1/1
1
はぁ。
まただ。
土曜日の朝。
このため息は、きっと仕事の疲れのせいじゃない。
濡れた頬を服の袖でぬぐう。
見慣れた天井は今もなお霞んで見える。
もう何度目だろう。
彼の夢を見るのは。
いつも同じ場所。
いつも同じ時間。
いつもあの言葉。
枕に思い切り顔を埋める。
どうして・・・
もう5年も経つのに。
だってもう、
彼はあんなにも遠くにいるのに。
枕が濡れていくのがわかる。
ダメだ。
ダメだダメだダメだ。
弱い自分は嫌いだ。
もう一度深いため息が出る。
こんな朝を、何度繰り返すんだろう。
ふと枕から顔を外すと、携帯の画面が明るくなっているのに気づいた。
画面に表示された名前は・・・やっぱりひかる。
「ねー!理沙!テレビ見てテレビ!」
ある程度のテンションは予測して、仕方なく受話器を耳に当てたが、あまりの大きな声に思わず耳から離した。
ひかるの元気さにはあきれるけど・・・元気が出る。
思わず笑みがこぼれた。