再びザコキャラ
主人公の名前を
『鬼頭義孝』から『鬼道義孝』に変更しました。
「よし、それじゃあお前のステータスを確認してみるか」
「キキ?」
俺の言葉にインプは首を傾げる仕草をした。……小さいけど、可愛いな。
さっそくインプのステータスを表示してみると……。
【小悪魔:N】
Lv:1
魔力:10
攻撃力:3
防御力:3
俊敏力:4
魔攻撃:5
魔防御:5
覚醒回数:0
スキル:≪風属性魔法:1≫
と表示された。って言うか、魔法使えるの!?
俺はインプのステータスを見て、目を見開く。
「お前、魔法使えるのか?」
「キキィ!」
俺の問いかけに対し、インプは小さい体を精いっぱい反らし、胸を張って答えた。
「おお……グリンよりスペック高ぇ……」
「ゴブ!? ゴ、ゴブ……」
俺の小さな呟きが聞こえたグリンは、ショックを受けた表情を浮かべると、涙目になった。
「あー、ゴメンな、グリン。決してお前が要らなくなったとかそんなんじゃねぇから。お前は俺の数少ない癒しだからな」
「ゴブ……?」
不安げに俺の顔を見上げてくるグリン。
そんなグリンに、俺は笑顔で答えた。
「大丈夫。お前は俺にとって必要だよ」
「ゴ……ゴブ~!」
そう言うと、グリンは俺の胸元に飛びついてきた。可愛いなぁ。
グリンを受け止めながら、ふと気になったことをインプに訊いてみた。
「そう言えば、お前の魔法の威力ってどれくらいだ?」
「キキィ? キキッ!」
一瞬首を傾げたインプだったが、そのあとすぐにその場に浮かび上がり、近くの木に向けて両掌を向けた。
「キキー!」
すると、そこから強烈な突風が生み出され、かなりの強さで木に衝突した。
突風を受けた木は、少し揺れ、葉を何枚か落とす。
「おお! スゲー! 思ってた以上に威力があるんだなぁ……」
これは、いろいろと戦いでも有利になりそうだな。
そんなことを思いつつ、インプを眺めると、インプは再び胸を張って誇らしげな様子を見せた。
「ははは……さてと、そろそろ移動しようか?」
俺はグリンを抱きかかえ、インプを右肩に乗せながらそう尋ねる。
「今回は運が良かったけど、次も魔物に襲われることなく寝れるとは限らないからさ。早めに人のいる村だか街だかに行きたいんだよな」
一応そう伝えてみるも、二匹ともよく意味が分かっていないらしく、首を傾げるだけだった。
思わず苦笑いになったが、仕方がないかと思い直し、気を取り直して再び森の中を歩き始めたのだった。
◆◇◆
「どこまでこの森は続いてるんだよ……」
あれから3時間。俺はひたすらに森を彷徨っていた。
体力的には問題ないが、いつ魔物が襲ってきてもいいように警戒していたり、代わり映えのしない森の景色を見続けたりと、精神的にまいっていた。
「今日も森を抜けられないんだろうか……」
思わずそんな考えが浮かんだときだった。
「ん?」
一瞬、森の茂みから、生き物の気配を感じた。
気を引き締め、その方向に警戒しながら視線を向けると、茂みから何かが飛び出してきた。
「こ、コイツは……」
「……」
茂みから出てきたのは、水色の半透明なゲル状の生物。
もう言わなくても分かるだろうが……スライムである。
「お、おお……スライムだ……」
「……」
…………。
いや、だからどうしたって話なんだけどな?
当たり前だが、スライムに目、鼻、口などの器官は備わっていない。
なので、必然的に相手は無口なわけで、俺が話しかけても反応が分かりにくく、ちょっと寂しい気持ちになる。
そんなどうでもいい感想を抱いていると、不意にスライムは身を縮め、いっきに俺に向かって突っ込んできた。
「さすが魔物……容赦なく攻撃しかけてくるな」
しかし、俺からすれば遅すぎる動きであるため、難なく躱せてしまった。
「よし……それじゃあ、今回はインプ! お前が戦ってみろ!」
「キキィ!」
俺の指示に従って、インプは右肩から飛び上がると、スライムと対峙する形で地面に降りた。
インプは、グリンのように、強化合成用のカードを使用して、レベル上げを行っていない。
その理由としては、カード合成の機能を使用せずとも、カードのレベルが上げられるかどうかを確認したかったからだ。
そういういきさつから、今回はグリンではなく、インプで戦ってみることに決めたのである。まあ、本気で戦うなら、インプとグリンの二体で攻めればいいわけだからな。
インプとスライムは、にらみ合う形で対峙していたが、最初に仕掛けたのはスライムの方からだった。
スライムは、最初と同じように身を縮ませると、一気に解放して突っ込んでくる。
「インプ! その場で空中に飛び上がって、背後に魔法を浴びせろ!」
「キキッ!」
俺の指示を受けたインプは、突進してくるスライムの頭上を羽で飛び、避けると、背後に着地すると同時に突風を生じさせ、スライムを弾き飛ばした。
「よし、いいぞ!」
思っていた以上に威力が高かったらしく、スライムはボールのようによく跳ね、木々にぶつかる。
「インプ! そのまま魔法で追い打ちをかけろ!」
俺は、スライムが木から剥がれて、態勢を整える前にそう指示を飛ばした。
すると、インプは少しスライムに近づくと、さっきと同じように魔法を発動させる。
インプの両掌から生じた突風は、木に張り付いていたスライムを強く打ち据えて、スライムをつぶした。
そして、スライムは光の粒子となって、消えてしまった。
スライムがいた場所には、クリスタルとカード、そしてゲル状の何かが落ちていた。
取りあえず、スライムが倒せたのはいいんだが……。
「やっぱり、グリンより強いな……」
「ゴ、ゴブっ!?」
思わずつぶやいてしまった言葉に、再びグリンは落ち込むのだった。