お母さんの手
~お母さんの手~
帰ってきてから、お母さんは少し横になっていた。
大ちゃんは、ずっとお母さんのそばで寝ていた。
ボクは、お母さんから離れたところでじっとしていた。
きっと、お母さんはすごく怒っていて、もう二度とボクの名前を呼んではくれないんだ。
今までみたいに優しく撫でてはくれないんだ。
ボクが悪い子だから。
「大ちゃん、そばにいてくれたの? ありがとう」
お母さんが目を覚ました。
ボクはじっと、お母さんを見ていた。
「福ちゃん、どうしたの?」
あ! お母さんがボクの名前を呼んでくれた。
「母さん、福は乱暴ものだから、そばによらない方がいいよ」
「仁、そんなこと言わないで。あの時は、母さんも悪かったのよ。犬の喧嘩に手を出すなんて、してはいけないことだったのに……。
それに、福ちゃんは噛もうと思って噛んだわけじゃないわ」
やっぱりお母さんはちゃんとわかってたんだ。
「福ちゃん、おいで」
ボクはゆっくりとお母さんのそばに行った。
そして、そっとお母さんに頭をこすりつけた。
ごめんね。
お母さん、痛いことして、ごめんね。
「福ちゃん。お母さんが悪かったね。ごめんね。
お母さんは大丈夫だよ。福ちゃんは、何も悪くないの。
気にしないでいいのよ」
そう言って、いつもと同じように優しく撫でてくれた。
ボクは、もう雪の日に一人になることはないんだと思った。
お母さんがずっと、ずっと前に言っていた。
「福ちゃんは、大ちゃんと同じ。
家族なんだよ。
仁君と同じ、家族。
お父さんとお母さんの子供だよ。
大好きだよ」
ボクはこの時、その言葉を思い出していた。
ボクは、家族なんだ。
お母さんの優しい手がボクを撫で続けている。
fin
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
久しぶりに読んでみて、あのときのことがよみがえりました。今では噛み傷が腕に残る程度で、完治してます。かなり酷くて、一時はどうなるかと思いましたが、それでも噛んでしまったことを悔やんでいるワンコの顔を見たら、怒ることもできずに『ごめんね、お母さんが悪かったね。大丈夫だからね』としか言えなかった
今は、二匹が喧嘩するとフライパンとお玉を打ち鳴らしてます。
終息のゴングwww
これって、結構効果あります╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ !




