くたびれた男の見る夢1
ーーーーーッ!
ーーーーーッ!
逃げなきゃならない。
声も上げず只、ひたすら逃げる。
何から逃げてるのかは分からない。
とにかく追いつかれてはいけない。
大勢の人々がパニック状態で悲鳴を上げながら、商店街の道を駆け抜けて行く。
誰が倒れようが、幼い子供が泣き叫び助けを求めていようが、そちらには一切目を向けず、ひたすら自身が助かる為に他者を押し退け迫り来る恐怖から早く遠ざかる為全力疾走。
ヤバイヤバイヤバイヤバイィィィッ!
オイツカレル
ドケドケドケッジャマダァァァァァ!!!!
ピピピピピピ
目覚ましの音に目を覚ます、今だ恐怖で心臓の鼓動が速く脈打ち、息苦しく、じっとりと汗をかいている。呼吸を整える。
夢…か…
結論を付けるのに少し時間を要した。朝の日差しの眩しさに目を細めながら体を起こす。
酷い夢だった…何か恐ろしいものに追い回されるというのもそうだが、それ以上に他者を顧みず、自身のみ逃げおおせようとする行動に嫌悪を感じる。まあ、大半の場合夢の事など直ぐに忘れるだろう、気にすることでも無い。
だが、せめて夢ぐらい全うでカッコイイ存在でありたいものだ…夢を見る原理はよく分からないがこの様な夢を多く見るという事は、きっとこれが自身の本質なんだろう。実際に、何か起きた時、自身の事でいっぱいになり、近くに助けられる者が居たとしても見捨てて自身だけは助かろうと働くだろう…きっとそんな男だ…
現実、特に友人も無く親ともここ数年連絡を取っていなく、プライベートでは全く人と関わら無い生活。仕事場でもペコペコと余り軋轢を生まない様、人の顔色を伺い愛想笑いを浮かべる自身に嫌気がさす。
だが、どんなに嫌おうが長年に渡り自身で作り上げてしまったその形を払拭する事など出来ず、受け入れ生きていく事しかできない。
只、起きて、ご飯食べ、仕事をして、ご飯食べ、風呂に入り、寝る。その繰り返し。
只、その中に仕事以外に会話は無く。
只、生きているだけなそれ。
只、それでも生き。
只の1日が今日も始まり。
只の1日が終わる。
そんな只の。