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Card・Story  作者: 美紅
3/10

初戦闘

主人公の名前を

『鬼頭義孝』から『鬼道義孝』に変更しました。

 あれから、俺はスマホに搭載された機能をすべて確認した。

 まず、マップについてだが、これは使えるようで、使えない機能だということが判明。その理由は、最初からすべてマップに表示されているわけじゃなく、俺が一から歩いてマッピングする必要があったからだ。

 マッピングは面倒な作業になるうえに、どの方角に町があるのかすら分からないため、そういった意味では使えないのだが、ただ拠点を決めて、その場所に戻るために使うなら、普通に使える機能だということだった。

 次にアイテムについてだが、これはとんでもなく便利な機能だった。

 どういう原理が働いているのかは知らないが、どんなものでもスマホに収納できてしまうのだ。

 試しに刀をスマホに近づけてみると、あら不思議。勝手にスマホに吸い込まれてしまったのだ。

 取り出したいときは、そう念じるだけで簡単に取り出すことも可能。収納できる容量についても、制限がないらしい。これ、地球にあったら引っ越し業者とか真っ青だな。

 それはともかく、最後のヘルプだが、これは俺がこの世界で暮らすうえで必要な情報をある程度教えてくれたり、スマホの機能で分からないことがあれば教えてくれるといった、本当にヘルプ機能だった。

 そのヘルプ機能で知ったことだが、俺のステータスに表示された職業……カードマスターは、この世界では何ら不思議ではない職業らしい。むしろ、人気が高い職業なので、職業人口は多いそうだ。

 それで、基本的に倒した魔物はカードになるらしく、そのカードを使って、他のカードマスターは戦っているらしい。

 ちなみにだが、俺の場合は魔物を倒した場合、カードだけじゃなく、召喚ポイントももらえる。これをためて、絶対に俺のカードを全部召喚してやるぜ!


「……というわけで、これからどうしようか?」

「ゴブ?」


 抱きかかえているゴブリンにそう訊くも、ゴブリンは可愛らしく首を傾げるだけで何も言わない。そりゃそうか。


「ヘルプのおかげで、この世界の貨幣の価値は分かったんだけど……」


 この世界の貨幣の価値は、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚といった感じで、100枚ごとに貨幣のランクが上がるらしい。

 それと、CS内のオークション機能で使うお金についてだが、これはこの世界のお金とは違い、俺の手に入れた召喚ポイントをCS内の貨幣に交換してする必要があるそうだ。

 その情報を手に入れたとき、この世界のオークションやトレードは、俺の持つスマホのCSとは関係ないことが分かった。つまり、俺のスマホで行うオークションやトレードは、地球のプレイヤーと行うらしい。妙なところでつながりが残っていると思ったが、こればかりはいいのか悪いのか俺には判断できなかった。


「それはともかく、ここにずっといるのもマズいよなぁ……」


 まず、食糧の問題もあるし、何より魔物なんていう存在がいるような世界だ。夜になると、どんな化け物に襲われるか分かったもんじゃないからな。


「んじゃあ、適当に歩いてみますか」

「ゴブ!」


 ゴブリンの元気な返事を受け、俺は早速行動を開始したのだった。


◆◇◆


「うーん……何というか……この森、どこまで広がってるんだ?」


 俺は木々を避けながらそう愚痴る。

 何度かスマホのマップで確認しているので、同じところを行ったり来たりはしていないはずだ。

 それでも、かれこれ2時間は歩いているのだが、いっこうに森を抜けられそうな気配がない。


「このままじゃあ、どこかで野宿か……」


 そう呟いたときだった。


「ん?」


 俺の、長年の修行で身に着けた感覚が、近くに何らかの生物がいることを察知した。ステータスには表示されていなかったが、索敵の能力は相当高いはずだ。

 気配がする方向に視線を向けると、突然、一匹の猪がツッコんできた。


「ブモオオオオオッ!」

「ゴブっ!?」

「うおっ!? 危ねぇな!?」


 まさかいきなり突進されるとは思わなかった俺は、急いでゴブリンを抱きかかえると、横に避ける。

 そして、突進してきた猪は、近くの木にぶつかると、方向転換をし、またいつでも俺たちを狙えるような体勢をとってきた。


「……こいつは、魔物っていうより、普通の猪だな」


 そう、目の前に現れた猪は、地球で何度か見かけた猪とそっくりだった。

 一応、スキルの鑑定を発動させてみたが、やはり猪としか表示されなかったので、魔物ではないのだろう。


「やけに好戦的だけど、ラッキーだったな。コイツを倒せば、貴重な食料が手に入るぜ」


 そう思い、俺は自分の刀を抜こうとしたが、その瞬間、腕に抱いていたゴブリンが俺の腕を軽く叩いた。


「ん? どうした?」

「ゴブ! ゴブ~!」


 俺が召喚したからなのかは分からないが、なんとなくゴブリンの言いたいことが分かった。

 どうやらゴブリンは、自分が戦うと言いたいらしい。

 確かに、俺の職業はカードマスターだ。もし、これから先人と会うことがあって、カードのモンスター同士で戦わせるような機会があったら、いきなり戦うのは無謀だろう。

 そう考えると、こういった場面でカードのモンスターを戦わせて、慣れることが大事かもしれないな。


「よし、分かった! 頑張れ、ゴブリン!」

「ゴブ!」


 ゴブリンは元気よく返事をすると、俺の腕から飛び降り、棍棒を構えた。

 そして、そのゴブリンの様子を見て、猪はゴブリンに狙いを定め、突進してくる。


「いいか? 怖いかもしれないけど、できるだけ猪を引き付けて、ギリギリのタイミングで避けるんだ」

「ゴブ!」


 そうやって指示を出すと、ゴブリンは命令通り、猪と衝突するギリギリのタイミングで避けて見せた。


「おし! いいぞ、ゴブリン!」

「ゴ~ブ!」


 俺が褒めてやると、嬉しそうな声を上げる。

 その頃猪はというと、ゴブリンに避けられたことに腹が立ったのか、鼻息を荒くして、再び突進してきた。


「よし、ゴブリン。今度は猪が木にぶつかるように誘導して、もう一度同じように避けるんだ」

「ゴブ!」


 新たに指示を出すと、ゴブリンはやはり命令通りに動いてくれ、猪は勢いよく木に衝突した。


「今だ! ゴブリン、棍棒で殴りつけろ!」

「ゴブ~!」


 ゴブリンは、木にぶつかって少しよろめいた猪に近づき、手に持っていた棍棒で思いっきり体を叩きつけた。


「ブモオオオオオッ!」


 ダメージをちゃんと受けているらしく、猪は大きな声で悶える。


「ゴブリン! 今度は頭を狙え!」

「ゴブ!」


 俺が大きな声で命令を出すと、ゴブリンは棍棒を大きく振りかぶり、猪の脳天めがけて振り下ろした。

 ゴツッ!

 鈍い音が響き渡ると、ゴブリンは追い撃ちをかけて何度も脳天に棍棒を振り下ろした。


「ブ、ブモオオ……」


 そして、とうとう猪は倒れると、光の粒子となって消えてしまった。


「倒せたのか?」


 思わずそう呟いてしまうのも無理ないだろう。何せ、光の粒子になって、消えるとは思わなかったんだから。

 それはともかく……。


「ゴブリン! よく頑張ったな!」

「ゴブ~!」


 ゴブリンは、俺がそう言った瞬間、胸へと飛び込んできた。


「よしよし、偉いぞ」

「ゴブゴブ~♪」


 ご機嫌なゴブリンを連れて、猪が消えた場所に近づくと、そこには葉っぱに包まれたお肉と毛皮、そして変なクリスタルが落ちていた。

 それぞれを一応鑑定してみると……。


【猪の肉】

【猪の毛皮】

【召喚ポイント:1】


 と表示された。

 うん、いろいろとツッコミどころの多いドロップアイテムだな。毛皮はなんか加工されて綺麗な状態だし、猪の肉に至っては、ご丁寧に葉っぱに包んであるし……。まあ、獣の血抜きやらなんやらの処理をしたことがない俺からすればありがたいけど。

 それにしても……召喚ポイントは1ですか。他の生物を倒してもこんな数字だと、本当に俺の持つカードを召喚できるのか不安になって来るな。

 今回のドロップアイテムがこの二つだけで、カードがないのは、猪が魔物じゃなかったからだろう。

 何はともあれ、無事食料を確保できたわけだ。

 それなら次の問題は――――。


「水と火、だよなぁ……」

「ゴブ?」


 どこか遠い目をしながらそう呟く俺を、ゴブリンは不思議そうな目で見てくるのだった。

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