ある少女の見る夢は。
学校で授業を受けて。
休み時間には仲の良い友達らとお喋り。
帰り道クレープ屋さんで友達と買い食い。それぞれクレープの味比べながら笑顔の絶えない帰り道。
休みの日にはカラオケ行ったり、買い物に行ったり、映画も観に行ったり。
特別な何かは無い只の女子高生の日常、そんな毎日が何より楽しい。
◇
目が覚めて少女の瞳に最初に写るのはいつもの白い天井。
ふふっ、と少女は口元を緩ませると顔を枕に埋め、今日は楽しい夢見れたぁと幸せそうに呟く。
それは少女が描くごく普通の女子高生像。少女にとってテレビや人づての話での情報でしか知りえない女子高生というのは憧れそのものだ。
物心ついた時から白い天井に花が活けられた幾つかの花瓶とベットのみという簡素な部屋が少女の世界だった。
何かしらの病気なのだろう、だが少女自身何の病気なのかは知らないし、知ろうとも思わなかった。知った所で何が変わるわけではないし、きっと長くは生きられ無いのだろうと少女は理解しているから。
外から少女を訪ねて来るものも誰も居なく、両親の顔すら少女は見た記憶が無い。
この療養施設にお金は支払われているが、それだけ。
少女の状況を初めて聞く大抵の人らは、何とも言えない表情を向け気を遣う様に接してくるのだが、少女自身今の状況を悲しいとか寂しいとかは思っていない。
確かに、テレビ等で知った、普通の女子高生の生活に憧れたり、私も学校に行ってみたいなという願望は持ったりはするが、それが出来ないことを悲観したりはしない。
だって、最初から、それは少女の当たり前で、少女にとってそれが普通で、これが少女の日常なのだから。
故に今に疑問を持たないし、不幸とも感じていない。
そんなほぼ1日中ベットの上で過ごす少女の楽しみは睡眠中に見る夢。現実では出来ない事も夢の中では経験出来る。普通の人なら只の夢と大して気にしないものだとしても、少女にとっては夢の事柄も大事な経験の一部として自身の心に刻んでいる。
見たくない夢も中にはあるが、それでも楽しい事、少女がやって見たいと思う事を見せてくれる夢を見たときの幸福感はその嫌なものを払拭される程だ。
1日が過ぎ、夜の帳が降りると少女は心を弾ませ眠りにつく。
良い夢が見れます様にと願いを込めて。