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Card・Story  作者: 美紅
9/10

ブサイクには死を

主人公の名前を

『鬼頭義孝』から『鬼道義孝』に変更しました。

「て、テメェ! 何者だ!?」

「黙れブサイク!」

「ぶ、ブサイク!?」


 何度も言う。容姿の話じゃなくて、性格がブサイクだと言っているのだ。

 取りあえず、オーガとゴブリンを一掃した俺は、少女と盗賊の男の間に割り込む。


「ブサイクなことしやがって……もっと可愛くできねぇのかよ」

「何の話だ!?」

「可愛さの話だっ! 分からねぇのか!?」

「分かるわけねぇだろ!?」


 どうやらコイツ等には、可愛さというモノが分からないらしい。許せぬ。

 人知れず怒りの炎を燃やしていると、いつの間にか俺と少女の周りを囲むようにして、盗賊たちが現れた。


「どこの誰だか知らねぇが、舐めたことしやがって……ぶっ殺してやる!」

「うるせぇ、ブサイク」

「そんなにブサイクって言う必要あるか!?」


 大いにある。俺は今、とても怒っているからな。


「テメェ……状況分かってんのか!? この数を相手に、お前ひとりで何ができるってんだ!」

「ぎゃはははは! お頭ぁ、少しは察してあげなきゃ可哀想っすよぉ」

「そうそう! 今も精いっぱい強がってるだけなんすから」


 周囲の盗賊たちは、俺をバカにしたように笑いだした。

 すると、盗賊のリーダーも落ち着きを取り戻したらしく厭らしい笑みを浮かべた。


「そ、それもそうだな……へへ、もうテメェは楽に死ねると思うなよ? たっぷり可愛がってやるからよぉ!」

「ブサイクに可愛さが分かるとは思えない! だから断る」

「この状況で断れると思ってんのか!?」


 そんなやり取りをしていると、俺の背後にいた少女が焦ったように言う。


「あ、アンタ! どこの誰かは分からないけど、逃げなさい! 私が囮になるから!」

「それはできねぇ相談だな」

「何でよ!?」

「そんなことしてみろ。俺までブサイクになっちまうだろ?」

「どういう基準!?」

「まあいいから。取りあえず、君は俺が合図したらしゃがんでくれ」


 それだけ言うと、少女はまだ納得いかないらしく、さらに口を開こうとした。

 だが、周囲の盗賊たちがそれを許さず、とうとう俺たちめがけて一斉に襲い掛かってきた。


「女も男も殺すなよ! ただし、男のほうは痛めつけても構わねぇ!」

「「「「ウォォォォオオオオオオ!」」」」


 雄たけびを上げながら、突っ込んでくる男たち。可愛さの欠片もねぇな。

 その様子に、少女は絶望したかのような表情を浮かべるが――――。


「よし、しゃがめ」


 俺がそう言うと、思いのほか少女は素直にしゃがんだ。

 その瞬間、俺は手にしていた『無斬』で、円を描くように振り切った。

 何の技でもなく、ただ振り回しただけの攻撃。

 それだけなのだが、男たちは呆気なくこと切れてしまった。


「なあっ!?」

「え? う、ウソ……私、生きてる……?」


 その光景に、リーダーはありえないと驚愕の表情を浮かべ、少女は呆然と目の前の光景を眺めていた。

 そんな男をしり目に、俺は別のことを考えていた。

 ……やはり、人を殺したってのに、何の感情も浮かばねぇな。これも、この世界に転移させてくれた神様とやらのおかげなんだろうか?

 当たり前のように、襲い掛かってきた人間を殺した俺だが、特に後悔はしていない。

 地球じゃあ、普通に警察のご厄介になるような光景だが、盗賊たちが略奪する光景を見たとき、殺さなければ、こちらが殺されてしまう世界なのだと実感したからだ。

 そこに手加減は必要ない。

 そもそも、俺の家柄的に、割と物騒な思考回路を持っているってのも、一つの要因かもしれねぇけどな。

 まあ、もしかしたら盗賊とはいえ、殺すのはこの世界の警察みたいな連中にご厄介になる案件なのかもしれねぇが、そのときはそのときだろう。


「んで? どうするんだ? 残るはテメェ一人だぜ?」


 『無斬』をリーダー格の男に向けると、男はおかしそうに笑い始めた。


「ククク……クハハハハ! バカかお前は!? 何たかがザコどもを殺したくらいでいい気になってんだぁ!?」

「……仲間じゃねぇのかよ」

「仲間!? バカ言ってんじゃねぇよ! だが……俺もまさかこんな状況になるとは思わなかったんでなぁ。いいこと教えてやるよ」


 そう言うと、男は懐からオーガたちを召喚した時のように、カードを複数枚取り出した。


「俺は『カード使い』……つまり、仲間は人間なんかじゃなく、魔物どもよぉ!」


 男は、手にしたカードを宙に放り投げると、そのカードは光を放ち、やがて光が収まるとあのブサイクなゴブリンどもが五体ほど出現した。

 だが、俺はそんなことよりも、そこそこ業物な剣が、なぜか手ぶらだった男の手に握られていることに驚いた。ていうかあの剣……CSのいわゆるアバター装備の一つだった、『鋼の剣』じゃねぇか?

 そう思い、もう一度よく観察すると、やはり、俺の知る『鋼の剣』で間違いなさそうだった。

 そんな俺の行動に、何やら思うことがあったらしいリーダー格の男は、得意げに語り出す。


「初めてみるって顔だなぁ? 『カード使い』はなぁ、こうして装備品なんかをカードにして、持ち運ぶことができるんだよ! それに、この剣は、そこらの鈍らとは違う、業物だぜ?」


 いや、知ってますけど。

 CSのなかでも、アバターの装備は装備カードとして、存在していたのだ。もちろん、それ専用のガチャも存在するし、CSがゲームだった頃は、ショップなんかで買い物もできたわけだからな。

 ……そう言えば、俺ってこの世界に来て、最低限度のことしか調べてなかったな……トレードとオークションがあることの驚きで、そこら辺がおろそかになってたんだろうか? レアガチャはチケット制だってこと以外確認してねぇから、ピックアップガチャとかあるのか確認してねぇし……ゆっくりできる時に、もう一度CSのをしっかり調べてみるか。

 敵を前にしながら、呑気にそんなことを考えていると、リーダー格の男は顔を真っ赤に染め、怒りながら突っ込んできた。


「こ、この俺を……無視するんじゃねぇぇぇぇぇえええええ!」

「ギャギャギャギャギャ!」


 それに合わせて、ゴブリンたちも俺めがけて突撃してくる。

 それを、冷めた目で見ながら、俺は自然体で構え――――。


「『死斬』」


 そう技名を呟き、男とゴブリンたちを四回……しかも、ちょうど心臓の部分にあたる位置を、一瞬のうちに斬りつけた。


「がっ――――」

「ゲ、ゲゲゲ……」


 男とゴブリンは、呆気なく息絶える。

 すると、不思議なことに、ゴブリンがカードに戻ったように、男までカードになり、男が所持していたであろう金品や装備カード、アイテムカードなどが、その場に散乱した。

 その光景に驚いた俺は、リーダー格の男の前に殺した部下の盗賊たちの死体を見渡すも、なぜかカードが散乱しているだけで、死体は一切残っていなかった。


「……え、ナニコレ」

「アンタがしたんでしょ!?」


 正気を取り戻した少女が、俺の呟きに鋭くツッコんだのだった。

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