一章:Episode3 東京防衛高校
一章第3話です。
ここから一章が本格的に始まります。
お楽しみ・・・いや、期待されると緊張するタイプなのであまり期待はしないで貰えると嬉しいですね、はい。
「でっか・・・」
それが東京に着いた時の感想だった。
俺がいた町の何倍だろうか。
元の東京よりはいくらか分割されているはずだが、それでも余りある大きさだ。
俺が辺りをキョロキョロしていると、長谷川が呆れたようにこちらを見る。
「キミほんまに田舎から来たんやね・・・
ほらバス停行くで。」
言われるがままに着いていくとそこには既に大型バスが一台停まっていた。
「ここは車とか、普通に走ってるな」
地元の道路は車など使わなくても移動できてしまったので誰も使っていなかったが。
ここまで広いとやはり車は使われるのか。
「キミんとこ狭すぎん?」
「うるせぇよ」
停まっていた大型バスに乗り込むと、既に中は半分ほど埋まっていた。
多少体格差などはあれどほとんどが俺と同じくらいの歳の高校生。
例外は運転席に座っているドライバーと、一番前に座っている三十過ぎくらいの男くらいか。
隣に髪を少し染めた茶髪の女子高生が座っていて一瞬怪しい関係かと思ったが、よく見ると男はスーツの上から『引率:小池岩次』と書かれた名札が付いていた。
恐らく東防高の教員で引率を任されているのだろう。
と、適当に自分の中で結論づけ空いている席に座る。
当然のごとく長谷川も座ってきて少し引いたがまぁ、知らない奴に座られるよりはマシだと考え直して何も言わずにおく。
しばらくして席が大体埋まってきた頃、時間になったのかバスのエンジンがかかり、扉が閉まる。
すると一番前に座っていた引率の教員、小池が立ち上がった。あ、これからは小池先生か。
「東京防衛高校入学希望者の皆さん、こんにちは。
東防高で、社会科を教えることになっている、小池と言います」
バスのあちこちで控え目な挨拶の声が上がる。
大して気にしている様子もなく小池・・・先生は話を続ける。
「これから試験ということで、皆さん緊張してるかもしれませんがよく聞いておいてください。
着いてからのことを今からお話します」
少しバス内の緊張感が高まる。
「まず、東防高に着いたら受験者控え室に向かってもらいます。
そこまでは私が連れて行くのでご安心を。
そこから先ですが、既にご存知の通り、六十四人ブロック別のトーナメント形式で対人戦闘を行ってもらい、ブロックの上位四名までが合格者となります。敗者復活戦などはありませんのでブロックで勝ち進むことだけが合格条件となりますのでご注意下さい。
合格者にはまた説明がありますが、合格者の中でのランク付けをします。
・・・以上ですがなにか質問はありますか?」
「対人戦闘とは格闘ということですか?勝敗の決め方は?」
誰かが間髪入れずに質問をした。
なるほど、確かにそれは重要かもしれない。
徒手空拳が得意な人や、長谷川のように剣術が得意なものもいる。
まぁ俺に関して言えば全てにおいてなんの技術も持たないゴミだが。
「対人戦闘はステータスに乗っている基本の七種、『剣、短剣、斧、槍、杖、棍、拳』のいずれかを使っていただきます。武器に関してこちらで模擬戦用の命に別状の無いものを用意します。勝敗の決め方は相手に1本入れた方が勝ち、という単純なものです。
・・・他に質問はありますか?」
「ありがとうございます」
質問をした奴が座った。
見た感じこれ以上は出なさそうだ。
しかし、これは本当に何か対策をしないと落ちてしまう。
というか、何故この学校を受ける奴らは試験で戦うということに疑問を持っていないのか。
少しは抵抗とか無いのだろうか。
そう思い隣をチラ見すると長谷川が不敵な笑みを浮かべながら明日の方向を見ていた。
前向きなようでなによりです。
半ばヤケクソ気味な気分になっていた頃、バスが減速を始めた。
窓から外を見ても特に信号などがある様子はない。
と、いうことは。
「そろそろ東防高に到着します。
皆さん降りる準備を始めて下さい」
小池先生が遠足の引率の教員みたいなことを言った。いや、引率の教員なのだが。
やばい。何も考えてない。
そんな俺の焦りなど露知らず周りの受験生達は次々とバスから降りていく。
「どないしたんカトウ君、降りるで?」
気づけば長谷川も荷物を持って降りようとしていた。
「・・・あぁ、分かってるよ」
━━━バスから降りた俺達は控え室、というかちょっとしたホールのような所へ連れて行かれた。
全国から集められたとは知っていたが、なるほど。ホール内には軽く千人を超える高校生━━いや正確には高校一年生か━━がいた。
ホールの出入口から真正面、一番前に巨大なスクリーンがあり、AからZまでの合計二十六ブロックが全て映されていた。
そのスクリーンの前の壇上に、小池先生とは別の俺と同じ、いや少し年上くらいの男が立っている。
外国人のようで、金髪碧眼の麗人とでも言うべきイケメンだ。
そのイケメン力は会場内の女子が少し色めき出す程。てかイケメン力ってなんだよ。
「やぁ、こんにちは。
僕はジーン・アークカイン。この学校の二年生、かつ自己防衛機能の特別講師だ。」
二年生なのに、特別講師?
そんな俺の考えを皆も持ったようで困惑の空気が流れ出す。
その空気を読み取ったようで壇上でジーン先輩?はその疑問に答える。
「自己防衛機能の特別講師というのは、僕を含めて十六人いる高校二年生の生徒のことさ。
この学校は神のアフターケアにより創設された。
そのアフターケアの一つで、特定の人物にはステータスと共に一枚の依頼状も同封される。
皆を引率してくれた先生方もその依頼を受けてここの教員になったんだ。
僕ら十六人は自己防衛機能の才能が特に優れ、神に一年生の自己防衛機能の育成を依頼されたんだ。
そしてこの中の合格者が来年僕らの立場、二年生として一年生の自己防衛機能の育成をする・・・この学校はそういうシステムになっているんだ」
ホール内のあちこちから感嘆というか、尊敬の色の混じった声が上がる。
神に直々に依頼された高校生、という点にだろう。
しかし、自分が『特に優れている』とか言っちゃうあたり上から目線のような気がしてなにか、気に入らない。
「では、そろそろ入学試験を始めようか。
試験会場は全部で十二ヶ所。
校内放送で順番に2人ずつ呼びかけるからそれぞれ指定の会場まで間違えないよう向かってくれ」
『Aブロック受験番号1番、2番の方、第一会場で試験を開始して下さい。繰り返します━━━』
ジーン先輩が最後に注意を述べた後、早速試験が開始される。
前のスクリーンで番号を確認すると・・・俺はEブロックの受験番号258番、Eブロックの第一試合だ。
・・・第一試合?
やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?
なんも準備も対策もしてないし使う武器すら選んでない。
世界変貌でファンタジー世界に変わったのならこの世界にも経験値というものが存在するのだろうか。
それならオークを倒したことで力が上がっているとか・・・いや、そもそもあれは俺が倒した判定に入るのか?
屋上から突き落としたのは俺だがオークに止めを刺したのは役所前の道路だ。
道路に経験値など入る訳がないが、俺に入ったとは限らない。いや、そもそも経験値なんてあるかどうか分からないのにそんなものに頼るのが間違いか。
まずい、このままでは━━━
「━━━スキルを使いなさい。」
!?
振り返ったが、既に人混みに紛れて誰が言ったかなど分からない。
スキル・・・?
俺は肩に掛けたエナメルバッグからステータスの紙を取り出す。
・
・
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・
スキル
:反撃
:物理法則操作
俺の、スキル。
『・・・Eブロック受験番号257番、258番の方、第五会場で試験を開始して下さい。繰り返します。Eブロック受験番号257番、258番の方、第五会場で試験を開始して下さい。』
加藤優佑 第一試合
・・・開始。
次回からいよいよ試験開始!
加藤優佑の反撃がはじまる━━━!
前回あれで短いとか言うんじゃ無かった・・・。
恐らくあんな感じの長さがずっと続くかと・・・