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星になった勇者さま

作者: 開花


むかしむかしある貧しい町に一人の男の子がいました。


男の子はその町のなかで誰よりも素直で誰よりもしんせつでした。


男の子にはお母さんがいました。

しかし、お母さんは男の子が15歳の時に死んでしまいました。


男の子よりも素直で親切だったお母さんはいろんな人にだまされてうらぎられて死んでしまいました。

けれど男の子はお母さんのことが大好きでお母さんの言葉をいつも信じて生きていました。


そんなときです。


男の子の前に女の子があらわれました。

女の子はまっしろな髪に青い目をしたかわいい女の子でした。

女の子は言いました。


「私は神官さまからつかわされた巫女です。貴方を迎えに来ました勇者さま」


男の子にはなんのことかさっぱりわかりませんでした。


「貴方は今やこの世界で一番綺麗な心の持ち主、そのけがれなき魂でどうかこの世界を救ってください」


女の子の話によると、世界が今混乱にあるのは世界中にいる魔人が暴れているせいだそうです。

魔人を倒さなければ世界が真っ黒になってしまうのです。

男の子はすぐに「ぼくにできることならなんでもやるよ!!」と言いました。


こうして勇者と巫女は旅に出ました。


一つ目の町の魔人は何でもほしがる魔人でした。

たくさんの町からたくさんのものを奪って魔人のお城は物と人であふれかえっていました。

勇者と巫女がそこをかきわけかきわけようやく魔人のところへたどり着くと、魔人は金色の椅子の上でたくさんの物にうもれて自慢げに言いました。


「どうだ!俺はすごいだろう!たくさんの物をもっている!世界中の王でさえこんなに物を持っていないぞ!」


勇者は言いました。


「そんなのちっともうらやましくないよ。だってぼくのポケットは食べられる木の実でいっぱいだもの、それだけで十分なのさ」


勇者は魔人を倒しました。


そして次の町へと向かいます。

その時勇者のポケットに小さな穴が開いて木の実が転げ落ちました。




次の町の人々はみんなだらけていました。

地面に寝っ転がってご飯を食べるのさえもめんどうなのか食べるのもやめてずっと眠っている人もいます。

町は寝っ転がった人でいっぱいでした。

そしてその町の魔人もまた寝っ転がっていました。


「き~みぃもぉ・・・ねよ」


喋るのも面倒なのかその一言を言ったきり魔人は目覚めませんでした。


「だめだよ。ぼくは行かなくちゃ。だってぼくは勇者だから」



勇者は魔人を倒しました。

そして次の町へ向かう前に疲れてしまい、一週間のんびり休みました。







次の町はとってもくさい町でした。

人も動物も、ぶくぶく太っている町です。

みんな食べることをやめずにもぐもぐ何かを食べ続けています。


その町の魔人もずっと食べていました。


「ぶふっおまえもたべろ、うまいぞお腹いっぱいだと幸せだぞ」


やっぱり口の中を食べ物にいっぱいにしながら言います。


「いいよ。ぼくは生まれてからお腹がすいたなんて思ったことないんだもの。お腹がいっぱいになる以外にも幸せなことはたくさんあるよ」


勇者は魔人を倒しました。

まん丸になった町の人たちがお祝いにお祭りを開いてくれました。

勇者はそこで初めてお腹が張り裂けそうになるまでご飯を食べました。

後ろで巫女がそれをじっと見ていました。




次の町の人々はみんな怒っていました。

やれ足音がうるさいだのやれヒゲがこいだのととってもささいなことで怒っています。

魔人もやっぱり怒っていました。

怒りすぎて何に怒っているのかもわかっていないようです。


「お前がいるからいけないんだ!お前がいるから俺はイライラするんだ!お前もこんな俺を見てイライラするだろ!」


魔人が言いました。


「僕はイライラなんてしてないよ。だってぼくは怒ったことなんてないんだもの」


勇者は魔人を倒しました。


「後三人ね」


巫女が言った一言に勇者は大きな声で


「そんなことはわかってるよ!君は黙っていてくれないか!?」


と怒鳴ってしまいました。

次の瞬間勇者はびっくりする巫女にすぐに謝りました。


「いいの、いいのよ」


巫女は優しげに笑いました。


勇者と巫女は進みます。

次の町へと。



次の町では男の人と女の人が絡み合っている町でした。

二人だったり三人だったり、女と男だったり女と女だったり男と男だったりしましたが、一人でいる人はいませんでした。

その町の魔人も一人ではありませんでした。

男と女の形をした魔人は重なり合いつながりあって上下前後しながら言いました。


「あなたたちも私達と一緒に溺れましょう、きっと気持ちいいわ、忘れられないわ」

「そうだよ、これこそ人の本性、あるべき姿なんだよ」


勇者は首をかしげながら言いました。


「ぼくにはよくわからないよ。きもちのいいことなんて知らないもの、けれどそんなのが人の本性だというのならぼくはいらないよ。だってとっても気持ち悪いもの」


勇者は魔人を倒しました。

勇者はとなりにいつも一緒にいてくれる巫女のことがかわいくて愛しくてほっぺにキスを一つしました。



次の町は怒ってる町と同じようでみんな口々に怒っていました。

けれど何だか違うのはみんなが「ずるい」「あっちのほうがいい」と言っていたことです。

みんな隣のものがうらやましくてたまらないようでした。

その町の魔人も何かにやっかんでいました。


「ずるいよ、君にはその子がいるなんて、ぼくには誰もいないのに。ねたましいよ、ねえぼくにもその子をちょうだい」


魔人は巫女を指差して言いました。


「ダメだよ。勇者には巫女が必要なんだもの。他にあげられるものがあればいいんだけど、今はあげられないよ。旅をしている途中だからね」


勇者は魔人を倒しました。

町では解放されたお祝いのダンスが行われました。

巫女は勇者じゃない男の子と踊っています。

勇者はそれを「何でぼくじゃないの、巫女は勇者のものなのに」と思いました。






最後の町は嘘つきの町でした。

みんな嘘をついて騙そうとしてきます。

勇者はみんな嘘をついているなら反対が正解なんだね、とみんなのいうことを信じずまっすぐ魔人のところへとたどり着きました。

魔人はけらけら笑いながら言いました。


「勇者はもうまっくろけ、お前はもうかげれなき魂なんてもっちゃいない!お前の心はまっくろだ!」


勇者は魔人の怒りました。


「嘘だ!お前は嘘つきだ!ぼくは勇者だから、世界で一番心が清いものなんだ!」


勇者は魔人を倒しました。

最後の魔人を倒しました。

その時世界中の魔人がいたところから真っ黒いけむりがあらわれまっすぐに勇者のところへと向かってきました。


「勇者さま!さあ、それをきってください!これで終わりです!」


きらりと光る剣が黒いけむりをきりさきました。

その時勇者の体はまばゆい光りを放ち、天たかく登っていきいました。

そして真っ黒な空の中、一番の光りを放つ、星になりました。


「ありがとうございます。勇者さま。これで世界は救われました」


今もその星は旅人を案内する一番星となって世界の人々を導いてくれているのです。





                                         おしまい


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