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現代高校生の反抗記  作者: 鳥頭:β
序章:夏
5/31

序章:Episode5 旅立ち

後日談?的なアレとタイトル回収です




━━━翌日。


俺は学校に来ていた。

といっても昨日から学校が開始だった訳ではない。

今はまだ夏休み真っ盛りだ、この学校は。

だがもうすぐ休みが開けてしまう、という学校もあるらしい。

まぁ厳密には休みが開けるのではなく新しく学校を開ける、だが。


つまり。

職員室に書類を取りに来ていた。

転校の書類だ。

己の非力さを自覚した俺は自己防衛機能(ステータス)の安定、強化を図る学校への転校を決めた。


俺のステータスには反抗属性という属性が付いていた。

どうやらこれは割とレアなケースらしく、これが付いているものは強力なスキルが使えるらしい。

折角神が俺に伸び代を与えて下さった様なので有難く使わせて貰うことにした。


まさか本当に転校する人がいるとは思っていなかったのか、書類を受け取りに来た時は教職員も驚いていた。

自分で話した癖に校長が唖然としてフリーズしていたことにはさすがに苦笑を堪えきれなかった。

あんな顔ができたのかあのハゲは・・・。


それに対してほぼノーリアクションだったのがうちの親である。

父は都会に出張中なのでいない。

その為家での最高権力者は母となるのだが、母に転校したいと希望を伝えたところ、こちらを一瞬見て含み笑いをした後あっさりと許可を出した。放任主義にも程があると思うんだが。


まぁとにかくこれで俺は新たな一歩を踏み出すことができるのだ。

俺は昨日とは対照的に体も足取りも軽く帰宅することができた。


家に帰り、机の上に書類を広げて記入事項を書いていく。

綺麗な字を心掛けて書いているつもりなのだが、何故か書いていくにつれて崩れていく。

これは呪いの一種なのでは、と適当にファンタジー世界のせいにしようともしたが高校の入学願書を書く時もそうだったことを思い出しその間違った考えを改める。


「・・・よし。」


集中して力の入っていた肩を脱力させ背もたれに体重を預け、さてお茶でもいれるかと筆箱に今まで使っていたシャープペンシルを置くと、リビングのドアを洗濯物の入ったカゴを抱えた母が入ってきた。


「それボールペンで書くんだよ。」


・・・そういえば高校の入学願書を書く時も同じようなやり取りをしたなぁと感慨深く思い出を振り返り、それよりも深く溜め息をついて筆箱からボールペンを取り出す。


「・・・上から書いちゃえ」


横から俺よりも深い溜め息をつく音がした。

深すぎだろ。



━━━野球部の癒し、もといマネージャーにして加藤優佑の同級生の少女、佐々浦麻衣は悩んでいた。


昨日の外壁が破壊された事件の現場に今朝がた戻ってきてみれば、そこには大量の血痕と警察、元に戻った綺麗な外壁しか無かった。


現場検証?をしていた警察の人に話を聞くと通報を受けた後直ぐに現場に駆けつけたが、そこには既に倒されたオークの死体しか無かったそうだ。


「加藤くん・・・大丈夫かな・・・。」


私は知っている。

あのオークを倒した人を。

あの時オークに殺されそうだった私を助けに来てくれた人を。

オークの死体しかなかった、ということは死んではいないだろう。

でも警察の話だと明らかに人間だとわかる血痕を残されていたらしい。


大丈夫なのだろうか。

一目見て確認しておきたい。

今すぐにでも見舞いに行きたい。

だがしかし。


「急に家に行って変な人とか思われないかないやでも私を助けてくれたんだからそのお礼はちゃんと言わなきゃだけど行って変な目で見られたら私学校で合わせる顔がないし何かお見舞いにの品とか持っていった方がいいかもしれないしそもそも家がどこにあるかも知らないし・・・」


途中から支離滅裂なことを言っているのは分かっているが何か言っていないと正常な気を保てない。

別に好きな人の家に行くわけではないがそれでも加藤くんは大切な友達だ。

心配はもちろんしているが印象を悪くしたくない。

その永遠ループの思考に呑み込まれそうになる。


「うっ・・・うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


がちゃ


部屋の扉が開く音がした。

扉の向こうに立っているのはオークではなく眼鏡をかけたひょろっと背の高い男。


「・・・どうした?」

「うわぁ!?ご、ごめん兄さん!」


せめて何かお見舞いの品くらいは渡さなきゃなぁ。




━━━やっと書類に記入(二回目)を終えた俺は部屋で荷物をまとめていた。

東京に行くといっても家族全員でという訳には行かない。

なにせ父は出張中でいないし母はこの場から動く気すらない。

向こうに学生寮があるらしく、そこに宿泊することにした。


「服・・・は必要最低限でいいか。向こうで制服も貰えるみたいだし。

他に要るのは、歯ブラシ、筆箱、ルーズリーフ・・・教科書も向こうで貰えるのか。」


気分はちょっとした遠足だ。

必要なものをピックアップして荷物をまとめていくと驚くほど少ない。

最初に用意していた大きめのキャリーバッグでなくとも入りそうだ。


結局いつも使っているエナメルバッグにあらかた入ってしまい残りはすべて手提げ鞄に入れて持って行くことにした。


傷だらけのエナメルバッグを見て、視線を机の上に置いてあるものに向ける。

そこには凹みと傷でボロボロの金属バットが置いてあった。

オークとの戦いで俺の体はもちろん、金属バットも疲弊していた。

もはや原型はほとんど残っておらずただの金属の塊と化している。

それでもこれを捨てられないのは、これが俺の初めての反抗の証だからだ。

手に取って凹んだ部分を触ると鑢のようにザラザラしていて、もうあと少し叩けば折れてしまいそうだ。


「こっからだな・・・。」




━━━遂に出発の時が来た。

町の正面にある駅からでる東京行きの特急列車に乗るのだ。

駅に向かう途中穴の空いた外壁を見たが、綺麗に元通りになっていた。

自動的に修復されるようになっていたようだ。

流石は神のアフターケアと言ったところか。

唯一の不安も消え、晴れ晴れとした気持ちで特急列車を待っていた。・・・ならよかったのだが。


俺はこれからのことに希望四割不安六割のとてもじゃないが晴れ晴れとは言えない状態で駅のベンチに座っていた。

全く知らない新天地へ繰り出すことがここまで恐ろしいことかと教えられた。


ぷぁぁああん!


駅のホームに情けない音が鳴り響く。

特急列車が到着するのだ。

周りの東京に行くサラリーマンのような人達も次々と立ち上がり荷物を持ち上げる。

俺も震えそうな足を全力で堪えながら立ち上がり母からエナメルバッグを受け取る。


「足震えてるよ」

「・・・うるさい。」


もしかしたら今俺はオークに立ち向かった時よりも怯えているかもしれない。


「どうせなるようになるよアンタは。

気が向いたら仕送りしてやるからせいぜい頑張ってきな」

「仕送りはできれば定期的にして欲しいなぁ・・・。」


母なりに緊張を解してくれたのだろうか、少し気が楽になった気がする。


「・・・じゃ、行ってくる。」

「かっこつけんな。行ってらっしゃい。」


ひでぇ。

どんな時だろうがうちの母は変わらない。

まぁそれでこそ母だし、いいことではあるが。


エナメルバッグを肩にかけ、特急列車に乗り込もうとしたその時、後ろから聞き覚えのある声が追いかけてきた。


「ちょ、ちょっと待って!加藤くん!」


母、ではない。

母が「加藤くん!」とか言っていたら思わず殴り飛ばしたくなる。

この人をやる気にさせるような声は・・・


「・・・佐々浦?」

「はぁ・・・はぁ・・・東京に・・・引っ越しちゃうって聞いて・・・」


気づけば母はいなくなっている。

空気を読むことに関しては超一流かもしれない。

ナイス母、グッジョブ。


「挨拶しに来てくれたのか?」


もしそれだけのために息を切らして走ってきてくれたのなら間違いなく惚れてしまう。

いい子すぎる・・・。

だが佐々浦は俺の予想と少し外れたことを言った。


「あ、うんそれもなんだけどね?

加藤くん、一昨日私のこと助けてくれたでしょ?

だから、そのお礼!」

「いや、あれはそんな」


そんな高尚なものじゃない。

ただの自己満足だ。

そう言おうとしたところを佐々浦に遮られた。


「私は、あの時加藤くんに助けられたよ。

どんな理由があったとしてもそれは事実。

そんなに傷だらけになっても私を助けてくれた。 だから、そのお礼をしないと私の気が済まないの。

ごめんね?勝手な理由で。

でも私がやりたかった事だから・・・はい!」


佐々浦から綺麗に包装された袋を勢いよく渡された俺は勢いで受け取ってしまう。

中から少し甘い匂いがして食欲をそそる。


「・・・お菓子?」

「クッキーだよ、私の手作り!」


女子の手作り・・・だと!?

今一瞬世界のモテない男子達から激しい憎悪の念を向けられた気がして背筋が凍る。


「命助けられたのにお礼がクッキーなんて全然足りないよね、ごめん!・・・でも、何かはあげたくて・・・時間なかったからそんなものしか作れなかったけど、その」


そこで一拍おいて佐々浦は勢いよく頭を下げた。


「あの時は本当にありがとう!」


お礼を言いたいのはこちらの方だ。

今までずっと憧れていた人に、感謝された。

それだけで今まで抱えていた不安が吹き飛んでいった。

自信を持って新天地へ踏み出すことができそうだ。


だがこの場で佐々浦に感謝を伝えてしまえば、恐らく彼女はさらに感謝の言葉を述べてくるだろう。

そんなに感謝は要らないのだ。

憧れの人の感謝は一回で身に余る。

一回しかないからこそ価値がある。

だから俺は敢えて感謝は伝えずに。


「・・・どういたしまして。

クッキー、電車の中で食わせてもらうわ。」

「・・・うん!

あっあとね?あの時の加藤くん、ちょっとかっこよかったよ!」


俺はその身に余る幸福に背を押され、特急列車に乗り込んだ。

後ろを振り返るとドアが閉まりかけていた。

佐々浦はちょっと照れたような顔をしてこちらに向かって大きく手を振っていた。

俺も手提げ鞄を持っていない方の手をあげて佐々浦に振る。



汽笛が、鳴る。







━━━━━舞台は東京へ。











・・・俺が旅った後、佐々浦のステータスから妹属性があることが発覚しブラコン説に拍車がかかったことを俺は知らない。

これで序章はおわりです。

こんだけかよ!って思うかもしれませんがまぁ序章ですので・・・お許しください。


ここまでお読みいただき感謝。








・・・リアジュウハゼロ

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