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初恋枕

作者: 黒猫ルシファー

初投稿なので至らない所は多いかと思いますが、少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。

最後のほうが面白いかと思いますので、面倒な方は最初は流してくださって結構です。

「.....です。一年間よろしく願いします。」

前の子の自己紹介が終わった。

進級恒例の自己紹介タイムだ。

もちろん言うことは考えてある。


ここは順当に、名前、出身校、友達をたくさん作りたい、よろしく、でいこう。


さて自分の番だ。席を立ち、名前から始める。

「はじめまして、和呂中出身の神凪隼人かんなぎはやとです。」

クラスを見渡しながら話すが、みんな緊張をしているのか前を向いたままだ。


一番後ろの席である僕とは誰も目が合わないはずだ。.......しかし、目があってしまった。ピンクのリボンをした女の子が一人だけ熱心に僕の自己紹介を聞いている、というより見ている。僕は目が離せなくなる。まるで瞳に吸い込まれているようだ。

リボンの女の子に自己紹介をしている感じになってしまったが、ひと通り言い終わって着席をした。すると彼女はこちらにニコッと微笑みかけくる。

え?なに...?どういうこと?

そう思わざるをえない。もしかして、俺に...一目惚れしたとか?

....いや、ないだろう、それはないだろう、...でも...

でもなかなかに可愛い女の子だったぞ...。

と思っていたが、自分以降の自己紹介者のことも熱心に見ている。

僕に一目惚れってことは無さそうだ。残念だが少し安心する。



全員の自己紹介が終わり、学校の説明が始まり、入学式で午前しかない授業は終わってしまった。


さよなら、という担任の挨拶が終わると、荷物を持って教室を出る。

地元駅への電車は本数が多いとはいえない。一度乗り遅れると何十分も待たされかねない。

急いで駅へ向かわなくては。



駅につくと、ちょうど電車が来るところだ。

今日はどこの学校も午前で終わりだからか、電車待ちの列はいつもより長い。

座れるかどうか微妙なところでだ。


電車の扉が開き、人が出てくる。今度は僕らが入っていく。

席は少しだけ空いていた。運良く座ることができたため、ほっと一息。



...まもなく列車が出発いたします...



アナウンスが流れ終わるか、というとき、同じ学校の制服をきた女の子が電車に乗ってくる。

車内はやや混んでいる。空いている席は僕の隣だけだ。彼女は僕の隣りに座った。




電車が出発してから数分がたった頃だろうか、隣りに座った女の子が話しかけてきたのだ。

「えっと、同じクラスだよね。たしか、神凪君だよね?」

あまりにも唐突すぎて驚きを隠せないが、こんなところで動揺するのはあまりにも格好が悪い。

なんとかすぐに質問に答える。

「えっと、そうだけど...君は...?」

と、女の子の顔を見ると、それは自己紹介の時に熱心に発表者を見ていたピンクリボンの女の子だった。

「私?私は竹島佳奈たけしまかなっていいます。」

またニコっとしている。キラキラしている。そんな形容が一番適しているだろう。

「ごめんね、僕まだクラスの人の名前覚えれてないんだ。竹島...さんでいいかな?よく覚えれるね。すごいよ。」

「そんなことないって。まだ苗字しか覚えてないし、それも間違えてるかもだよ....そそ、神凪くんはどこまで電車に乗るの?」

興味津々に聞いてくる。表情に感情が現れやすいタイプなのかな。

「朝日までだけど、そっちは?」

「こっちは中日までなんだけど...神凪くんも結構遠くから来てるんだ...」

中日駅の次の駅が朝日駅だ。

「電車本数少ないし、同じ電車に乗ること多いかもね」

「そうだねー。これからよろしくね」

「こちらこそ....よろしく」



「そういえばさ、部活どうする?」

_________________________

____________________

_____________

____

_


そんな他愛もない話をしているうち、中日駅についてしまった。

「それじゃあ、私降りるから、またね」と竹島さん。

「うん、また明日」

僕はそう答える。

竹島さんは、電車を降りる。降りてからもしばらく手を降っている。

予想以上に話が合ったとはいえ、初対面の女の子に手を振るのはかなり恥ずかしい。

僕は手を上げてかろうじて反応を示すだけで精一杯だった。


電車が出発し、竹島さんは見えなくなった。

....女の子とまともに話したのはいつ以来だろう....。

僕は、久々の女の子とのふれあいに心を踊らせてしまった。







翌日、僕は学校へ。

2日目の登校だが、心が踊っている。

昨日のことがあったからだろう。


教室へ入ると、僕より先に竹島さんの姿があった。

こちらに気がつくとすぐに「おはよう」と笑顔を向けてくる。

こちらも「おはよう」と返す。

なんだか、この一言だけで今日一日への期待度が抜群に上がる気がする。




そして、4月下旬、部活が始まった。


この学校は部活が強制ではないため、やらなくてもいいのだが、僕は趣味と活動のユルさからパソコン部への入部を決意、入部届を提出した。


入部一日目、パソコン部部室であるコンピューター室へ向かう。

部室の前に到着するが、部室の前には女の子が一人。

パソ部に入部する同級生とかかな....?

とりあえず話しかけてみよう。

「あのー、どうかしましたか?」

「初めてだし、女の子だし、なんだか入りにくくて...」

振り返りながら返事をする彼女。



....瞬間たなびくピンク色のリボン....



「えっ、竹島さん?」

「えっ、神凪くん?」


まさか、同じ部活だと思わなかった僕は驚きを隠せない。

なんせ電車では、彼女は茶華道部に入るようなことを言っていたからだ。


「パソコンが趣味なんだけど、そんなこと初対面で言ったら暗い女だと思われるかと思って」

ということらしい。


そして、同じく向こうも驚いているようだ。

なぜなら、同じような理由で僕も運動部にしようなどと話をしていたからだ。


カッコつけようとしていたことを知ると、互いに自然と笑いがこみ上げてくる。

「じゃあ、入ろっか」

「そうだね」




同じ部活になってからと言うもの、クラスでも自然に話すようになった。

部活が終わる時間も同じなので、同じ電車で変えることも多い。

今日の部活は何時から始まる、からという会話から始まり、

彼女はパソコンが好きで、自分でパソコンを作るレベルだとか、

恋愛経験がないのに、いろいろな人から恋の相談を受け、苦労した、とか。


こんなに可愛い子が彼氏がいた事もないのか。

それが本当なら....処女なのか。

いやいや、何を考えているんだ、バカじゃないのか僕は。




そして今日の帰り、不意に聞かれた。


「そういえばさ、神凪くんは好きな子とか、付き合ってる彼女とかいるの?」


「...いるわけないよ。なかなか趣味というか、考え方とか、そういうものが合う女の子がいなくてね」

「好きなタイプとかは?」

「話が盛り上がって、一緒にいて楽しい子かな...」


そう言って、竹島さんの顔を見る。

相変わらず吸い込まれそうな澄んだ瞳だ。




そして、ふと考えてしまった。


....この子ってその理想の子なんじゃないのか?


そんなことを意識するだけで思わず顔が赤くなる。



「...どうしたの?赤くなったりして。好きな子がいないのも、彼女がいないのも恥ずかしいことじゃないと思うよ。」

....いや、そういうことじゃないんだよ。

「いや、なんでもないよ。今日は暑いね!」

「え?いま5月だよ?」


幸い、この子はある程度鈍感なようだ。







翌日からというもの、大変であった。


まず、竹島さんの顔が見れない。

なんでなのか自分にもわからないが、恥ずかしい。


次に、話しかけられると動揺する。

心臓がドキドキなって、うまく話せない。


そしてなにより、竹島さんが昨日より何十倍、いや、何百倍も可愛くなった気がしてしまう。

もとから可愛いと思っていたが、今では、世界で一番可愛いのでは、と思ってしまう。


どうしよう。まともに話せない。

あまり話せないと嫌われてしまうかもしれない。

それは避けたい。なんとしてでも。

これはどうにかしないと....。



部活動の時間。

隣には竹島さん。


「ねえ、神凪くん、これってどうやるの?」

「ええええぇ。あぁ。そおそぉおれは、ここぉこ↑やて、」

「え?それってデリートキーだよ?あ!消えちゃうって!」

「あぁああ、ごおめえぇn、、すmない」

「神凪くん、どうかしたの?今日ずっとそんな感じだよ?」

やばい、勘付かれている。

「いやあ、そんなぁことはないよぉ?」

「やっぱりおかしい。熱でもあるんじゃないの?」

そういって...

竹島さんは手を...

僕のおでこへと.....



体温4℃上昇。



結果、貧血で倒れる。


「ちょっと!神凪くん!神凪くん!!....



僕が覚えてるのはここまでだ。


さて、諸君、問おうではないか。


なぜ、私はいま...



保健室で、竹島さんに膝枕をしてもらっている?




竹島さんに問うた。


竹島さん曰く「保健室の枕洗ってて、ないらしいから」と。



もう、確信した。

一日で確信したのだ。


僕は恋している。この、竹島佳奈に。



「どかないといかないのはわかってる。でも。でも、もう少しだけ....その....このままでいさせて欲しいんだけど....」


言ってしまった。本音をそのまま言ってしまった。


『一日楽しみたいなら本を買え。一週間楽しみたかったら車を買え。一年楽しみたかったら、結婚をしろ。一生楽しみたかったら、正直でいろ。』

昔、偉い人がいったらしい。

ありがとう、やっぱり君は偉い人だ!

心から感謝を送るよ、偉い人!



「えっと、足しびれるまでだったら、大丈夫だよ?」

「じゃあ....お言葉に甘えて」



どれだけ時間が経っただろうか。

楽しい時間はすぐに過ぎる。

これが俗にいう....相対性理論か....


僕は、竹島さんの足が痺れることを恐れ、3分で頭を上げた。

ちっちぇな、俺。


「もういいの?」

「うん、回復したよ。パワーエリクサー以上に強力だったよ」

マジだ。


「それなら良かったけど...。

それにしても初めてだったな。男の人に膝枕するの。弟にもやったことなかったな。」


竹島さんの初めてGETだぜ!


「どうだった?私の膝枕...?」

「最高でした!」

まさかの即答。言葉はもう一度口に戻すことはできない。

「ええ!?そんなによかった?」

「最高でした!!」

もう、自分の口とは思えないレベルである。

「そっかぁ....、ちょっと...嬉しいな。喜んでもらえて」

あまりの正直な僕の応答に竹島さんは頬を紅く染めて戸惑っている。

「そっそっか~。.....また、今度してあげよっか?」



.....え?

なんて?またしてあげる?



キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!




そして、再び意識を失い、僕が覚えているのはここまでだ。


さて、再び問おう。


今何時だ?


顔を上げて時計を見上げる。


夜の7時である。当たりは真っ暗だ。

さっきまで明るかったのに。

俺は何時間気を失っているんだよ....



ベットのそばには膝枕はしていないものの、ベットに寄りかかって寝ている竹島さんがいる。

この時間まで残って見ててくれたのか。

俺が勝手に気を失っているだけだったのに。

なんていい子だろう....。



「こんな時間まで、本当にありがとう」

そう言って、僕は竹島さんの頭を起きてしまわないようにそっと撫でる。

透き通るようなサラサラとした髪。勝手に頭なんかなでて、変態っぽいだろうか?

きっと、竹島さんなら許してくれると思ったのだ。

きっと、ね。


...恋って、いいもんだな。

絶対、この子を最高に幸せにしてやろう。


そう、心に強く誓った。








結局、昨日は7時30分まで学校に居た。

竹島さんをナデナデした後、起こさないように寝顔を眺めていたが、思いの外すぐに起きた。

意識を取り戻した僕を見るとすぐに


「....大丈夫!?また気失っちゃうから心配したよぉ!」

「ごめん、多分今日は疲れてたんだよ。こんな時間までごめんね」

「いいよ、気にしないで。電車で帰れそう?」

「大丈夫そうだよ。」


そうして、家に帰り、興奮で寝れず、今日である。

しかし、自然と心は軽く、希望に満ちていた。



教室に入る。


例のごとく竹島さんはすでに教室にいた。

「おはよう」と声をかける。

竹島さんはこちらに気づいた。しかし、何も言わずにそっぽを向いてしまった。

あれ?ええ?どういうこと?

昨日の俺があまりにも情けなさMAXだったから幻滅された??

やばい、それはやばいぞ。死にそうだ。


すると、竹島さんの前の席の子言った。

「あれ?佳奈、顔真っ赤だよ?どうしたの?」

「ちょ、言わないでよ。」


どうやら竹島さんは顔が真っ赤なようだ。

僕は竹島さんの正面に回る。


「ホントだ、顔真っ赤だよ?大丈夫?熱でもあるんじゃないの?」


そう言って、右手を....


右手を、竹島さんのおでこに当てる。


熱い、とても熱い。そして、どんどん温度が上昇している気がする。



結果、竹島さん、貧血で倒れる。


「ちょ、竹島さん?竹島さん?」




ヘロヘロになってしまった竹島さんを保健室まで運ぶ。

ちょっと猛烈アタックし過ぎたようだ。

しばらく休めば大丈夫だろうか?

今日は枕が用意してある。


ベットに寝かす。

数分後、起きた。


竹島さんは事態を把握しきれていないようだ。


「竹島さん、大丈夫?」


竹島さんはシーツで顔を隠しながら言い放つ。

「来ないで!!こっちに来ないで、これ以上近づかないで」



テラSHOCK!!



「どうしたの?いつもと様子がおかしいよ?」

「そぉんんあぁことはぁないよぉぉぉ??」

なんか、見たことある。

いや、正確には自分そっくりだ。


「どうしたのさ、昨日と全然違うって」

「だ....だって!昨日....」

「....昨日?」


「神凪くんのせいなんだよ?」

「僕....のせい?」


いろいろありすぎてどれかわからない。



「昨日さ、私、疲れてベットに倒れこんでただけで、寝てなかったんだよ?」


ということは、昨日寝てると思って、頭ナデナデしたけど、本当ハ寝テ無カッタ的ナ?


「昨日の帰りはなんとか普通にしてたけど、寝る前に思い出しちゃって。

それから、それから、なんか、神凪くんのこと考えると、すごく恥ずかしくて。

これ、なんだろう?自分でもよくわからない....もしかして、私、恋してるのかな?神凪くんに」


ドストライク過ぎて驚いている暇がない。


「....じゃあ、僕のこと、好きっていうこと?」

「........ねえ?ずっと思ってたんだけど、神凪くんは私のこと、どう思ってるの?」

顔を赤らめて問い詰める竹島さん。



答えは一つだ。



僕は彼女のそばにずっと居たい。



その理由がほしい。




静まり返った保健室の中。

静まらないのは自分の鼓動。

そして、竹島さんの鼓動。


僕は口を開いた。




「竹島さん、僕は竹島さんのことが本当に好きだ。

君とずっと一緒に居たい。付き合ってください!」



言えた。



「そ...それって?あの?えっと、神凪くんが私のことを好きだ、ってこと?

...本当に?」

とても驚いている。しばらくの沈黙。



「....嬉しい....。私も、神凪くんとずっと一緒に居たい。

私みたいな不束者でよければ....よろしくお願いします」




さて、僕が覚えているのはやはりここまでだ。


気がつくと、やっぱり竹島さんの膝の上。


男としては情けないな...。



僕はまず、男として、もっと甲斐性のある男になるべきのようだ。


しかし、そう急ぐこともないのかもしれない。


すぐ近くに、いつでも、彼女の温もりがあるのだから。



「佳奈、いつまでも、一緒に....」









END

最後はやや飛ばし気味に締めくくってしまいましたが、いかがだったでしょうか?

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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