タイプ37「雫パニック!〜迷走の日〜」
・・・・あれ?
なんだこれ?書いてたら勝手にこうなっちまった。
こりゃ伏線というよりも混乱を生むかもしれない。
まぁ、いっか!
結構長い間、私と雫は走った。追っ手は多分もうこないと思う。だってあいつらがあんなにがんばっていたんだから、負けるはずがない。私はそう信じていた。だから、私は走るのを止めた。
「も・・もう、大丈夫だよね?」
私は息を切らしながら雫に声をかける。雫もだいぶ走ったから苦しそうだ。
「・・・うん・・・平気」
でも、さっきと違って笑顔だから、私は安心した。
「にしても・・・だいぶ走っちゃったからぜんぜん知らない場所に来ちゃったね〜」
私は周りを見てそう言った。事実、私も雫も知らない場所に、私たちは今いる。
「・・・歩こっか」
雫がふとそんなことを口走った。そして、私が返事する前に歩き出す。
「・・・ねぇ、羊・・・今狼は・・・私のために、動いてくれているのよね?」
確かに、男のほうのオレも、今ここにいるオレも、雫のために動いているよ。
「そうだね」
「・・・私の婚約を一番初めに阻止しようって言ったのって・・・誰?」
民家が立ち並ぶ道路、今は車が一切通っていないので静かだ。だから、雫の質問がよく聞こえる。でも、その質問は難しいな。だって、みんなにとっては、言い出したのが『羊』だけど、実質的には『狼』だもんね。でも、こんなややこしい話を今する必要はない、だから私は正直に話した。
「・・・私だよ」
案の定、雫は少しがっかりした顔をする。本当は、狼が言い出したのと同じはずなのに。
正直、オレが二人になってから、いい事もたくさんあった。だが、その分、今まで知らなかった周りのことも、よく見えるようになった。それは、いい事だと思うけど・・・正直辛い。
「ねぇ・・・狼って、やっぱり要弧のことが好きなのかな?それとも臣かな?奈絵美かもしれないしなぁ〜」
「・・・また、難しい質問だね」
「え?」
「あ、いや、なんでもないよ〜!」
うっかり本音を言ってしまった。でも、やっぱりその質問は難しい。だって、男のほうのオレが好きな相手はぶっちゃけ知らない、まぁ要弧の可能性が高いみたいだけどアイツ馬鹿だから親友でいるつもりかもしれないし・・・まぁ、それでも、ただひとつ確かなのは・・・。
オレは雫が好きってことだな。
まぁ、残念な事にオレは体が女なので、雫のことが好きだと言ったら変態に思われてしまう。
だからこそ、男のほうにがんばってもらいたいのだが・・・そううまくいかなくて・・。
「ねぇ!一緒に住んでいるなら知っているでしょ!」
「え?・・・い、いや〜、アイツは馬鹿だから恋愛沙汰には弱くて・・・わからないな〜」
真剣に聞いてくる雫に、オレはとりあえず適当に答えた。だが、納得できない様子の雫は、また話をし始める。
「あんな鈍感な男のどこが好きなんだか・・・とか思ってるでしょ?」
正直、女になるまでは思わなかったことだな。
「やっぱり、顔が良いとか性格が良いとか以前に、女の子に対する態度と言うか、接する時の気配りっていうやつがあの馬鹿にはないのよ。別に女の子に興味がないっていう訳じゃないくせに、むしろモテたい願望は人一倍あるわよ、絶対」
その通りですね。
「なんていうか・・・男ってのは、女の子の前ではいいカッコ見せたいとか、カッコつけたいとか、優しく接していい印象をもたれたいとか・・・普通そう思うもんでしょ?・・・少なくとも、私たちに言い寄ってきた男たちは、わざわざ気に入られようと必死になっていたわ。でも・・・アイツには・・・それがないのよ」
まだかろうじて明るい空を見上げながら、雫はつぶやく様に言った。
「カッコ付けが馬鹿らしいなんて思っている人もいるだろうけど・・・やっぱり、女の子にとっては、たとえただの見栄っ張りだとしても・・・かっこよく見えたらかっこいいものなのよ。でも・・・あの馬鹿は・・・好きな女の子がいたとしても、特別扱いしないのよ。普通に接するだけ。特別優しくするわけでもなく、好きな人の前だからってカッコつけようとも思わない。正直・・・それに気づいた時は・・・こいつは本物の馬鹿だって思ったわよ、でも」
「・・・・あいつ、好きな人の傍を、絶対に離れないのよ」
正直、それは自分では気づかない点だった。だが、雫はそれがいいと思っているらしい。
「特別扱いも何もしないけど・・・いつも一緒にいてあげる。それがあいつなりの好きの表現みたいなんだけど・・・・そうなるとやっぱり要弧が好きなのかなって思えてくるのよ。でも昔から一緒にいたわりには二人は付き合っている様子ないしさ、もう正直アイツは一体何なのよ!って、何度も考えたけどわからない、それでも・・・どんな時も一緒にいてくれるっていうあいつが、私にはかっこよく思えるのよ」
「・・・・そっか」
オレはそれだけを言って笑った。
要弧達もオレに対してそう思っているのだろうか?だとしたら、オレ自身今まで何にも考えてなかったから、つくづく自分が最低なやつだと実感した。
「・・・私、やっぱりまだ狼のことが好きみたい、諦めの悪い女だな〜」
「・・・・いいんじゃない?私から見ると、雫が一番有利な立場だよ?」
「え?なんで?」
「・・・・う〜ん、今は教えな〜い」
「なにそれ〜?」
「ヒントは!・・・私が雫のこと、好きだから」
オレはとりあえず、言いたい事だけ言ってやった。
雫は少しキョトンとしてから、馬鹿にするように笑った。
「そっか、まぁ羊をメロメロニできたんだから!鈍感狼なんてちょろい筈よね」
そんな事を言って、雫は満足そうに笑った。オレもつられて笑顔になる。
知らない住宅街は、いつしか人通りが少しある西洋の商店街に変わっていた。
「人が少ないけど、おしゃれな商店街ね!こんな穴場があるなんて知らなかった!」
雫は若干有頂天になりながらお店を見ている。
アンティークショップから家具屋さん、はたまた洋服屋まで。多少レトロな感じの品物が多かったが、流行の服も売ってあったので特に違和感はない。
しかし、妙だ。なんだか日本にいる気がしない。
まるで別世界に来たかのような感触をオレは感じながらも、雫が楽しそうなのでいやな考えは排除することにした。
「ねぇねぇ!ここのお店面白そうじゃない!?」
雫がある店を見つけた。ショートウィンドウの向こうにはぬいぐるみがたくさん飾ってある。
「かわいい〜!ちょっと入ってみようよ!」
「うん、いいよ」
オレは目を輝かせる雫に反論する気も起こさず、その店に入ろうとした。
「なんていうお店なのかな?」
オレは何気なく店先にある木製の看板に目をやった。
『マジックアイテムショップ』
ほほぅ、なかなか面白い名前の店だな。
オレはそれだけ思って、雫に続いて店に入った。
店内
木のにおいがほのかに漂う雰囲気の良い店内だ。こじんまりとしているが商品が結構並べられている。ぬいぐるみはお手製のようだ。一つ一つが違う生地と作り方なのが一目瞭然でわかる。しかもその他にはトランプだの地球儀だの鏡など、同じものが二つとない商品ばかりのようだ。
「すご〜い、玩具屋さんなのかな?」
雫は興味心身で商品を見ている。オレも珍しいものばかりなので目を奪われていた。
「お探し物でも?」
ふと、少女の声が聞こえる。
声のするほうを見ると、ツインテールの少女がレジのほうに立っていた。見た目からして年齢は小学生ほどだと思われる。だが口ぶりからすると、ここのお店の関係者だろう。オレはすぐに見に来ただけと言った。
「そう、気に入ったものが見つかるといいわね」
なんだか大人のような感じのしゃべり方だな。しかも、口元だけが笑っており、目が笑っていなかった。しかし美人な顔立ちなのでその表情が非常に似合っている。
「お父さんとお母さんが経営しているの?」
雫が店員の少女にそう聞いた。
「前まではね。二人とも今は隠居しているから私がオーナーなの」
おいおい、こんな子供に店任せるなんてどんな親だよ。
「ちなみに、私の名前はジェシカ。よろしくね」
「え?・・・うん、よろしく」
雫はよくわからずにそう言った。オレも正直変だと思った。いきなり自己紹介をするとは、しかも見た目は結構日本人っぽいのに外国人だったのか?
「なんだか二人は常連さんになってくれそうだから、つい名前を言っちゃった」
ほう、まぁ異国文化ってやつだろう。雫もそれで納得したらしい。
「それにしても・・・普通の人間が来るなんて久しぶりね」
ジェシカはまるで独り言のようにそういった。そして、オレはそれをしかと聞いてしまった。
「え?」
「あら?・・・もしかして迷い込んできたとか?」
ジェシカが特に慌てる様子もなくそんな事を言う。しかし俺の頭は混乱状態によってろくに考えることすらできなくなっていた。
そんな時、誰かがこの店に訪れた。
ドアが開いて、フードをかぶった人物が見えた。
「ジェシカちゃん、大鎌を引き取りにきたで〜」
聞き覚えのある関西弁。そしてフードを取ると・・・案の定骸骨の顔が・・・。
「・・・・いやぁああああ!!!!」
雫が悲鳴を上げて、オレはため息をついた。
そう言えば・・・・婚約とかどうなったよオイ?
きたー!ま・さ・か・の!ファンタジー!!
あえて言おう!これは伏線だと!
そして真実を明かそう!オレは何も考えてないと!
ネタばれかも知れないけど、
雫は羊の正体を狼だとみやぶっちゃうから!
ふぅ、これぐらい言わないと読者の皆様は混乱するからね〜。




