そばにいさせて・・・
~涙~
お母さんが泣いた。
すごく震えていた。
血が流れる腕をぼんやり見つめたまま、座り込んで泣いていた。
ボクも大ちゃんも、どうしたらいいのかわからなくて。
でも、すごく大変なことをしちゃったって思った。
お母さんはフラフラしながらお風呂場へ行くと、シャワーで傷口を洗い流していた。
~包帯~
お母さんと仁君が出かけていった。
お母さんがタオルで腕を抑えて、仁君が震えるお母さんを抱えるようにして、外に出て行った。
ボクも大ちゃんも、もう喧嘩はしていなかった。
だって、お母さんのことが心配で、それどころじゃなかったから。
しばらくすると、お母さんが真っ白な包帯をして帰ってきた。
ボクは心配で、お母さんのそばに寄った。そしたら、仁君に怒られた。
「お前は危ないから、そばによるな! あっちへ行ってろ!」
って……。
大ちゃんは不安そうな顔をしながら、お母さんのそばにいた。
なんでボクだけ、そばにいたらいけないの?
ボクが噛んじゃったから?
ごめんね。
噛むつもりなんてなかったんだ。
ボクは、大好きなお母さんを傷つけたんだね。
ごめんね。
心が痛いよ。
なんでだろう。この気持ちは、なんだろう。
心がとっても痛いよ。
ボクはもう、お母さんのそばに寄れないの?
お母さんのそばによってはいけないの?
お母さんは、ボクを嫌いになったのかもしれない。
ボクは不安で仕方がなかった。
真っ白な雪が降ったら、ボクはまた一人になるのかもしれない……。




