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タイプ35「雫パニック!〜絶望の日〜」

一時的復活!まじすいません!!

 センタースカイビル


港の近くにそびえ立つガラス張りのビル。空の青と海の青と全く同じ色をしたそのビルの持ち主は、葛木葵。若干十七歳という若さで『葵菓子食品』の代表取締役。親は『葛木製菓』の創始者。ちなみにどちらの会社も今や一流企業の一つである。


「あ・・・あの、狼さん。今更なんですけど」

「どうした?」

ビルの前ですくんでいる辰来。だが狼も奈絵美も落ち着き払った態度だ。

「な、なんで僕達三人が話し合いのメンバーなんですか?」

「あぁ、簡単な事だ。俺達を頭の良い順に並べて上から三人選べば・・・この三人になったわけだ」

「あ、頭の良い順?」

「もっと言えば、常識があって冷静に物事を見れてすぐに感情的に成らないで相手を言いくるめれそうな知的キャラが、今ここにいる俺たちだ」

≪うわぁ・・・なんか不安要素も多々あるけど良いのかなぁ?≫

辰来は涙を流しながらうまく行くように神に祈りをささげていた。


音のしない自動ガラスドアを二つくぐると、バカみたいに広いピロティが広がる。

狼は何の迷いもなく、目先に見えた受付のプレートを見て、若い二人の女性が座る受付に向かった。すると、相手は制服を着た高校生が来たというのに、顔色を変えずあいさつをした。

「こんにちは、今日はどのようなご用件で?」

「明日婚約をするらしいここの社長に、話があって来ました」

狼は穏やかな口調でありながら、言葉は食って掛かるような皮肉を使った。

「・・・雫様の御学友でございますね、お名前を教えていただけますか?」

「守多狼、言ったからには会わしてくれるよな?」

「ご安心を、葵様は元より会うつもりだとおっしゃってました・・・では、案内いたします」

左側の髪の長い受付の女性が席を立ち、三人を案内した。


エレベーターで最上階まで上がる。最新のエレベーターは振動どころか音すらさせず上に向かっていた。

「なぁ狼、相手は何を言うと思う?」

奈絵美がこっそりと狼に小声で話しかけた。

「そりゃあ、どう考えても・・・『婚約阻止なんてバカなマネ止めてくれない?』だろ」

「だよね・・・で?・・・何か策でもあるのか?」

「どうだろうな・・・まぁ、正直まずは葵がどんな人物なのかを見てみたい」

「・・・まさか・・・良い奴だったら雫を任せるとか言うつもりか?」

「・・・・・・奈絵美・・・普通の家庭に生まれた子と・・・そうじゃない家庭に生まれた子とは・・・全くの別もんなんだぞ?」

「・・・何の話だ?」


「人の上に立っている人間の世界は・・・拘束された世界でもあるって事だ」


真剣な表情の狼に、奈絵美は少し驚きつつも、嫌な顔をした。

≪・・・そんな考えの狼は・・・嫌いだ≫

そんな思いを片隅に、エレベーターは最上階に着いたのでその重い扉を開いた。


エレベーターを出れば、既にそこは社長室だった。

つまり最上階が全て社長の部屋らしい。あのバカみたいに広いピロティと同じくらい社長の部屋も広かった。

そんな部屋の前方に、なんとも着飾った立派な机がある。そしてその机に肘をつけてニコニコしている少年。なんとも古典的な社長室にはどうも似合わない少年だ。大きなぱちっとした目に小柄な体型。そして女の子のショートヘアーをしている。

「ようこそ、僕の部屋へ・・・どう?飲み物は何かいる?」

「そんなのいるわけ!」


「コーラ」

「私はオレンジジュースで」


辰来が否定しようとしたら、二人が堂々と頼んでしまった。

「いやいやいや、何考えているんですか二人とも!」

「辰来はいらないのか?」

「いりませんよ!状況を見てください状況を!」

辰来がそうわめくが、特に二人は慌てなかった。


「・・・それで?社長さんよぉ・・・俺らの言い分聞いてくれるのか?」

狼が受付の女性が運んできたコーラを飲みながら聞いた。

「・・・・立ちっぱなしにさせてごめんね。イスを用意しようか?」

「いや、結構だ。それより私達の話を聞いてくれるのかと聞いている」

どうもはぐらかしてくる葵に、狼も奈絵美も鋭く話をつっこむ。

すると、葵はニコニコしていた表情を急に真剣にさせて、イスから立ち上がった。

「え!?な、なにか怒りましたか!?」

辰来がビビるが、葵はそうじゃありませんよと軽く言った。

「あなた方の言い分はわかっています。雫さんの御学友、もとい、親友の皆様でしょう?・・・皆様は雫さんを大切にしていらっしゃる、だから・・・横から雫さんを奪うようにして連れ去ってしまう僕に、恨みもあるだろうし、雫さんを任せられるか心配なんでしょう?・・・友は大切にすべきだと父から教えられてきました。ですから、あなた方の気持ちはよくわかります。ですが・・・僕は、雫さんを幸せにさせる自信があります・・・命を張って守る覚悟もあります。ですから・・・」

葵はゆっくりと狼達の前に来ると、いきなり土下座をした。


「どうか・・・僕に雫さんをください」


辰来も、奈絵美も、絶句した。

≪・・・め、めちゃくちゃ良い人だよ・・・・どうするの?≫

≪・・・・どうするの?・・・狼・・・≫

二人はもう、狼に頼るしかなかった。


しばらく、沈黙が流れる。その間も、葵は頭を下げたままで、三人も黙ったままだった。

「・・・・狼さん?」

辰来が狼に声をかける。だが、狼は無表情のまま、じっと見ていた。

≪・・・迷っているんですよね・・・そりゃ、迷いますよね・・・≫

辰来は狼の心中を察して、もうしばらく黙る事にした。


 20分後


≪さ・・・さすがに、迷いすぎじゃないか狼?≫

奈絵美が心配して狼に小声で話しかける。

「お、おい・・・まだ、迷っているのか?」

「・・・あぁ、今こいつの本当の覚悟ってやつを見ているんだ」

狼はわざと葵にも聞こえるぐらいの声で言った。


 さらに10分後


葵が土下座しつつも震え始めてきた。おそらく足が痺れたと思われる。

≪・・・も、もう・・・いいんじゃないか?≫

奈絵美はむしろ葵がなんだかかわいそうになってきたので止めるように言おうとしたその時。


「あぁああもう!!狼のいじわる!!」


急に葵がそんな台詞を叫んで土下座を止めた。


「「・・・・え?」」


固まる二人。そして、狼だけは勝ち誇った笑みをしていた。

「はっ、ようやく本性を表したかこの腹黒小僧」

「・・・・チッ・・・横にいるお二人さんのどちらかが止めてくれると思ったのに」

「残念だったな、お前の思い通りにさせないためにこの二人を選んだ。急なパニックには対応できない二人を、な」

「・・・ふ〜んだ!鈍感のくせに変に用意がよすぎるんだよ狼は!」


「・・・あれ?・・・お二人さんは知り合いなんですか?」


辰来が本当に急な展開についていけず困惑して聞いた。

「オレの両親がこの葵菓子食品の設立に協力したんだよ。その成功パーティーでこいつを知った」

「・・・なんで知っている事を黙っていたんだ?」

奈絵美が若干怖い顔になっているが狼は続ける。

「オレ一人だけがこいつの本性知ってても意味無いだろ・・・何せこいつプロの腹黒ヤロウだから人を欺くのがうまくてよぉ・・・オレが下手に本性バラしてもそれを逆手に取られてお前ら二人の信用がこいつに傾けば、オレは孤立してチームはバラバラになって・・・全部パー」

「な、なんてあざとい奴なんだ・・・」

辰来がそう言うと、葵はわざと悪そうな笑みを浮かべた。

「こわっ!」

辰来が本気でビビっている。


「まぁ・・・本性も暴いた所で・・・葵く〜ん?君の会社が設立して成功したのはどこの誰のお陰だったか覚えているか〜い?」

「・・・まぁ・・・狼くんの両親には確かにお世話になったね〜」

「うんうん、よくわかっているねぇ・・・それを踏まえたうえで婚約破棄プリーズ」

「・・・・ごめん、無・理♪」

かわいく言う葵。ちょっとドキッとする辰来。素直にかわいいと感じた奈絵美。


「こ・ろ・す」


めっちゃ怒ってる狼。


「だ〜か〜ら〜、今回の婚約は葛木家が決めた事じゃないんだよ〜」

「うるせぇ!辞退しますって言えば全て丸く収まるんだよ!!」

「だから!今回は僕にその権利がないってことなの!」

「はぁ〜?今や大企業の社長でありながら、しかもバックには両親の経営している更に巨大な企業がある超エレガント上流人が、な〜に言ってんだよ!」

「・・・その両親が経営している巨大な企業の危機を救った事のある恩人が頼んでいるとしたら?」

葵は溜め息をつきながら言った。

「・・・・なに?」

「だから、言わば南字のおじいちゃんは僕の両親の恩人だから、その人からの頼みごとを聞かないわけにもいかないって事なの・・・悪いけど・・・僕にできることは・・・せめて雫ちゃんを悲しませないように、できるだけ幸せにする事なの」


「・・・マジかよ・・・ちくしょう・・・」

狼が絶望的な表情をする。

「・・・そんな」

辰来がその場にへたり込んでしまった。

葵も、辛そうな表情をする。


だが・・・まだ、諦めていない奴がいた・・・・。



「・・・まだ・・・諦めるには、早すぎるぞ?」


奈絵美がそう言って、眼鏡を外した。



あ、うん、がんばります!


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