをした人だってば」
≪・・・雫かわいいな〜≫
見事に言っている事と考えている事が違っているが、雫はそうなのかも、と思い始める。
「・・・あの、メイクなんですか？」
「何ゆっとんねん！正真正銘の骸骨や！見てみい！腕がこんなに細いわけあるかい！」
そう言って骨しかない腕を見せる。ちなみに指も関節部分までしっかり見せられた。
「・・・二ギャァアアアアア！！」
まるで猫の鳴き声のような悲鳴を上げる雫。更にきつく羊に抱きついた。
「い、いたい！痛いよ！雫！爪が食い込んでるって！」
≪てめぇええ！！骸骨！！お前空気読めよ！≫
≪いやや、なめられるんは嫌さかいな≫
≪てめぇ、帰ったら覚えてろよ≫
≪・・・・とりあえずワテらが知り合いやてばれないようするべきやて≫
≪まぁね・・・さて≫
「うわぁ〜、本物の骸骨だぁ〜、雫、逃げよう（棒読み）」
返事の代わりに全力で頭を縦に振る雫。
「どけ〜！このクソ骸骨が！」
羊が本気で骸骨を蹴ってバラバラにする。
「ゲフゥ！羊ちゃん！ひどいわ！本気で蹴るなんて！」
「うるせぇ！！誰だよてめぇ！名前なんかしらねぇだろうが！！」
羊はそう言って怒りながら、雫をつれて店を出て行った。
「ヒック・・・怖かったよ〜」
雫がようやく落ち着き始める。
「変なお店もあったもんだね≪骸骨マジで帰ったら殺す≫」
「・・・みんな、大丈夫かな・・・」
雫がふと、自分の現状を思い出して暗い声を出す。
「・・・大丈夫だよ！・・・狼なら、きっとやってくれる」
「・・・・そうだよね！」
雫はまだ辛そうだが、みんなががんばっているのだから、笑顔でいようとした。
「・・・あ」
ふと、雫がある事に気付く。
「・・・どうしよう！万引きしちゃった！」
「・・・は？」
「さっきのお店の鏡を持ったまま出てきちゃった！！」
≪え？ちょ、どうすんの？・・・あ、いや。骸骨が払うか≫
その頃の骸骨
「あ、そうだセフ《骸骨の名前》さっきの子達は知り合いでしょ？」
「そうやでジャシカちゃん！それよりも今度食事に行こうな〜、美味しい地獄店しってんねんけど」
「『ラ・トゥルーの鏡』の代金２００万ＪＳ払って」
「・・・・ワッツ？」
戻ります。
「どうしよう！魂抜かれたり呪いがかかったりするかな！？」
「大丈夫だよ。たぶんあの悪魔が全部悪いから店員さんもあの悪魔に代金を払わせるって」
羊は適当にそう雫に言った。すると、羊の携帯がなる。
「あ！きっと狼だよ！」
羊はそう言って携帯を開く。相手はやはり狼。すぐに羊は電話に出る。
「もしもし！どう！？」
『・・・万事成功！・・・婚約は無しになったし、南字企業の倒産も間逃れたぜ』
「・・・本当？・・・雫！やったよ！」
電話中にもかかわらず、羊は雫に抱きついた。
「え？・・・婚約しなくて・・・よくなったの？」
雫が驚いてその事実を信じれずにいる、だが・・・。
「本当だよ！これからも・・・ずっと！雫と一緒にいられるんだよ！」
羊が泣きながらそう言った。
本当に嬉しそうなその顔を見て、雫もようやく、安心して・・・喜んだ。
「ずっと！ずっと一緒だよね！」
「うん！・・・みんなと一緒にいれるんだよ！」
二人が涙で顔をぐしゃぐしゃにする。その泣きじゃくって喜ぶ声は電話の向こうの狼にも聞こえていた。
「・・・ったく、電話の途中なのに・・・まぁ、よかったな」
狼は今、要弧達が運ばれた病院にいた。
要弧と臣は睡眠薬で眠らされただけで特に問題はなかった。
あと音恩としゅうはあれだけのリンチを喰らった割には打撲とすり傷だけですんだ。
北崎や慎たちもヤクザの兄ちゃんどもを撃退して既にこの病院にいる。
「どうせ電話にはもう出ないだろうし、切っとくか」
狼はそう言って携帯を切った。
「これで・・・無事終わったんだな？」
奈絵美が安心して胸を撫で下ろす。
「全く、長い長い一日だったぜ」
狼がそう言って笑った。
だが、一日はまだ、そんなに簡単には終わってくれなかった。
道端で喜び合って泣き合っている二人。
そんな微笑ましい場面を無粋にも邪魔する存在など、
「羊ひどい顔しているよ、ほら！この手鏡で見てみてよ」
雫が先程のお店で万引きしてしまった鏡を見せる。
「あはは！そうだ・・・・ね？」
その鏡には羊ではなく狼が映っていた。
涙でくしゃくしゃの顔、手の位置までもが今の羊と同じ位置にある。
「・・・・あ〜、あ、ああああれ？」
「どうしたの？・・・あ、これおもしろい説明書が書いてある〜」
手鏡の後ろに書いてある説明書を見つけた雫はそれを読み始めた。
「えっと・・・この手鏡は相手の本当の姿を映す魔の鏡。魔法で化けた相手もこれですぐに見破れます。だって〜、おもしろい事が書かれているね！」
「やべぇ、しゃれになんねぇ」
「え？なに？」
「ううん！なんでもないよ！」
≪これはヤバイ！ちょ！この大ピンチはあの中学生の時要弧の着替え中に部屋に入ってしまったあの時よりもヤバイ！！！≫
今更何を思い出しているんだと言ってやりたいが、言葉通りそんな事をしている場合ではない。とりあえず羊はその鏡に映らないように最善の注意をした。
「ほら見てよ！二人で鏡に映ったら滑稽でしょ？・・・あれ？」
「・・・・・え？」
最善の注意をしようとした矢先に、雫はいつの間にか羊と一緒に自分達の姿を鏡で見ていた。
そう、狼に見えるその鏡で。
「・・・・は？」
雫が固まる。羊も固まる。空気が固まる。時が止まる。風が通り過ぎる・・・。
「・・・・狼？」
「・・・・えっと」
「・・・・狼？・・・・なの？」
「・・・・・・・・・・・・・うん」
声にならない叫びというか、声が出せれるレベルじゃないというか。
いままで女の子だと思っていた羊は実は狼で？
なんか一緒に学校生活をエンジョイしてきたわけで？
ある時は一緒に着替えていたり？お風呂に入ったりして？
悩み事とかも打ち明けたり狼が好きとか言ったり？
そういえば羊はしきりに私を好きって言うわよね？
それって何？狼としてだったの？友達ではなくて？
今回の騒動でも、涙を流して私を心配したの？
一緒にいたいってずっと言っていたのは、好きだからなの？
つまり、姿形や性別は違えど・・・狼はわたしが・・・いや、羊は私の事が好きなの？
雫が理解に苦しむ。
羊が恐怖におののく。
病院
「全く、あいつらも今頃、喜びすぎて大変な事になってんじゃねぇの？」
狼はこれから来る脅威など、微塵も感じていなかったのであった。
究極展開に・・・笑え！
