不穏な気配
主人公の名前を
『鬼頭義孝』から『鬼道義孝』に変更しました。
【グリン】
レア:N
種族:ゴブリン
Lv:10(MAX)
魔力:1
攻撃力:23
防御力:21
俊敏力:21
魔攻撃:1
魔防御:1
覚醒回数:0
スキル:≪棍棒:1≫
【小悪魔:N】
Lv:3
魔力:20
攻撃力:5
防御力:5
俊敏力:6
魔攻撃:9
魔防御:9
覚醒回数:0
スキル:≪風属性魔法:2≫
【スライム:N】
Lv:2
魔力:4
攻撃力:4
防御力:4
俊敏力:4
魔攻撃:4
魔防御:4
覚醒回数:0
スキル:≪体術:1≫
グリンたちのステータスを確認してみると、こう表示された。
まず、グリンは、レベルこそ上限に達しているため、上がらなかったが、新たに≪棍棒≫のスキルを習得していた。あの『ウッドマン』とかっていう魔物に最後の一撃を与えた時の動きは、このスキルのおかげだろう。
インプも、スキルと普通のレベルの両方が上がり、さらに強くなっている。何度見ても、やはり魔術特化だなぁ。
スライムはバランスよく伸びているため、物理特化のグリンと魔術特化のインプにうまい具合に噛みあっていた。
「よし、皆順調に強くなってるな!」
「ゴブ!」
「キキィ!」
俺の言葉に、三匹とも嬉しそうな声を上げた。
それぞれのステータスを確認し終わった俺は、続いてドロップアイテムを回収する。
まず、召喚ポイントであるクリスタルを確認すると……。
【召喚ポイント:30】
と表示された。
「おお! 召喚ポイントが一気に手に入った!」
まだまだ俺の手持ちのカードを召喚するには至らないが、それでも嬉しいことに変わりない。
ご機嫌状態のまま、今度はおそらくドロップアイテムであるはずの枝というには少し大きい、木の棒を鑑定した。
【火熾しの樹】
「火熾し?」
思わず手にしたアイテムに首を傾げる。どっからどう見てもただの木の棒なんだけど……。
もう少し詳しい説明は出ないのか? と思ったとたん、さらに詳細なデータが目の前に現れた。
【火熾しの樹】……R。枯れ木や枯れ草に近づけることで、一瞬で火を熾すことができる木の棒。折れない限り、何度でも使用可能。
予想以上に便利な道具だった。
これはマジでうれしいな! あの地獄のような火熾しを二度としなくていいってこどだもんな!
それに、折れない限りは何度でもって書いてあるけど、近づけるだけで火を熾すことができるわけだから、乱暴に扱わなければ、ほぼ一生使うことも可能だろう。異世界ってすごい。
てか、今まで意識してなかったけど、詳細なデータが欲しいと思えば、俺の≪鑑定≫なら、こうして詳しい内容も表示してくれることが分かった。そりゃそうだよなぁ。≪鑑定:10≫なのに、名前しか分からないはずがないもんな。
他にも、『レア』って表示されてるが、これはカードと似たようなもので、レア度でも表しているんだろう。正直、今の俺には関係ないし、興味もない事案だな。
残念ながら、食料になりそうなものはドロップしなかったが、代わりに【火熾しの樹】とは別に、こんなアイテムがドロップした。
【ウッドマンの手】
どっからどう見てもただの枝である。
これがドロップアイテムとか納得できないんだけど? 運営さん? 聞いてます?
拾ってみるが、やはりただの枝にしか見えない。
だが、何か効果があってもいけないので、先ほどと同じように詳細なデータを確認する。
【ウッドマンの手】…N。普通の枝より、燃えやすい。
そんなこと分かるかよ!
見た目だけじゃ何の判断もできないような効果だった。てか、効果すら微妙だし……。
そんな微妙な【ウッドマンの手】が、軽く十数本落ちている。……まあ、貰えるなら貰うけどね。
全部のアイテムを回収し、スマホに収納すると、お待ちかねのウッドマンの召喚タイムとなった。
「ゲームのときと同じで、やっぱりワクワクするなぁ」
そんなことを思いながら、ウッドマンのカードを手に取る。
グリン達も、俺の召喚を見るために、周囲に集まってきた。
早速、召喚と念じると、グリン達のようなエフェクトが起こり、やがて戦ったときと同じ、どっからどう見てもただの樹が目の前に現れた。
「えっと……ウッドマン……だよな?」
「オォ」
俺の質問に、どこから声を出しているのかは分からないが、ウッドマンはしっかりと返事をした。……まあ、意思の疎通ができるなら、どうでもいいか。
適当に納得した俺は、続いてステータスを確認する。
【ウッドマン:N】
Lv:3
魔力:4
攻撃力:6
防御力:10
俊敏力:3
魔攻撃:4
魔防御:4
覚醒回数:0
スキル:≪体術:1≫、≪光合成:2≫
予想以上に優秀だった!
スキルも二つ持ってるし、何より、今のメンバーにおける、壁役になれる性能を持っているのだ!
CSではいなかった魔物だが、ゲームの時代にいれば、序盤は非常に助かっただろう。進化先も気になるしな。
それに、今気付いたが、レベルも最初から3というのも嬉しい。倒した魔物がカード化してしまうと、レベルは全部1まで下がるのかと思っていたが、そうではないことが確認できたからな。
「これからよろしくな!」
「オォォ!」
どんな構造になっているのかは知らないが、ウッドマンは樹の体を曲げ、頷いた。……ファンタジーにツッコむだけ無駄だな。
新たな仲間を加え、俺たちは再び歩き出した。
というか、いい加減人に会いたいです!
◆◇◆
「やっと……やっと……!」
あれから四時間。
体力はまったく問題ないながらも、精神的に参っていた俺は、とうとう……村を発見した!
「やったー! これで野宿しないで済む! ってか、お風呂に入りたい!」
「ゴブゴブ~!」
思わず両腕を上げて喜ぶ俺を見て、グリン達も嬉しそうに笑った。いい子や。
だが、今から村に入るのなら、グリン達を連れて行くのはまずいかもしれない。
スマホのヘルプのおかげで、俺の職業でもあるカードマスターは、人気の職業として、この世界では一般的だということが分かっていた。
しかし、それだからと言って、街中に魔物を連れて行っていいのか? と問われれば、首を捻る。カードマスターではない、普通の一般人もいるわけで、ちょっとそれはありえないんじゃなかろうか。
いくら安全とはいえ、魔物が近くにいるのは怖いだろうしな。
俺からすれば、もうグリン達は立派な俺の仲間なので、そんな風に思われたり、扱われたりするのはとても寂しい。
でも、俺の我儘で行動して、グリン達が危険な目に遭うのは、もっと嫌だからな。
「ゴメンな? 俺はまだ、この世界のことをよく知らない。だから、皆を連れて、村や町に入っていいのか分からないんだ。だから、一旦カードに戻したいんだけど……いいだろうか?」
俺の言葉を受け、グリン達は俺が異世界人だとか、そんな細かいことまでは分からなかっただろうが、俺の伝えたかったことは伝わったらしく、それぞれが元気よく答えてくれた。……本当にごめんな?
俺は心の中で感謝しつつ、皆をカード化させ、スマホに収納した。
賑やかだったのが、途端に静かになり、寂しくなる。
「……早く人に会って、ちゃんとルールとか教えてもらわないとな……」
そう心に決め、村に向けて歩き出そうとした瞬間だった。
ドォォォォォオオオン!
突然村から爆音が聞こえ、村から煙と炎が見えた。
さらには、女性や子どもたちの叫び声まで聞こえてくる。
……どうやら、異世界人とのファーストコンタクトは、穏便に済まないらしい。